魔法少女アカネ
魔法使いの少女の名前はアカネ、今は夕飯に夢中だ。
俺と同じく気が付いたら異世界にいたらしく、直前の記憶がなかった。
歳は16、小柄だが年相応に胸が発育している。胸に目が行ってしまうのは悪い癖だ。
で、路銀がなくなって3日前からろくに食べ物にありつけず、道で偶々会ったおれの服に染み付いたレーナ庵の料理の匂いにつられてここまでついてきたらしい。
「ごちそうさまでした!ここの料理は大変美味ですね。」
「美人にそういってもらえると、おじさん益々やるきでちゃうね。」
「わたし、今日泊まるところがないんですう…。」
「なになに、どうした。…ふむふむ。ちょっとお母ちゃんに聞いてくるよ、ジョー君、ここをよろしく。」
レーナ父はちょろかった。そのあと、だいぶ叱られたらしいが、アカネが本当にお金を持っていないこと、今日の時間が遅いことも考慮して、れーなのおばさんは無賃泊をOKしてくれた。
「ふう、ざっとこんなもんやな。」
おれはレーナ父を気の毒に思いつつ、同じ異世界から来たものとして気になることがあったので、いくつか質問してみた。
「えーと、俺はいまからちょうど1週間前くらいにこの世界にきたんだ。君はいつからこっちの世界にいたのかな?」
「3か月前くらいかな。最近は野宿してたから時間感覚がマヒしちゃって。」
「野宿?それってかなり危なくない?」
「大丈夫だよ。私はこう見えても魔術士だから。君よりずいぶん前に異世界に来て、ひたすら魔法の修行をしてたの。この町の魔術師の中じゃ、私が一番強いから。」
かなりの自信家だな。おれも1週間とはいえ、レーナ師匠のガチ魔術修行のおかげで、だいぶ強くなった自覚はある。まあ、召喚術しか使えないから俺自身の強さであるかは微妙だけど。
「じゃあいつも俺が魔法の練習に使ってる中庭で、君の魔法みせてよ。」
「ほほう、いいですとも。そのかわり、君の魔法もみせてね。」
魔術師は常に研究を重ね、独自の魔法を編み出す。しかし、凡庸魔法で知られている「ファイア」のように、いちど術式がわかってしまえば、それなりに練習すれば他の魔術師でもその魔法は使える。
だから、あまり自分の得意魔法を人に教えるべきではないそうだ。
これは、アカネから後できいた話で、当時の俺にくらべると彼女はベテランだった。
そうして俺たちは中庭に出たわけだが、なぜかアカネと一緒にレーナちゃんがついてきた。
「レーナちゃん?今日は修行お休みの日じゃない?」
「アカネさんに手伝ってほしいことがあるって誘われたの。それになんか面白そうだし。」
まあいいか。アカネがちょっと準備があるといっていたのは、レーナちゃんを連れてくるためだったようだが、一体、なぜ連れてくる必要があったのか。