アカネの魔法
なにやら若い冒険者たちがもめているようだった。
「あなたたちが飛ばしたほこりが目に入ったのよ!賠償責任とりなさいよ!」
「すみません、すいません…」
女性の冒険者と思われるおばさんがトレーニングをしていたところ、近くでトレーニングをしていた若者のグループが飛ばした砂ぼこりが女性の目に入り、言い争いになったらしい。
「まったく、人が真剣勝負してる横でしょうもない争いはじめやがって…。」
まだアカネとの魔法勝負は始まっていなかったのだが、水を差されてしまった。
あのおばさんも、あやまっているんだから許してあげればいいのに。
「しょうがないなあ、あたしが止めてくるよ。」
そういうと、アカネはもめている集団の方に歩いて行った。
「あのー、ちょっといいですか?」
「だから、最低2日分の宿賃もらわないと割に合わないっていってry」
だめだ、完全に話を聞かないタイプだわ、このおばさん。
将来こんな女性にはなりたくないなあ。
「あのー、他のお客さんもいますから、けんかはやめた方が!」
「あなたには関係ない問題だから、ちょっと口出さないで!」
切れたわー。話が通じないならいたしかたない、魔法でおとなしくさせよう。
魔力増強効果の付加されたスティックを取り出し、おばさんの死角に入ってばれないように位置どった。
「セクース」
「お兄ちゃん、アカネお姉ちゃん怒ってるみたいだね。」
助けに行った方がいい気がする。あのおばさんは相変わらず止まらないし、若者達は気の毒だし、アカネは大声で話してるけど聞いてもらえずに涙目になっていた。
正直、あのタイプの(30代から40代くらいで独身)の女性は前の世界にいた時からトラウマ的に苦手だ。
かかわらずに終わればいいと思っていたが。
ほどなくして、アカネが戻ってくる。
「解決したのか?」
「あのおばさんムカつく。」
「おおう、魔法使わなかった?」
「使ったよ?」
「どんな魔法使ったんだ?」
「相手をトロトロにする魔法。使えば3時間は効果が解けないよww。フフフフ…。」
こいつ涼しい顔してやることがえぐいな。
そのあと、魔法の効果を教えたかわりに俺の魔法も見せることになり、
「こい、ロキ!」
魔法陣を構築し、精霊を呼び出す。
「用事がないなら帰るぞ。」
「まだ何も言ってないのに、どうしてわかったんだ。」
魔法の見せ合いなんて、呼び出される側からしたら、迷惑以外何物でもないだろう。
が、そこは俺も学習している。
「突然呼び出したお詫びと言ってはなんだけど、これあげるよ。」
この時のためにとっておいた、ベリンの実を渡す。
ベリンの実は大きなブドウのような実で、城壁周りのひと気がないところに生えていた。
ワインのような匂いがするので、おっさんは酒が好きだろうと思い、とってきた。
ユーナ父にもわたしたところ、買うとそれなりの値段がするので、良い穴場を見つけたと喜んでいた。
明日も採取してくるようにいわれている。
「もらっておくか。じゃあな。」
ロキは帰り、アカネは「想像してた魔法と違った」といって帰った。
ユーナちゃんはアカネにロキのすごさを伝えて、何とかフォローしようとしてくれた。