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終わる世界の  作者: 末吉
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世界修復

 人生の中に『ヒロイン』となれる女性は何人いるのだろうかとふと思う。

 それは、まぁ常々思ってしまったりする疑問であるのだが、そんなもの天文学的数字及び確率論を駆使して調査法まで厳しく決めていかなければ決められるわけがない。


 人は出会いと別れの中で生きている。一期一会と言う言葉が示すとおりに。


 たくさんの人と出会い、別れる。それを死ぬまでに繰り返していくことで人生を彩ることができる。


 まぁ一人でずっと山の中に居ればそんなことなく死ぬまで一人で生きられるんだがな。

 ……じゃなくて。

 なんか話題がずれたな。何の話題だったか……『ヒロイン』だったか。

 あれは元々主人公(女)を示す英単語だったはずなんだが、今では主人公と一緒に居る女ってことになっている。何ともままならないものだ。

 言葉の変化と言うものは日々刻々と進行しているんじゃないかと思ったりするのは、いかに世界が狭くなったと言っても周囲から得られる情報で差異があったりするからなのだろうかと今資料をパラパラと見ながら思ったりする。


「ボスー、仕事してくださいよ」

「ああ。してる」

「いや、資料見てるだけじゃ」

「3ページと8ページやり直し」

「はやっ!? そして作った奴に言ってきます!」


 ドダダダダダ……。

 廊下は走るなと言われなかったのだろうかと入ってきた奴に心の中で思いながら、それに伴う様にため息をつく。


 今日の報告資料は定時まで全部提出されなさそうだな、と思いながら。






 俺は会社の中間管理職……みたいな立場にいる。大変不本意ながら。

 単純に俺以外やれる人がいないという理由だったのだ。上司命令で。

 ひどい話だよな。上層部の一人が管轄している部門の更に下部のまとめ役に指名するんだから。おかげでこっちは土日返上、すべてが揃うまで帰宅不可、残業代定時から2時間のみしか出ないという劣悪な環境で一人働かなくてはいけない。


 ま、作らなくていいから楽なんだけどな。俺はただ指摘して突っ返すか、合格点出してさっさと返すかのどちらかだけなんだから。

 ミスったら俺がやばいんだけどな! 主に生命的に!!


 つぅわけで今もこうして残りの奴らを待っているんですね。暇だからついついテレビなんて点けてしまう訳ですよ。


 頬杖をつきながらチャンネルを持ってテレビを見ていると、最初に映った画面が『あなたも恋人探しませんか!?』という文字。


 すぐさま変えた。


 が、また同じ文字。


 変える。同じ文字。変える。同じ文字。変える。同じ文字。変える……


 全チャンネルやって一周しても何故か同じ文字ばかり。

 新手のウィルスに感染でもしたかこれとか思いながら、電源を切ってから拳銃でテレビの画面を数発撃ち、薬莢を拾っていると、銃声が聞こえたせいかドダダダだとこちらへ向かってくる音がして、勢いよく扉が開いたのでそちらの方へ向くと、先程来た奴が息を整えながら俺の方を見ていた。


 俺は拾った薬莢をテーブルに置いてから椅子に座り、テレビを指さして「処分しといてくれ」と言っておく。

 言われたそいつはため息をついて、「これで何回目ですか……」と落胆していた。


「俺のせいじゃない」

「いやまぁ、それは分かりますけど……自分の仕事が終わったらでいいですか?」

「別にいい。好きな時にそれを処分場へ送っておいてくれ」

「分かりました社長(・・)。早めに終わらせてきます」

「別に社長じゃなくていいのに」

「しょうがないじゃないですか。上層部がそう呼べって言ってるんですから」

「分かった。なるべく善処する」


 では失礼します。

 そう言って綺麗にお辞儀したそいつは、音も立てずに扉を閉めてドダダダダと足音を立てて走り出した。


 なんで走る時だけ音が出るんだろうなぁと思いながら、暇になった俺は拾った薬莢を縦一列に積み重ねてから煙草を一本乗せることにした。








「暇だ……」


 ポツリポツリと書類が回ってくるんだが、それでも間違いというものが在るので突っ返す作業しかしていない。俺の手元にある報告書類は今のところ二部。

 薬莢の上に煙草。煙草の上に爪楊枝を乗っけて暇になった俺は、ついつい窓ガラスの外の景色を見る。

 そこに広がるはここに来て最初に見たのと変わらない景色。


 少女だと思わしき奴が宙に浮き、敵対者らしき存在と光を放ちあって戦っていたり、何やら召喚した存在同士で戦わせていたり、逃げ回ってるのを追いかけてる奴がいたり……。


 さすがにここが三階だからかどちらも良く見える。

 そんな光景を見て、俺はいつもこう思う。


「ったく。好き勝手に壊しまくるなよな。直すの大変なんだっての」

「ボス! 報告書ができたんでお持ちしました!!」

「呼び方は統一しておけよおい!」

「すいません! ……って、すごっ!!」


 いつも見てるはずの景色に驚いているわけがないから……暇潰しで作った塔みたいなものに驚いているのか。

 そう思った俺はすぐさま振り返り、「書類くれよ」と言った。





 それから数時間後。具体的に言うなら残業手当がもらえる時間を三時間オーバーしてから。


「終わったわー」


 背筋を伸ばした俺はまとめられた書類の束を持って今日の帰宅前の仕事をすることにした。


「今日……いや昨日の報告書持ってきました」

「わざわざ言い直さなくていいって。一番君が遅いけど、お蔭で私が怒られることがないからね」

「そうですか」


 朗らかに笑う上司を見て、仕事の終わった俺はビジネスバックから栄養ドリンクを二本取り出して一本を上司に渡した。


「毒でも入ってる?」

「そんなわけないですよ。いつも飲んでいるから大丈夫でしょ」


 そう言って俺はふたを開けて一気に飲み干す。

 ……あー帰って寝ても普通に出社できそうだ。そんなことを思いながら上司の顔を見ると、すでに上司も飲んだ後で「いつも悪いね」とまた朗らかに笑いながら言ってきた。


「いいですよ別に。俺が帰ってから仕事が始まるんですから」

「本当、君が部下で良かったよ」

「だったら出勤時間遅れても「それはダメだよ」……それじゃ、俺は帰りますわ」

「うん。気を付けてね。まだ続いてる区域もあるらしいから」

「うっす」


 そう言って俺は途中にあったゴミ捨て場のビンの場所へ入れ、何事もなく帰路へ着けた。





















 これは、周囲が野郎しかおらず、恋愛要素なんてあるわけのない世界修復の役割を担う中間管理職である俺の話である。

 期待はするな。

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