僕たちの戦いはこれからだ
俺がこの世界にきてもうすぐ1年がたとうとしていたその日、朝から外は暗雲が立ち込めていた。
最近は木の実の採取で、ギルドからの収入が安定してきた。
効率よく採集ができるルートを発見し、日に日に収穫量が増えていったため、今ではユーナ庵におすそ分けのほかに、個人店にも一部卸させてもらっている。
いろいろな魔術を覚えて、魔術師としての実力も経験も1年前とは比べ物にならない。
毎日のように召喚した魔人から教えをうけているが、なぜか一緒に教えを受けているはずのユーナが先に上達し、先日の1対1の模擬戦では魔人を圧倒するほどになった。
「今日は天気が荒れそうだし、仕事は休もうかな…」
窓のふちに頬杖をついて、そんなことを考えていると、突然けたたましいサイレンが鳴り響いた。
『警告、警告。風魔法により、全イスト王都民にお伝えします。
ただいま200年前に封印されていた大型古代破壊兵器が暴走を始めました。
都民の皆様は安全なところに避難をしてください。
なお、王城は兵器による光魔法で蒸発しま...ザ、ザーーー。』
突然の大音量のスピーカーと、衝撃の宣告に俺が呆けていると、下の休憩室から声が聞こえてきた。
「あなた、ユーナ、早く非難しないと!」
「避難っていっても、どこに逃げればいいんだ!誰か助けてくれ!」
「お父さん、お母さん、落ち着いて。
こういう時は下手に外に出ちゃだめだよ。私が外に出て様子を見てくるから、宿の人と一緒に避難の準備をお願い。」
...なんというか、さすがユーナだ。誰よりも主人公ッぽい。
とはいえ、さすがに一人では心配なので、ユーナ母と父に手助けしてくることを伝えて、俺も外に出た。
「ジョー君、娘のことをよろしく頼むぞ。」
「無事に帰ってきてね、わたしたちは命懸けでこのお店を守るわ。」
おじさん、おばさん、そんなに気合を入れないでください。
最終回みたいじゃないですかーやだー。
「古代兵器はどこにいるんだ?」
外に出たはいいものの、ユーナは天体流星魔法で高速移動しているため、おそらく遠く
離れて行ってしまったため、もう見えない。
おれは木の実を効率的に探すために上達させた広範囲探知魔法で目標の位置を探った。
「みつけた。」
古代兵器はまだ王城付近にいるようだった。しかし、王都の街は広く、南の端にあるユーナ庵から中央の王城までは約5キロメートルも離れている。
「仕方ない、転移魔法を使うか。」
転移魔法とは、一度行ったことのある場所ならばどこへでも一瞬で移動できるという超便利なご都合魔法だ。ただし、反動で激しく酔う。
「転移先、城門前、ゲートオープン!」
ユーナは流星魔法によって、古代兵器をすぐに発見していた。
おそらく兵器の外装は恐ろしく硬い鉱石か金属でできている。また、体重移動が恐ろしくスムーズなところも、全高10メートルを優に越えるサイズも、現代の魔術では製造することが難しいだろう。
一目でそれが古代兵器であると認識できていた。
オーバーテクノロジーならば、機械でも人の心を持っているかもしれない。
ユーナはまず、対話を試みた。
「機械さん、機械さん、どうしてあなたは建物を壊したりするの?
貴方を作った人、貴方の体を磨いた人、たくさんの人がけがをして、悲しんでいるよ?」
「・・・」
古代兵器は一瞬考えたのか、または会話ができないのかはわからないが、すぐに返事をしなかった。
その時点でユーナに交渉の余地はなかった。ユーナはドライな子なので、ユーナ庵を壊す恐れのある兵器を、即破壊することを決定した。
「暗黒魔術、スペルギアシザース」
空中でユーナの前方に生み出された刃が、兵器の頭上から股下まで音速で振り下ろされたが、黒光りするそのボディには傷一つなかった。
「ダークネス・ヘルフレイム。」
今度は黒い炎が兵器を包み込み、周辺の建物を土地ごと蒸発させたが、兵器自体にダメージはなく、
兵器はさすがに鬱陶しくおもったのか、反撃をしてきた。
「ピーーーーー(自主規制)」
そのころ俺はというと、転移先で激しく嘔吐していた。
城には人は残っておらず、上空では鉄人2○号風のロボットとユーナちゃんの壮絶バトルが繰り広げられている。鉄人は空を飛び、火炎放射やロケットパンチなど多彩な武器を使て攻めるが、ユーナの魔力障壁ですべて弾かれていた。対するユーナも鉄人の外装の防御力を前に、攻めあぐねていた。
その余波が地上に降り注ぎ、鉄人の進行を食い止めていた兵士たちやギルドの魔術師たちも、我先にと半狂乱になってこの場から走り去ったのであった。
このままここにいては自分もまきこまれてしまうと距離をとろうとしたその時、ひとりの少女、柊木アカネを発見する。
「おいアカネ、ここにいたら危険だぞ、ユーナに任せて早く隠れろ」
「いやや、このロボットを倒して、賞金を挙げなあかんねん。
もう1か月も肉を口にしてないねん。」
アカネを無理に動かそうとすると嫌がり、梃子のようにここを動かない。
「だいたい、お前の魔術でどうやって倒すんだ、ユーナでもまだ有効なダメージを与えられていないんだぞ!」
「そんなん、やってみんとわからんやろ!うちはここに来てからずっと「セクース」だけを練習しとったんや。鍛え上げられたうちの「セクース」は誰にも負けんはずや!」
もうだめだ、セクース(精神干渉魔術)がロボに効くわけがないし、こいつも動こうとしない。転移魔法はさすがに連続して使えないので、浮遊魔術でこいつをロボの近くまで連れていき、適当に当てさせて、本人が納得したら帰ろう。
そんなこんなでアカネを背負い、上空へと飛び上がった。
戦況はとてもまずい。どちらも実力が拮抗しているが、ユーナの魔力切れが時間の問題だろう。
おそらく、間もなく仕掛け始める頃合いだろう。俺たちが賑やかししている間にユーナが詠唱を完了するまでの時間稼ぎになれば上々といえる。
ユーナにコンタクトをとり、まずはアカネの魔法を当てるため、ユーナが敵の注意をひく。
「今だアカネ!」
「私の積年の努力、受けてみろ。聖魔術=アクロバティック・ギガント・グロリアス・セクース!」
杖から放たれた光球がロボに当たって爆発する。俺とユーナは余波を浴びないように魔術反射魔術によって膜を張り、自分を守った。
「以外に効いたか?」
「ほら見なさい。私の最強魔術は、ロボにも効くのよ!」
古代兵器は煙を上げて動かない。ユーナが機械の残骸を完全に破壊しようと、極大魔法の詠唱を開始したその時だった。
古代兵器の目が赤く光り、背中のハッチが開いて無数のアームが飛び出した。
「まさか、ユーナ、危ない!」
ユーナはすぐに詠唱をキャンセルしたが、防御が間に合わず、アームの先端から打ち出されたレーザーをまともに浴びてしまった。
俺も魔力障壁を展開したが、レーザーに耐え切れず、シールドにひびが入り、ついにはシールドが砕け散りアカネと共に無数のレーザーを被弾した。
全員地上に落とされたところでレーザーの雨が止んだ。
「あれ、体は何ともない。ケガもしてない。」
「だけど、ん、お兄ちゃん、なんか体が熱いよお。」
「まさかこれは...セクース?」
気づいたのはアカネだった。
「奴は魔力を吸収する兵器だ。前にお城の書庫で文献を読んだのを忘れていたぜ...
はぁ、はぁ。」
「んぅぅぅ!はぁ、はぁ、それって、私の術も吸収されちゃうってこと?」
考えろ、考えろ、俺は打ち返された魔術で欲情し、今にも暴走しそうな性欲を抑えて、考えた。
無敵のボデー、魔力を吸収、背中からビーム...
「よし、チャンスは一回きりだ」
女子二人も下半身をもじもじさせていたが、俺が作戦をつたえ、最後の理性を振り絞って冷静を取り戻した。
「い、イクでぇ!」
まずアカネがセクースの光球で古代兵器の注意をそらす。
ロボットが拳をアカネに向け、照準を定めた。
「危ない!」
俺がアカネの体を抱え、転移魔法でゲートを開いた直後、その地点を巨大な鉄のナックルが通過した。
「うっぷ、大丈夫か、アカネぇ。」
「あ、あんたの事なんて、これぽっちもかっこいいと思っていないんやからな...」
ロボットが消えた俺たちを追いかけ、再度狙いをつけようとしたその時、ユーナのタクトが光った。
「詠唱完了だよ、お兄ちゃん。
極大聖魔術=アポロジン・ブラスターーー!
いっけ―――!」
極大のレーザーが地面を焦がしつつロボットの体に当たり、激しい衝撃波を起こし、ボディを貫通して行った。
「はぁ、はぁ、やった、かな?」
魔力切れとセクースによる作用で、ユーナは汗が滴り、立っているのがやっとの状態だった。
しかし、古代兵器の赤い目が白煙の中で光った。
「う、そ、でしょ。」
ユーナはその場にぺたんと崩れ落ちた。
「ごめんね、お父さん、わたし、この町も、二人が私を育ててくれたユーナ庵も守れなかった...」
絶望に追い打ちをかけるように、背中のハッチが開いたその時―――
「くらえ、鉄くず野郎!極大魔力反射障壁!」
古代兵器がアームを展開する前に、ハッチの中を極大のレーザーが通過し、焼き尽くした。
体の中心に大穴を開けられた古代兵器は、眼の光が消え、完全に停止した。
俺は転移魔法でユーナと古代兵器の直線上の向かい側に転移していた。あとはロキを召喚し、ユーナのブラスターを反射する壁を生成していた。
「お前にしてはなかなかだな、坊主。1年でそこそこ成長したじゃねえか。」
「前に漫画で見たんだよ、こういう敵は内側からの攻撃に弱いってね。」
こうして、イストの街に再び平和が戻った。
俺たちは残っていた「セクース」の魔術の効果をロキに治療してもらい、隠れていた城の人やギルドからお礼の報奨金をもらったのであった。(ほとんど町の修理に消えた)
その後、俺は木の実を集めながら日々、冒険者としてユーナ庵で平和な暮らしを送っている。
俺たちの冒険は、これからだ!
1年間、応援ありがとうございました。




