第9話 草原の街
草原を行く荷馬車の上、わらが積まれ、二人リラックスして微風を感じていた。
風は温かく、ちょうどよい温度。快晴で空の雲が綺麗。
「仲間、あつまらなかったね~」
世界に名を轟かす最強クラスの二人に、共に冒険出来ると確信の持てる冒険者は現れなかった。
前提としては、力の差はあっても良いと考えていたが、中々上手くいかないものだ。
「で、次どこ行くの?」
そのまま始まった二人旅、旅の目的地は取りあえず決めていない。
というより彼女が、
「取りあえず次の街へ行かない?」
と言い出したから、移動している訳だが。
何故だか今回は転移魔法は使わなかった。
「まぁ、転移魔法で一瞬じゃ、旅情もなにもないからね~」
との彼女の言い分だった。
まぁ、これはこれで悪くはなかったが。
ずっと俺が続けてきたことだ。この三年。
ただ、今は少し違くて、旅の道連れが居た。
緩やかな風が何処か平和を感じさせる。
まるで冒険なんかしていないみたいに。
ただ、二人で旅を、しているみたいに。
世界に闘いなんか存在していない。ついふと、そう錯覚してしまいそうなくらいに、和やかな風景だった。
「次の街に着いたら、なんかクエスト受けようよ」
ふいに、そんなことを言い出す。
「いいね」
そんな、静かに始まった二人の旅は、新たな世界の幕開けへ向かって進んでいく。
別に戦わなくてもいい。
こんな穏やかな旅が、ずっと続いてもいい。
そんな思いが、ふとわいてきた。
草原の街。
冒険者支援施設。
「このクエストにしよっ」
彼女が手に取ったのは、まるで適当にその中から一枚剥がしたみたいな挙動で。
「……」
すげー適当だな。
外に出ると、少し強めの風が吹いていた。
街中にある風車が勢いを増し、何かの始まりを告げているようでもあった。
日暮れ。
逆行で黒っぽい、誰かの影。
「……」
「あの」
突然、声を掛けてくる少女。
姿は暗いが、声で分かった。
「流星さんと、エレナさんですよね」
いや、一応流水だが。
それが彼女との、最初の出会いだった。
名前はレナ、旅の魔法剣士をやっているそうだった。
といっても、純粋な魔法も、剣術も、両者とも達人レベルに使いこなす猛者だった。
二人の、仲間に加わりたいと言う。
「いいぜ」
簡単に決めてしまう。
殆ど直感だった。
ただ一つ、彼女の身体から滲み出る力の感覚が、尋常ではない絶対強者のそれだった。
次の適当に選んだクエストは、偶然にも超SSSSランクの超大型魔獣退治だった。
過去数度、付近の街や国を滅ぼしたことのある、伝説級の魔獣。
「あぁ……そうか。そんなに俺を殺したいんだな?」
「楽しみですねっ」
「……!」
俺が死ぬのがか?
「大丈夫だよっ、死なないっ。多分」
エレナも、ちょっと自信なさそうだった。
大丈夫かよ。
前途多難な幕開けだった。




