表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

おっちゃんのわがまま

世間は七夕ですが、私は雨が降れ、雨が降れ、と家の中で祈っております。

俺はベーゼフに事の次第を話す。

「精霊を召喚できるのは高位の召喚術士だけじゃ。

しかし、精霊は術士の魔力によって姿かたちを変える。」

「つまり、俺は魔力が低い駆け出しにもかかわらず、精霊召喚ができてしまった。

だから爺の精霊が生まれたってことか。」


「わしクラスになるとな、ほれ、あいさつしなさい」

ベーゼフの後ろに黙って仕えていたメイドが、スカートの裾をつまんでお辞儀する。

「こんにちは、ジョー様、ワタシは精霊のルミナスと申します。」

精霊の召喚中は、魔力の消耗が少ないため、基本的に召喚しっぱなしだそうだ。


その後、ベーゼフには召喚術の基礎を教えてもらった。

召喚の対象とするもは、大きく分けて3つに区分されているらしい。

①魔物召喚

②精霊召喚

③勇者召喚


①を使用可能にするためには、魔物を倒し、魔物の精霊に力を認めさせることが必要だ。

駆け出し召喚術士は普通、ここからスタートするらしい。


②はある程度熟練した魔導士が、上級の魔物を相手にするために覚える。

精霊は魔物よりも格段に強いのだとか。あとでおじいさんを魔物と戦わせてみよう。


③について、

「ちょうど4日後に、王宮で召喚の儀が行われる。ギルドカードを持っているお主なら参加できると思うが、いってみるといい」

ベーゼフがさした依頼表を見る。

「報酬がいいな。ベーゼフさんは行かないんですか。」

「わしは隠居の身じゃ。こうやってギルドで若い衆と話すのが楽しみなゆえ。

国のことは若いもんに任せておるよ。」




これで用事は済んだ。一日許可を取ってきたので、夕方まで時間がある。

俺は依頼票を眺めて、スケルトン討伐の依頼を受けることにした。

「ランクGだし、何とかなるだろ。」

町から離れた墓地にスケルトンが現れ、一般人が近寄れなくなるので討伐してほしい。

依頼書にはそんなことが書いてあった。

こっちに来てからもう3日が立つ。慣れればゲームのように思えてくる。


「お前さん、ちょっと待て。」

「え、俺、ですか。」

「ここで同じ職業にあったのも何かの縁。これをやろう。」

「ブレスレット?」

ベーゼフが俺に渡してくれたのは、何やら魔法加護のついたアイテムというものだった。

「召喚術士は、その特性故に、周囲の霊気に様々な影響をもたらす。それをつけといた方がきっと役に立つぞい。」

「ありがとう、親切な先輩。」

ベーゼフは微笑んで俺を見送ってくれた。



墓地についたころには、太陽が真上まで上がっていた。

「まんじゅう、まんじゅうはいらんかね」

「ぐーーーー」

「そこのお兄さん、おなかへってるんじゃない?火の玉まんじゅう1こ10ルーブルだよ」

墓地より手前で、少女がまんじゅうを売っている。

たべたい!と、思い、ポケットの手を伸ばしたその時、財布を持っていないことにきづく。

「あいにく、持ち合わせがないんだ。」

「そうかい、腹減りすぎて、倒れんなよ。」


しかし、おなかが鳴る。

おいしそうなまんじゅうのにおい。

―――やばい、がまんできない。




「肉まんじゅう10個、ジャムまん10個!」




さて、早く依頼を達成して、家に帰ろう。

ユーナは魔術の天才だ。うまくいけば最強の召喚術士、バラ色の異世界生活が待っている。

その為には、今の環境を維持したい。ここで稼げるところを見せて、あの家族に、あの宿に養ってもらおう。


墓地の奥には、昼間だというのに瘴気が立ち込めていて暗い。

魔物が出るので、あまり人気もない。

3分もたたないうちに、骸骨の群れを見つけた。

「さて、魔術を試すか。いでよ、精霊!」

魔法陣からおじいさんが現れる。

いきなり群れには突っ込まずに、はぐれている手ごろなスケルトンに標的を合わせた。


「手始めに、あいつに攻撃だ。」

「・・・」

おじいさんは沈黙してうごかない。

「わしは命令されるのが嫌いじゃあ。」

「え、しゃべれたの?」

「それと、わしの名前は『精霊』ではない。口の利き方に気を付けろ小僧が。」

上から口調で馴れ馴れしい。

俺の精霊はくそおやじの外見をして、中身も見たまんまのくそおやじだった。

「え、えーと、名前を教えてくれないかなあ。」

「フン、お前のようなしょんべん小僧ごときに名乗る名前などないわ。」

じゃあどうすりゃいいんだよ!

めげずに頼み続ける。

「お名前を教えていただけないでしょうか。」


そんなやり取りをつづけていると、なにやら骸骨が増えている気がしてきた。

「あれ、なんかまずくね?いったん離れるか」

いえ、完全に囲まれてます。

多勢に不勢では、いくら下級のモンスターでも、身が危ない。

「おい、どうでもいいが、おまえ囲まれとるぞ。」

「知ってるわ、ボケ爺。どうするんだよこの状況。」


落ち着け、落ち着け、

ここで爺のせいにしても状況は変わらない。俺は冷静になって考えてみた。

しかし、力技で戦ったことのないモンスターを相手に突っ込むのは、いささか無謀ではないだろうか。やはり、この爺の力を借りた方が多少なりともよさそうだ。

「頼む、精霊さんの力が必要なんだ。お願いします。」

俺は精霊に向かって頭を下げた。とにかく頭を下げ続けて、どうしてもだめなら敵を引き付け、足を絡ませて逃げる。危険だが、密集している方が開いては動きづらいはずだ。



「我が名はスカルロード、我が縄張りを侵すものは、生かしては帰さんぞ・・」

そっちに名乗れとは言ってないけども!

なぜか危なそうなやつらが集まってきたと思っていたら、ボスのお出ましである。

ランクGのクエストじゃなかったか?

いよいよ危なくなってきた。


「おい、精霊とはいえ、ここにいたらまずいんじゃないか。」

「まー、土下座すれば戦ってやらなくもないぞ。」

偉そうに、こいつは本当に強いのか。後で機会があったら殴っておこう。


「ぐ、お願いします。どうか戦ってください。」

俺にプライドはない。

怒りをこらえ、地面に頭を擦り付けた。

「まあいいじゃろう。わしの名は、魔人ロキ。主人の命により、屑どもを殲滅する。」

精霊じゃなくて、魔人なのか。

バキッバキッ

ロキは近くの墓石の一部を持ち上げ、地面から引っこ抜いた。

そして、武器のように十字架を振り回し、スケルトンの群れとスカルロードを見据える。

「さあ、かかってこいや。」


読んでくれてありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ