シャボン玉の気持ち
「ねぇねぇ、これ買わない?」
「シャボン玉? わぁ、小学生以来かも」
友達以上、恋人未満。 そんな関係の僕ら。
友人の家で鍋パーティー、買い出し係に君と二人でお買い物。 あれやこれやと買い物カゴに物を入れる君、それを僕は冗談混じりで返却する。 手間のかかる子供みたい、楽しそうにウキウキしてる。 そんな君がたまらなく可愛いなんて、口が裂けても言えないし。 口元が緩むのも必死に止めてるんだ。
周りからは、やんちゃな妹としっかり者の兄、みたいに見えたりするのかな? まぁこの関係でも十分楽しいんだけど。 ……恋人同士とかに、見えたりするのかな? まぁ見えたとしても、実際そうではないのだけれど。
「へへぇ、さっそく開封!」
袋を僕に持たせて、君はシャボン玉を取り出した。 本当に子供みたい、でもその嬉しそうな横顔は女の子だからさ。 すっごい、ドキドキしてしまいます、ごめんなさい。
「いくよ? すぅ……」
歩きながら、君はシャボン玉を作り出す。 連なって出てくる透明なシャボン玉は、見ていて嫌じゃない。 嬉しそうにはしゃぐ君がいるのだから、なおさら嫌じゃない。 綺麗だね……
「やる?」
君はそう言って、僕にそれを手渡してきた。両手が塞がってる、そう言えば代わりに持ってくれる。 何気ない優しさなのか、それとも当たり前の行動なのか。 どちらにしろ、これは…… 自分の唇を軽く触った。
そういうの気にしないのかな? 異性なんですけれど、いいんでしょうか? 僕だから、なのかな。 そうだとしたら、果たして喜ぶべきなのか落ち込むべきか悩むところですね。
「やんないの?」
「いや…… じゃあ、ちょっとだけ」
不思議そうな顔してる。 これは多分、気にしてないんだね。 ははっ、少しショックです。 僕はドキドキしてるというのに。 ……じゃあ、失礼します! 僕は心の中で謝って、ゆっくりと息を吐いた。
小さなシャボン玉が、空へと登っていく。
「わぁ、すごいすごい!」
「……次、もっとすごいことしてあげるよ」
君の喜ぶ顔が嬉しかった。すごいって、僕に言ってるのかシャボン玉に言ってるのか分からないけど、嬉しかった。
「すぅ……」
大きく息を吸って。 心の中で、あることを願う。 君に言いたい、一言を唱えた。
好きだ!
「…はぁ、はぁ、はぁ」
「うわぁ! でっかいシャボン玉! すごいねぇ!」
空へと登る、大きなシャボン玉。 君は上を見上げて、笑っている。 僕の気持ちを込めたシャボン玉。 喜んでくれて、何よりです。 そのシャボン玉に、勝手なんですが君への気持ちを込めました。
あのシャボン玉が、空高くまで行ったら告白しよう。 ……なんて、無謀なことは言いません。 シャボン玉はいつか必ず弾けてしまいますから。それにそんな勇気も標準装備されてない草食系男子ですから。だから、小さなお願いだけしてみた。
あのシャボン玉は、僕の中で膨らんだ、彼女への気持ちです。 だから、あれが弾けたら…… ほんのちょっとでいいので。 弾けて散らばった僕の気持ちが、少しでも彼女に伝わりますように。
そんなこと思いながら。 空に昇って行く透明な気持ちを、君の隣で眺めてた。
ありがとうございました




