第5話 でっかいもふもふからの食べるべきかそれとも……
「おお、白い角が生えてる、でっかい猫だ」
そう、本当なら虎だの獅子だのといった魔物と言うべきなのだろうが、
あまりに白いモッフモフが愛らし過ぎる、そしておでこからユニコーンやイッカクみたいな角が、
本人は、いや本猫は、いやいや本魔物はか、動けないまま半日放置のためグッタリしている、近づくと鼻がヒクヒク。
「フシャアアアアアーーー!!!」
おお、猫の威嚇だ!!
動けないくせに……ていうかこれ一匹か、
もし魔石500個を今日中にゲットできなければコイツを使って……
(この剥いだ皮で、防寒具にできる!)
それどころか布団も可能か、
皮を剥ぐ道具って公園で何があるのだろうか、
ピッチフォークは切れ味鋭いが、剥ぐというより裂くだし、んーーー……
「あっ、肉球もでけえ! ぷにぷに、ぷにぷに」
やっぱ硬いな、熊の肉球みたいだ、
そして爪が鋭いっていうかこれで皮を剥げないか?
ええっと箱からの画面では……公園用具……おっ、『剪定鋏』か、魔石5個。
「よし、じゃあ先に生きたまま、皮を剥ごうかな」
「……んなぁ~~~~おおぉぉぉ」「おいおい急に媚びるなよ」
「にゃああああ、ふにゃああああ、にゃ~~~~~あああぁぁぁ~~~……」
急に悲痛な叫び声を。
(待てよ、実は希少種って可能性もあるのか)
周囲を見た感じ、
このタイプの魔物はコイツだけだな、
そしてヨダレを垂らしている……あっそうだ!
「お前、生肉喰うか?」「んに”ゃあ”あ”あ”~~~」
小型ドラゴン系の魔物が、
確か肉がやわらかかったはず、
味も鶏肉な感じで……小箱からいくつか出す。
(……よし、ピッチフォークに刺してっと)
一角大猫の口元へ近づける。
「ちゃんと僕を襲わず逃げるなら、食べていいぞ」「ふにゃ?!」
そして口の中へ入れると……
おお、身体は動かなくても食事は出来るっぽい、
どんどんどんどん突っ込んでやろう、どうせすぐ喰い切れる量じゃないし。
「ええっと、水は要るか? ってバケツが必要だな」
「ん”な”あ”あ”あ”~~~~~……」「おお、口に溜めてる」
「……グルグルグルグル」「おお、機嫌良くなった、よし、放してやるから逃げろ」
やっぱり猫型は殺れないや。
ええっと箱の空いてる方を猫に向けて、
念じるべきか唱えるべきか、よし、念じながら唱えよう!
(もう片手でピッチフォークは構えてね!)
よし、距離を取って……行くぞ!
「猫を、解き放つ! さっさと行けーー!!」
すると箱から光が注がれて……!!
「ん”に”や”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」
おお、怒涛のダッシュだ、
脱兎のごとく、いや脱猫か、
異世界ものなら後で『あの時助けていただいた猫です』って人化して……
(そもそもあれオスか? メスか?)
……はっ、しまった!!
「オスだったら、フッサフサのタマタマをモミモミしてみたかったあああああ!!!」
って何を叫んでいるんだろ、
さあ、夕食までもう時間がない、
とにかくエアコン付き最上級の東屋『六角堂』を入手しないと!!
(さっきの猫の、魔石ひとつ分だけ足りないなんてことは無いよね?)
そんときゃ意地で掘りあててやる。
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一方その頃、辺境伯邸では……
「ばっかもおおおおおん!!!」
怒号が響く来賓の間、
隠居した前当主であり、
クライヴの祖父、ステファトフによるものだ。
「お爺様、なぜそこまでお怒りに」
「アレは、ハルクは事実上、母上の、ハルカ母様の後継者じゃ!」
「いや、そんなこと言われましても」「それを追放だと?! 今すぐに連れ戻して来い!!」
いつもは自分に甘い祖父の、
見た事も聞いた事も無い剣幕に驚くクライヴ、
両脇の正妻スージーは耳を塞ぎ、側室メイドのケティは頭を押さえてしゃがんでいる。
「もう死にました」「なに、本当か?!」
「はい、死体の回収は危険です」「……本当に死んだのだな?」
「あれで死んでない訳はありません」「うーむ……ふう、ならば良し」
急にヒートダウンした祖父に、
安堵の表情を浮かべるクライヴ、
スージーもケティも安心して直る。
「いったいどういうことなのでしょうかお爺様」
「母上が持っていた『秘宝』、あれはハルクが受け継ぐことになっていた」
「はい、詳しくは知りませんが、話は父上から」「しかし死んだのであれば、所有権は誰の物でもない、はずだ」
座って水を飲む祖父ステファトフ、
やれやれといった感じで大きく息を吐いた。
「その『秘宝』は、きちんと父上が持っていますよ」
「わかった、その話が本当なら、そして本当にハルクが死んだのなら、別に良い」
「それにしても、その秘宝というのは」「物を前にしたら、改めて話そう、今夜のパーティーが一気に楽しみになったわい」
安心に包まれた貴賓室、
しかしこの時点では誰も知らない、
その『秘宝』がすでに、ハルクの手元へ移動してしまっていることを……。
(爺様に驚かされるとは……風も強くなってきたな)
ハルクは死んだ、
そう信じたい、いや、
信じ込んでいたクライヴであった。




