象徴詩『乗る』
巨石の碑文
拝む文字
生え変わる鹿の角
埋める呪術貨幣
柳の檻に乗る犠牲は
弱い魂
荒い魄
干し草の匂い
放つ火の香り
鉄器に晒し
動物の沈む湖底の畔
生首を結び付けた馬の背を撫でる
樹木の動く緑
鮮やかなまま引き剥がされる
宿り木を集める
顕心鏡を覗き
尖った針で刺し
崇拝の異物を注いだ
宿主に乗る
古死語が彫られ
羅列される
トラウムの森
バスタブに浸けて窒息させ殺す
水銀の王
ドアノブに吊るして殺す
旅の商人
クローゼットの洞に詰め 焼き殺す
雷鳴の車輪
地面に置かれた死体
死体の腕を掴んで引き摺る
死体の上に乗り
捧げる痙攣は突っ立つような円舞
血は真砂
色は黄金の雨
季節は静止画の流れ
棺に寝かされて川を下る
胸を覆い尽くし乗る花束の匂い
花片に乗る蜜蜂の羽音
雨は上がり
虹の真円通路
真っ逆さまに下り行くアヴェルヌス
垂直に噴き上げるマグ・メル
樹木に乗る宿り木
体に乗る首
人に乗る神
古死語が彫られ
羅列される
トラウムの森
オークの扉に打ち付けられた生首
巡る芽を吹き出す緑
乗る 降りる
乗り 昇る