胸の大きさは関係ない
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「さあ、かかってこいや。」
ロキは墓石を振り回し、スケルトンの胴体を砕いている。
しかも、動きが洗練された武術のように、器用に石を使い、効率的に骨を砕いていく。
「おっさんのわりにけっこうやるじゃねーか。」
「おぬし、さっきと態度が別人じゃないか、わしを呼ぶときはロキ様と呼べ、小便小僧が。」
ロキの呼び方はスルーして、俺も一体ずつ、確実に骸骨を砕いていく。
足を木の棒で払い、姿勢を低めた隙に、頭をかっ飛ばす。バッティングセンターの要領だった。
スケルトンは魔物なので、倒した後にはたくさんの魔石が転がっていた。
「この魔石を換金したら億万長者じゃないか?」
「…人間、もし金が入ったら、わしに酒を献上しなさい。」
精霊って、酒飲めるのかよ!
「だいぶ時間がかかる、ここはわしの奥義魔法で沈めてやろう。」
「奥義魔法?」
「精霊が自身の魔力と引き換えにうつことができる、最高威力の魔法じゃ。
使えるのは一回きり。お主が唱えねばならん。」
「こいつらを全滅させることはできるのか?」
「わしにかかればスケルトンごとき余裕じゃ。天使の軍勢さえ滅ぼしたことがある。」
ロキの言葉の詳しい意味はわからないが、その魔法が高威力を秘めていることは嘘ではなさそうだ。
頭の中に呪文が浮かんでくる。
「信じるぜロキ様?精霊ロキの主、丈が命じる。ダークネス・サンクチュアリ!」
ロキを中心に、もともとこの地にあった瘴気よりも黒く、禍々しい闇が広がり、すべてを飲み込んでゆく。闇が触れたスケルトンは眼の光を失い、ただの骨となって地面に散乱した。
闇が魔物のすべてを蹂躙した後、墓場に立っていたのは俺とロキだけ。
「いや、もう一人立ってないか。」
墓地にはもともと管理者などはいない。だとしたら、饅頭屋の女の子だろうか。
それにしても、この骸骨の中をどうやってかいくぐってきたのか。
「感謝するぞ、ニンゲン。我は闇の深淵を手に入れた。」
そこにたっていたのは、墓場の王、スカルロードだった。
「なんで骸骨が残ってるんだよ、魔法がきかないのか。」
「いや、あいつは闇属性じゃ。おそらくわしの高品質な闇の気を吸って、活性化したんじゃろう。」
ということは、パワーアップしてるの?!
「無属性のスケルトンどもは葬ったぞ、あとはおぬしのすきにやるとよい。」
そういって、魔力の切れた、無責任な精霊はスッと消えていった。
さすがにパワーアップしたいかにもボス級の敵相手に、素手では勝ち目がないだろう。
おれはロードとの距離を保ちつつ、墓場の出口の方へじりじりと後退した。
「我からは逃げられんぞ、ニンゲン。グルルルッ」
先ほどまでスカルロードは、スケルトンたちに的確な指示を与えて鼓舞していた。闇の濃い瘴気にあてられたためか、それはもはや理性を失っていた。
「まるで獣だな。」
スカルロードは足はそれほど速くなかった上、武器もどこかへ投げ捨てていたが、墓場を荒らしながら、ものすごい勢いで猪突猛進してきた。
「くたばれ足払いっ」
俺は突っ込んでくるスカルロードに向かって翻り、すれ違いざまに踏み込もうとしている足を払った。
スカルロードがあおむけに倒れる。俺はまたがり、木の棒で頭蓋を砕こうとしたが、奴らは脳がない。ゆえに、脳震盪を起こさない。
すぐに体を起こしたスカルロードに殴られ、5メートル以上吹き飛んだ。
「つっ」
体を起こそうとすると、背中に痛みが走る。脳が揺れて意識がはっきりしない。
ロードは手を振りかぶり、俺のいた場所を爪で引き裂いた。
かろうじて、転がるようによけたが、ほぼ詰みの状態だった。
無理を承知で、話し合いを試みる。骸骨でも、高い知能を持つロードなら、聞いてくれるかもしれない。
「た、頼む。命だけは助けてくれ。」
「聞き飽きたな。お主と同じように、多くのニンゲンが我に挑み、死んでいった。ドイツもやることは同じ、非力な我が部下を狩り、我に敗れ、命乞いをする。」
「もう二度と、スケルトンを攻撃しないから。」
「汝は他のニンゲンとは違い、手ごたえがあったぞ。さらばだ。」
大きな爪が振り下ろされる。
「ざ~んねん。君が油断するとこをまってたんだ。」
ロードの胸が人間の手によって貫かれた。
その手には、坊主の持っている数珠のように、あるものが巻かれている。
それは、俺が少女にまんじゅうと引き換えに渡した、ベーゼフからもらった魔よけのネックレスであった。
「不意打ちとは、卑怯なり、ニンゲンンンン!」
拳から放たれる聖なる光によって胸の穴が広がり、スカルロードは絶叫している。
ズボッ
スカルロードは倒れ、少女が冷や汗をぬぐってにんまりと笑っていた。
その手にはスケルトンのものより2~3周り程大きい、ロードのものと思われる魔石が握られていた。
「よう、兄ちゃん。」
「よう、幼女。」
「わたし、こうみえて16なんですけど。」
まんじゅう売りの見た目は、背が小さく、胸もないことから小学校高学年くらいに見えた。
ちなみに、宿屋のユーナは10歳でCカップはある。
「一応、礼を言っておきます。なぜ、俺を助けたんだ?」
「あたしは隣町の剣闘士ギルドの冒険者なんだ。ここでスカルロードが出るって噂を聞いて、やつが現れるのを待ってた。
ロードは頭がいいから、まず奴の手足であるスケルトンを倒さなきゃならない。
そこで、君にスケルトンを相手してもらって、ロードだけになったところを運よく頂いたこのアクセサリーの力で不意打ちしたってわけさ。」
「まさか、魔導士ギルドに依頼を出したのはお前か?」
気まずい空気が流れたのがわかった。
「ごめんね、ほかの剣闘士たちに手柄を奪われるのが嫌だったんだ。嘘の内容の依頼書を出してしまったことは本当に謝る。下手をすれば死人が出たかもしれないし、、。」
「いや、おれは気にしないよ。生きてるし。」
「あたしは兄ちゃんの命の恩人だもんな。まあこの件は忘れてくれ。」
それからおれたちはまんじゅうを食べて回復しつつ、魔石を回収していった。
話し合いの結果、ロードの魔石を少女、スケルトンの魔石約100個を俺が持つことになった。
「兄ちゃん、これはおまけだ。」
そういって、少女は魔よけのネックレスを放り投げた。
「いいのか?」
「もともと兄ちゃんの物だろ。あの状態のロードはこれがなけりゃ厳しかったしな。」
「いろいろとありがとう。」
初めての依頼は、なかなかの収穫だった。魔石1個1,000円として、全部で10万は下らないだろう。宿屋の会計をしたおかげで、この世界の金銭感覚も身についた。
さて、帰ろうか。