2話 熱帯夜のLoL2
「コホンッ…こんばんわー。よろしくお願いしますー。」
「ンッンッ…よろしくお願いしますー。」
…滅茶苦茶に気まずい…LoLで、野良とデュオボットをランクで回す…しかもVC有りで…すげぇ憂鬱な気分…
聴こえてきたVCは、中性的と表現するのが合っているであろう声、低めな声だが、マイクの音質が良くないのか少しだけ聞き取りづらい。
「あの、Y-RAMさんって呼び方で合ってますか?」
「あー、長いので、ラムでいいですよ。そっちの名前は…これなんて読むんですか…?」
「あーこれ柘榴って読むんです。」
「ほー…了解です。ザクロさんですね…」
…
「じゃあ、やりますか。」
ピロンッ
一瞬VCをミュートにする両者
…ぷはっ!…ふふふふふ!なにこれ?あんなに試合中はチャットとかエモートで盛り上がってたのに、いざVCを繋いだらこんなに隠の空気を漂わせてるの?私たち!
いけないいけない…こんな最初からミュートにしてたらLoLどころじゃない…
ピロンッ
「あのー、ザクロさんは、スレッシュOTPなんですか?マスタリーがめちゃ高いので…そうなのかなって。」
「あ、あぁ。そうなんです。ラムさんは、いろんなチャンピオン使うんですか?」
「あーそうですねー。ADCはけっこーなんでも使いますけど、ベタ足が多いかもです。ブリンクチャンプ苦手なので。」
「えーそうなんですね。じゃあスレッシュと相性良さそうでいいですね。」
…
ピロンッ
…ぷはっ!…ははは!なんだよこれ!普通に初対面の人と話すより盛り上がらないんだけど!共通の好きなゲーム一緒にやるってのに!
ってか、俺ら毎回「あー」とか「ほー」とか、なんか言わなきゃ喋れないのかよ!これに気付いてから気になって仕方ない…!
いけねいけね、会話を続けないと…マッチング長すぎなんだよこのゲーム!
ピロンッ
「そういや、さっきのラムさんのアッシュ、動きヤバすぎましたよ。カイトもムーブも凄すぎましたけど…特にアサシンに対してのW、R。あれは痺れましたね。」
「え、でしょ!そうだったよね!そこに気づくの分かってるね…!あのいなし方、完璧だったよね…!ってかザクロさんのランタンで死にかけたんですからね?ほんと次のマッチはあれだけ気をつけてくださいよ?」
「あーあれ!ほんとごめん!スキル当たってれば完璧なキャッチだと思ったんだけど!いやどのみち敵全然見えてなかったし、危ないキャッチだった…ほんとラムさんに助けられましたよ…」
「そのお陰であの動きできたからいいですけど…でも、レーン戦から終盤まで、けっこースレッシュに助けられたんで…最初のダブルキルとかも、あのフラッシュEからのランタンでエズまでいくのは、OTPを感じましたねー。」
「いやーあそこね!俺も上手かったけど、正直ラムさんが即ランタン乗ってくれて、エズのQ受けてくれなかったら俺死んでたんで。あれ乗ってくれたときに、この人とデュオボットしてー!って思いました!」
…なにこれ…急に盛り上がって…楽しい…!LoLの会話が出来るって、こんなに楽しいの…!自分の良いプレイを一人で見返すのも気持ち良いけど、人に褒められるともっと気持ち良い…!やばい…一戦といわず、もっとLoLしたくなってきた…!あぁ…嫌な人じゃなさそうで安心したー…
「ふふふ…そういえば、ザクロさんは、なんでスレッシュOTPになろうと思ったんですか?やっぱりランタンですか?」
「それ聞いちゃいます?語ると長いですよー。んー、ランタンもあるけど、やっぱり全部の通常スキルがモンタージュになり得る可能性を秘めてるところですかねー。フックだったら敵のスキルドッジ読み、フラッシュ読みで当てたり、ランタンだったらQ2とランタンを組み合わせたとんでもエンゲージとか、ランタン味方が掴んだ瞬間フラッシュしたりして映えるし、フレイは敵のブリンク落としたり…ザックとかアリスターとか落としたらもう最高の瞬間!」
「ふふっ…ちょっと早口すぎ…たしかに言われてみればどのスキルも映えますねー。しかもultも絶妙に強いですよねー。あの広範囲に激重スロウ、ダメージも痛いし、フレイでぶつけてくるし、あれ展開されたら、毎回絶望しますもん。」
「え、ちょっとまってラムさん?今スレッシュRを強いって言いました?んなわけないでしょ!なーんも分かってないじゃん!あのultはほんっとに酷い!だってベイガーのEの完全下位互換ですよ?はっきり言ってゴミ!自分の周囲にしか展開できないし、激重スロウ(笑)よりスタンのほうが圧倒的に強いし!ダメージなんて無いようなもん!APレシオはまぁ高いけど、スレッシュはタンクビルドに行かざるを得ないし!なんでultがベイガーの通常スキルに負けてんだって!そこだけ今すぐリワークして欲しい!」
「はぁ?!OTPのくせにスレッシュRの強さを理解してないの?!あーあんた、スレッシュばっか使ってるせいで、対面に来たことないから分からないんだ?まずベイガーのEと比べてるのがおかしくない?他のスキルセットみなよ!ベイガーは自分から檻に当てるスキル持ってるの?スレッシュはフレイとフックで強引に当てに行けるけどさ!それにスレッシュultは2枚目、3枚目に当たる可能性があるし!魂拾ったらAPが上がるんだからダメージも出るでしょう?そんなult2回3回当たったら、連続した激重スロウに高ダメージでファイターですら何もできなくなる!やっぱOTPって歪んだ変な人ばっか!」
「はぁぁあ!?正気か?!お前?!どう考えても完全下位互換だろ!ベイガーの檻に当たったやつの末路を知らないわけないよなLoLやってるなら!!即死!!即死だ!!!それにあっちは遠くに出せるんだから、味方のCCに合わせたりも出来るし、敵の強引なエンゲージをE一つで止めることも出来る!!スレッシュのRを出されたからなんだ!タンクかファイターがウィーンって突っ込んできて終わりだろ!!あと、2枚目3枚目があーだこーだ?お前のほうがスレッシュにわかじゃねぇか!!スレッシュの壁は2枚目からはスロウ半減!ダメージに関してはゼロ!!!お前みたいなにわか勘違い野郎がいるから、スレッシュのultがいつまで経っても調整されないんだよ!!」
…なんだこれ!!!ぜんっぜん楽しくねぇ!!LoLのエメラルド帯なんてろくでもないやつばっかだわやっぱ!!マジでフレンド申請なんてするんじゃなかった!!このゲームはLoLなんだよ!!あーさっさと寝ればよかった!!
BAN&PICKの画面まで進んでしまい、やめるにやめられなくなってしまった2人。
当然だろう。もしドッジしようものなら、自身が必死に積み上げてきたLPをドブに捨てることになるのだから。
2人はそれぞれ、アッシュとスレッシュを即ピックする。
くだらない口喧嘩は試合開始のカウント1秒まで、一切途切れることなく続く。
口論はカウントが刻まれるごとに激しさを増し、この熱帯夜、両者の額には苛立ちと共にじんわりと汗が滴る。
「お前がドッジしろよ!」
「あんたがドッジしなよ!」
サモナーズリフトへようこそ。
あなたのチャンピオンが倒されました。
試合は15分で終わった。




