第17話 懐いた猫からの姫を優先するとこうなる
「「「んみゃいんみゃいんみゃいんみゃい」」」
解放してやった後、一角子猫三匹が、
母猫がある程度噛んでやわらかくした魔物肉を、
目の前に吐いて食わせている、乳離れはしているのか。
(だったらもう、赤ちゃん猫じゃないな)
焼いて冷めた肉でも美味しそうに喰ってくれて良かった。
「ていうか母にゃんこも食べなよ」
「ん”にゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”~~~」
「ちょ、すりすりすんな、角が危ない」「ん”みゃっ!!」
了解した、っていう返事かな?
改めて肉を出してやるとがっついた、
大きくて斬るのが面倒だった生肉……お腹壊すなよっと。
「まあ適当な所で帰ってくれ、俺は魔物退治の途中だ」
急にノルマが増えて大変なんだこっちは、
フィーナさんは姫に集中して貰って俺はひとりで狩りの再開、
俺は黙々と泥だらけになりながら狩りを続けていると……あっ、にゃんこが。
(お腹いっぱいで帰るのかと思いきや、足湯に!)
慌ててフィーナさんが出てきたので、
僕は両腕を繰り返し下げて大丈夫ですよって合図する、
伝わったものの六角堂の入口で警戒しているな、門番状態。
「ていうか、何をやってるんだろう?」
見に行くと、
足湯をぴちゃぴちゃ飲んでやがる、
猫は普通の水よりお湯(ぬるま湯)の方が嬉しいっていうからな。
「厚かましいなお前ら」
「んにゃ」「にゃんにゃ」「にゃぁご」
いや急に顔を上げられたら、
子猫でも角が危ないっていうの、
そして母猫は温泉の方をがぶがぶ、いいのか。
「まったくもう、肉はあるけどお前らを飼う精神的余裕は無いぞ」
「それよりもハルク」「はいはい、魔物狩りですよね、姫を護っていて良いですよ」
「済まない」「お前たちも適当な所で巣に戻れよ」「「「んにゃぁにゃあにゃあ」「ふ”ぎゃ!!」
なんだ最後の母猫の声は、
まあいいや、ええっとまずはタオル、
そして服だから自販機優先、急ごうっと。
(雨上がりでぬかるんで、滑りそうだ)
にしてもほんっと、
このあたりの敵は凶悪すぎる、
お腹に人の顔がある牛の化物も居るし、直立歩行の。
「お前、喋れるか?」「ガルルルル……」
「いや牛が狼みたいに、ってこれ顔の方か」
まあいいや、さくさくっと。
「うっわ、こっちは顔がふたつのワイバーン!!」
などと狩っていると、
いつの間にか俺の背後を猫がストーキング、
いやこれ見守ってくれているのか?! 子猫はじゃれあって遊んでいるし。
(角が刺さらないかヒヤヒヤする)
まあ良い、魔石魔石っと!
……といった感じで狩りに狩った結果ですねえ、
夕方になりましてお夕食タイムですよ、さすがに肉はフィーナさんに焼かせています。
「ほら味見だ」「んにゃあう」
なーに仲良くなってるんだか。
「ただいま戻りました」
「おう、魔石は」「489個ですね」
「なんだそんなものか」「では自販機を」
多目的トイレの隣に設置するにあたって設定を……
「一番上のキャップS・M・Lとかもったいない」
「何を見ているんだ」「あっそうか、フィーナさん見えないんですね」
「しいて言うなら箱に話しかけているのか?」「僕にだけ見える操作をやっています」
きちんと説明しなくちゃ。
「それで」「初期設定が、上三個がキャップ、その下がTシャツS・M・L、
更に下がタオルS、M、L、ただLといってもバスタオル程じゃ」「二枚頼む」
「いや僕の分」「姫だけで二枚だ」「あっはい、じゃあ」「とりあえず姫を先に」
どんだけ姫様大事なんだ。
「最後はフリーで入れられます、その、姫の下着ですよね」「上下頼む」
「いや、それだと僕のトランクスが」「そうか男の下着か」「フィーナさんは」
「姫が優先で」「それは嫌です」「私なら男の下着でも」「いやいやいやサイズが」
結局、女性用ショーツSと男性用トランクスMと女性用ショーツXLにした。
「設置、っと……場所は多目的トイレの隣で、ってにゃんこどいて!」「ふにゃぁ~」
緑色の立派な自動販売機だ。
「お金はやはり魔石かあ」
「よし、姫の当面の分を」「フィーナさんのも」
「ハルクのもか」「ただ、これだと二つ目の六角堂がぁ」「私は構わん」
いや僕はー?!?!
「ええっとにゃんこ、今夜、身体貸せるか?」「ぶにゃっ?!」
「ハルク、まさかそういう趣味が」「違いますよーーーったくもう!!」
姫を優先するとこうなるか、
いやほんと僕、なんで下僕みたいになっているんだか、
これは夕食終わったら、もうひと踏ん張りだな、穴も掘るかぁ。
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一方その頃、辺境伯邸では……
「ふむ、料理長、今日の料理は」
「農園から新鮮なものが運ばれて来ませんでして」
「ゴーレムが止まっているせいか」「申し訳ありません」
不満そうなクライヴ、
それでも十分、豪華なのだが。
「ねえクライヴ、今夜は買ったばかりの勝負下着で」
「私も、メイドにあるまじき高級な」「良い良い、必要な経費だ」
そこへ入ってくる執事。
「坊ちゃま」「どうした、食事中だぞ」
「それが、古いゴーレムの何体かが……崩れはじめました」
「なにっ?!」「これは前回にはなかったことです、いかがなさいましょう」
苦い表情で肉を噛みしめるクライヴ。
「そうだな……」「ははっ」
「寿命だろう、一応は調べさせろ」
「かしこまりました」「父上は」「例の公爵家に招待されております」
こうして確実に滅びはじめた要塞都市、
だが、クライヴはそのような状況を、まともに受け入れようとはしなかった、
この時、徹底的に原因を究明していれば、あるいは……。




