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第2話 冷雨の覚醒

 全身が冷たい。傷に染み込んだ水が、痛みを生んでいる。

 どうやら森に雨が降っているようだ。


 起き上がるのも億劫で、ちょっと身体を動かそうとするだけで、全身が悲鳴を上げる。


 鉄の匂いがする。

 どうやら出血は治まっているようだ。


 痛過ぎる身体をどうにか起こし、多少バランスを崩しながら、立つことに成功する。


 「はは……何だよ、この様」


 武術の達人? この有様で?


 限界を感じた。

 魔物のような生物とはいえ、狼三匹に苦戦して満身創痍。


 「とにかく、森を抜けないとなぁ……」


(まだ、終わる訳にはいかない。あの誓いを、果たすまでは……)


 何処かの街まで辿り着いて、治療を受けないと。

 現状、死んでないのが不思議なぐらいだ。


 あてもなく森を、いずこへ向かって、歩き始めた。

 シトシトと降る冷雨が、自分の頭を冷静にしてくれる。


 だいぶ歩いた。

 景色は代わり映えなく、ずっと同じ様な森。


 ふと、複数の気配を感じた。


 見ると、殺気立った先程の獣が、仲間を連れてきたのか、5、6匹程、周囲を囲んでいる。


「マジかよ……」


 どうする? 雨で冷えた頭で考える。

 同時に、武術の構えを取っている。


 魔物が高速で駆け、襲いかかって来る。

 何匹かを殴り、いなすと、脱兎のごとく、逃げ出そうとした。


 だが、脚は思う様に動作せず、ゆっくり駆ける様な感じになってしまう。この間にも飛びかかる魔獣。


 これ以上、傷を受けたら不味いな。

 本当に死ぬ。


 だが、さっき程、攻防のやり取りに、苦戦しなくなっていた。


 次第に、相手の動きが読めて来る。スピードにも目が慣れ、対処が可能になって来た。


 こちらの防御、回避向上と、こちらの攻撃ヒット数が多くなる。


 あぁ……そうか。

 今までやって来たことは、無駄じゃなかったんだ……。


 積み上げた経験と技、思考力が、次第に活き始めて来る。


 3匹目を、打ち倒した。

 流血し傷だらけになり、横たわる狼型の魔獣。


 精神力が発揮されているのか、全身に覇気が増している。

 身体に、何らかの力が流れている様に感じる。

 何だ、この感じは……。


 その力のせいなのか、魔物に打撃が通りやすくなっている。


 試しに、その力の流れを強めるイメージで、拳と共に打ってみる。


 1匹の魔獣が、高速で吹っ飛んだ。


 !!


 その魔獣は、既に絶命していた。

 4匹目……。


 今度こそ、脱兎のごとく逃げ出したのは、残りの魔獣達だった。


 ……多分、もう戻って来ないだろう。

 そう、直感が告げていた。



 見ると、辺りは夕暮れ近いのか、薄暗くなり、遠くに何やら、明かりの様なものが見て取れる。


(何故か、ほっとする気がした)


 街か? そうだったら、ありがたいが。


 とにかく、そちらへ向かって、歩み始めるしかなかった。

 身体に流れる力のせいか、先程より強く、歩みが感じられた。

 痛いには違いないが。


 としても、遠いなぁ……。


 もう、雨はあがっていた。

 空に黄金色の夕焼けの残滓を残して。

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