第12話 夜の豪雨からのここで暮らして行くために
「これ、止む気配ないな」
夜の六角堂、
エアコン完備で快適とはいえ、
トイレにちょっと走っただけで濡れる濡れる。
(夕食も食べ終わっちゃったしなあ)
あとは寝るだけだがやはり体が少し痒い、
今にして思えばどうせ追放なら衣服も少し持ってくるべきだった、
いや実家は僕を処分、すなわち殺す気満々だったから渡しても意味ないって考えだろうけど。
「とりあえずチェックした購入品は……っと」
ちゃんと一覧にピンで刺せるのが良いな、画面内で。
「衣服はお土産自販機、で品目は十二個中、九個は決まっていてあと三個がカスタマイズかあ」
上から公園名のキャップ、Tシャツ、タオル、サイズがS、M、L、
そして一番下は自分で設定できるからトランクスにしよう、将来を考えたらこれもS・M・Lかな、
ただこれ買うのに更に魔石が必要なうえ、公園名を設置しないと置けないらしい、そう、入口だ。
(入口石碑もしくはウェルカムゲートを建てる時、公園名を決められるのですよ!)
単純にハルクパークで良いかなと思っている。
「お風呂は、まあ将来的な公園管理棟とかにシャワーとか付くみたいだけど、
安く済ませるのはやっぱり足湯だよね、まだ僕が子供だから寝て浸かれそうだけど」
怖い公園管理のおじさんが『コラー!』って怒ってきたらどうしよう、
それはそれで会いたいけど多目的トイレみたいに赤ランプのブザーがせいぜいだろう、
あと屋根が簡単なものだから、今、外で降っている豪雨に横風が来たら多分濡れる、衝立でも買うか。
(いや、いっそ周囲の森から木を切って積んで……今の僕じゃ無理だな)
公園に衝立みたいな設備ってあったっけ、
あっても値段が、いや必要な魔石が多そうだ。
「で、食べ物なんだけど、小麦畑とかあるのな」
ただ設置して収穫した所でパンにする工程をどうする、
一応、石窯とか設置できるが、それよりやはり自販機だ、
これ見ると面白くて、パン、そば、ラーメン、チャーハン、から揚げとかもあった。
(もちろんジュースの自販機でスープ系も、しじみ汁とか)
いやパンにはやはりコーンクリームスープだろって、
設置するのは良いけど中の缶ってどこから仕入れてるんだろう、
まあ異世界(地球の日本)からしかないか、このあたりのからくりは考えるのが面倒くさいからいいや。
「という訳で、四桁の魔石は必要となりました!」
そう考えると今すぐ欲しいな、
とはいえこの豪雨だ、穴を掘るにもタコ滑り台の下くらい、
しかもそこは掘り尽くした、となると……魔物を集めるしかないか。
(どうだろう、今のこの状態で、小箱の蓋を閉じてみるのは)
とりあえず灯りはふたつある、
多目的トイレ近くとこの六角堂近く、
でもあの明るさの街燈、安全地域外から見えるかどうか……
「今からまた肉を焼くのはなあ」
単純に外で長時間居ると凍死する、
この夜、もし敵が寄って来てもこの豪雨の中で倒すのは……
いや倒すのは後で良いか、朝になってからでも、雨が止んでからでも。
(むしろ勝手に凍死してくれている、まであるかな?)
どっちみちピッチフォークで裂かないと魔石は手に入らないけど。
「まあいいや、閉じちゃえ」
こうして僕の『異世界公園造り』は始まった、
いよいよ当面の目標も定まり、果たしでどんな生活が、
スローライフが始まるのか、そして公園の最終形は……?!
「公園という名の、楽園になるといいなあ……」
=================================================
一方その頃、辺境伯邸では……
「クライヴ様」「なんだ、もう寝る所だぞ」
「先ほど、王都のドラゴンが」「この大雨でか」
「何でも罪人の『姫』を、早く片付けたいようで、お会いになられますか」
そう訪ねる執事だが、
奥のベッドでは正妻スージーと、
側室ケティがクライヴを愛そうとスタンバイしている。
「今は忙しい、それにもう『姫』では無いのだろう」「さようでございますね」
「処分はいつだ」「ドラゴンを休めたのち、早朝に」「なら起きれたら見よう」「ははっ」
「無理して起こす必要は無い、起きてこなかったら処分していて良い」「かしこまりました」
こうしてベッドへと戻るクライヴ。
「ねえ、何の話?」「ああスージー、しいて言うならハルクの新しい嫁だな」
「まあ、それはどんな」「罪人だ、ヤツに相応しい、あの世で結婚式だろう」
「クライヴ様、私達の結婚式は」「ケティ、そんなに長くは待たせないが、ひとり増えるかも知れない」
そう言いつつ、
二人を両脇で抱える。
「正妻は私よね? クライヴ」
「クライヴ様、何があっても、一生、お支え続けます」
「そうだな、一生ついてこい、この要塞都市を、ひとつの国家と同等にしてやる!!」
こうして夢に満ち溢れていた寝取り次期当主クライヴ、
そしてハルクを裏切って寝取られたスージー、ケティ……
更にウィリパテル辺境伯家そのものも、この時は知らなかった、全てが破滅へ向かっていた事を。
――そして、地下牢では。
「姫、大丈夫です、私が最後の一瞬までお守り致します」
「フィーナ、ごめんなさい、私のお付き衛兵になったばかりに」
「いえ良いのです、私は姫に一生を捧げた身、姫の幸せのためなら、なんだって、どんなことだって、やり遂げてみせます」
大柄の女性が姫と呼ばれる少女を抱きしめていた、
絶望に満ちた表情で涙を流す……だがまだ知らなかった、
彼女達が捨てられる荒野は決して死地ではなく、楽園となる公園の予定地であることを。
第二章へ続く。
第二章から1日2話更新予定となります、時間は不定。
面白かったり期待していただける方は作品ブックマークと、
出来れば★評価★をしていただけると嬉しいです、よろしくお願いします!!




