第14話 ぎりぎりセーフからの眠り姫と美巨女
「……間に合った、かな?」
雨がしとしと降り続く中、
落ちてきた女性の所へキャンプランプを持って駆け寄る、
地面すれすれに逆さになって……って、でかっ! なんだこのでかいのは。
「これ、オーガか? いや、人間っぽいな」
「……あんまりな言い様だな」「ごめんなさい女性っぽい感じはしました」
「それより今は、どういう状況だ」「ええっと頭の先が地面すれすれ、ぎりぎりセーフです」
回り込んで正面を見ると、
金髪の女の子を抱えている、
それよりこの銀髪の巨女! ……泥だらけだな。
「それで私は、この後どうなる」
「ええっと、動きを再開したら首が埋もれるか、ボッキリ折れますね」
「ならば、姫だけは助けてくれないか」「胸の中のですか」「落下の最中に気絶してしまったようだ」
愛おしそうに胸の中の姫を撫でる、
ていうか空中で止まってはいるものの、
その場であればある程度は動けるみたいだ。
「うーん、クッションとかあるかなあ」
「助かるのか?!」「いま、考え中です」
「時間で勝手に落ちることは」「さあ」「君の魔法では無いのか」「違う、とも言えますし、なんというか」
説明難しいなコレ、
手元の小箱に聞いてみるしか……あっそうだ!
「とにかく姫を、姫を助けるためなら何でもする、何だってやる」
「あっ、いま『なんでも』って言いましたね?」「ああ、だから」
「まずちょっと試してみますね、小箱をそっちへ向けて、っと……」
あえて口に出して言おう。
「仰向けにして、ゆっくり、ゆ~~っくり降ろしてあげて下さい!!」
おお、小箱から光が出て、
本当に身体を水平にしてくれた!
そしてビチョビチョの地面へ下ろされる。
「……動くようだな」
すっく、と立ち上がった巨女、
身長2mとまでは言わないが180cmくらいか、
スタイル良い、って見てないでとりあえず案内しなきゃ。
「ええっと、ちゃんとした室内は一か所しかありません、さあこちらへ」
「すまない、姫の身体を早く暖めたい」「エアコンがありますから」「なにっ?!」
「あっ、知ってるんですかエアコン」「ああ、王都にかつてあったという伝説の……」
そして東屋の中へ。
「姫、姫、もう安全です」
「その、タオルとか無いですが」
「飲み水は」「少しで良いなら水飲み場から」
BBQセット付属の紙コップで、
水を汲んで運ぶ……雨が入っちゃうのは仕方ないか、
そして東屋へ戻ると横にされている姫、巨女は膝立ちでぎゅうぎゅうだ。
(うん、巨女過ぎて僕の入るスペースが無い)
これが『軒下を貸して母屋を取られる』というヤツか。 か?!
「どうぞ」「助かる、あとあの温かい風が出ているのが」
「ええそうですエアコンです」「こんな所に現存していたとは」
ていうか僕も寒いから普通に入りたいのに、
巨女さんはそれどころじゃないみたいだ、僕の家なのにい!!
(しかし横顔、美人だなあこの巨女さん)
えっ姫はって?!
普通の少女ですね、はい。
「姫、姫……しばらくは眠り続けるようだ」
「そうですね、じゃあ僕はええっと、とりあえずタコ滑り台へ」
「失礼、大切な事を聞き忘れた、君の名は」「はい、ハルクです!」
良かった、
ようやく僕自身にまともに興味を持って貰えて!
(それはそうと、姫ってどこの姫なんだろう……???)
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一方その頃、辺境伯邸では……
「あらクライヴ、二度寝?」
「ああスージー、この雨だからな、眠くなってきた」
「今日はお休みですものね」「一緒に休むか」「はいっ!」
窓を見やると、
外では雨の中、大きなドラゴンの影が。
「捨ててきたようだな」
「クライヴ、これもビジネスになりそう?」
「禁忌の荒地への邪魔者送りか、確かに稼げそうだな!」
そこへ戻ってきたケティ。
「クライヴ様、街の教会が騒いでいます」
「なに?! 何と言っているのだ」「はい、加護がなくなった、と」
「魔法防御壁か」「いえ、もっと大切な……」「放っておけ、何なら剣で脅しても良い」
スージーに抱きつくクライヴ。
「あん、もうクライヴったら」
「こういう日は一日中、というのも良いかも知れんな」
「あのっ、わ、私も」「ケティもか、来い来い!」「は、はいっ!」
楽しそうな三人……
だが、笑っていられるのも今のうち、
という言葉がぴったりな状況なのを、まだ誰も知らない。




