10 酷い奴
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
この場所の雰囲気に負けないよう、他愛も無い事を考えて過ごしてみた。
だが、それも段々と飽きてくる。
(最初は怖い気持ちに負けるものか! と、意気込んでたけど・・・、人間って時と共に順応していくのね。ここは絶対に普通の場所じゃないのに・・・)
「ピピは無事にマクスと会えたかな?」
結局、無駄に横倒しの状態でいるのも馬鹿らしくなってきて、キャロルは縄を外し、手首も自己流の治癒魔法で治した。
(それにしても堅牢過ぎて笑える。一体、私を誘拐したのは誰よ!?)
ーーーと、ここで、宙から白い毛玉が現れる。
「あ、ピピ!おかえりなさい。どうだった?マクスと会えた?」
ピピは身体をクネクネと捻って伸びをした。
「キャロル、ただいま戻りました。無事に王太子と会えました。伝言もお届けしました」
「良かった~! これでもう私も行方不明じゃないわね。ありがとう、ピピ」
「どういたしまして。キャロル、王太子から伝言があります」
(おお! 有力な情報かな?)
「ピピ、教えてくれる?」
「はい、王太子はここに来られません」
「えっ、どういうこと?」
「ここはブカスト王国のソルティール監獄塔です。ブカスト王国と我がソベルナ王国は緊張状態にあり、王太子だけでなく、氷の刃も来られません」
「ウソ・・・。私、見捨てられたってこと?」
キャロルの大きな瞳に涙が込み上げて来る。
(もう、マクスに会えないかも知れない・・・)
「いいえ、違います。まだ続きを聞いて下さい」
「ゔん・・・続けて・・・」
「王太子から、キャロル様への命令です。あらゆる力を使うことを許す。責任はおれが取る。ソベルナ王国へ無事に帰って来いとのことです。出来れば犯人の特定もして来てくれると助かるとのことです」
今にも零れ落ちそうだった涙が止まった。
(はぁ? あんまりじゃない!? この事件を私に丸投げ? いや、マクスらしい発言だけども・・・)
「ねぇ、あらゆる力って、魔法を全力で使って良いってこと?」
「はい『制限なしで遠慮なく使っていい』と王太子が言ってました」
ピピは胸を張る。
(何それ、マクスの真似?)
キャロルはつい笑ってしまう。
「ピピも一緒に来てくれる?」
「勿論です。ミーはキャロルと一緒に行動します」
「ありがとう」
(さてさて、このソルティール監獄塔とやらはブカスト王国の何処にあるのかしら。取り敢えず外へ出てみて、周辺の様子を確認するところからだよね! いつまでもここにいても仕方ないし、気合い入れて行くわよ!! それにしても、自分の身は自分で何とかしろとか酷くない? 普通、王子様なら『オレが守る!』とかいう場面じゃないの? マクスに次会ったら文句の一つでも言ってやらないと!!)
「だいたい、方法なら幾らでもあるでしょう。例えば・・・、変装して来るとか!! 本当に頭が硬いんだから!!」
♢♢♢♢♢♢♢
「ハックション!!」
王宮に戻ったマクスはクシャミと寒気を感じた。
「(あ~、キャロル、怒っているだろうなぁ~)」
ーーーしかし、先ずは国王(父上)に報告だ。
急ぎ足で廊下を歩いていると後ろからマクスを呼ぶ声が聞こえてくる。
ただ、声の主の足音も段々とこちらへ近づいて来ているので、マクスは足を止めずに歩き続けた。
国王の執務室前でジャン(ジャスティン)はマクスに追い付く。
「殿下! 急いでいるのは分かりますけど、立ち止まる余裕もないのですか?」
ジャンは不満をぶつける。二人は主従関係の前にいとこでもあるため気安い。
「済まない。報告する事が多過ぎて焦っている」
「そうですが、それならぼくの報告も陛下の前でします」
ジャンはドアの前の警備官に陛下への取り次ぎを頼んだ。
警備官は二人を直ぐに部屋の中へ通した。
「マクスとジャスティンか、キャロライン嬢の件はどうなった?」
国王は前のめりで聞いて来る。マクスはジャスティンへ先に報告していいと譲った。
「陛下、父から婚姻承諾書を預かって参りました。すぐに婚姻手続きをしていただいて構わないとのことです。よろしくお願いいたします」
「ほう、リューデンハイム男爵は全てこちらへ任せてくれるということで良いのだな」
「はい、問題ございません」
ジャンは陛下に預かって来た書状を渡した。マクスはその様子を見て安心する。これからの手続きで必要なものだからだ。
「それから、精鋭部隊の編成も各騎士団で完了いたしました。いつでも出動出来ます。ぼくからの報告は以上です」
「相分かった。では、マクスの報告を聞こうか」
「はい、おれはリューデンハイム領でキャロルの誘拐に関わった者たちを捕縛し王宮騎士団の本部へ連行しました。その主犯格はリューデンハイム男爵家の経理担当スージー女史でした」
「ええええ~!? スージー女史って」
ジャスティンは陛下の前だと言うことも忘れて大きな声を出した。
ーーーまぁ、驚くよな~。
「ジャスティン、スージー女史のことは一旦置いて於いてくれ」
「はい、失礼しました」
「それで、ここからが難しい話になるのですが、キャロルは今、ブカスト王国ソルティール監獄塔に捕らえられています」
「なっ、何! ブカスト王国!? お前の婚約者候補絡みの案件ではなかったのか?」
今度は陛下が大声を出した。
「おれもまだ全容は分かりません。リューデンハイム男爵家にブカスト王国絡みの輩が入り込んだのは氷の刃への腹いせなのか、それともおれの婚約者候補絡みも含んでいるのか・・・。はたまた別の理由なのか・・・。そこで、精霊を使ってキャロルに伝言を届けてもらいました」
「マクス、その状況で、一体何と伝えたのだ」
「魔法を全力で使って良いと許可しました。その代わり、ソベルナ王国までは自力で帰って来い、出来れば黒幕も特定して来てくれと命令しました」
執務室に沈黙が訪れた。
沈黙を破ったのはジャスティンだった。
「殿下、最悪ですね」
続いて、国王も口を開く。
「お前はなんということを言うのだ。捕らえられて弱っているかも知れないのだぞ。可哀想だろう」
ーーー二人はおれを酷い奴だ・・・というような目で見てくる。
「違います。お二人はキャロルの事を知らなすぎる! 彼女は凄いんです。信じて待っていたら大丈夫です。まずは婚姻手続きを完了させましょう。キャロルが魔法を全力で使える様に」
「あ~、最悪。殿下、父に伝えます」
ーーーあ、それは辞めて欲しい・・・。
「ジャスティン、少しオブラートに包んで貰えると嬉しい」
ダメ元で頼んだ。
ジャスティンはため息を吐いた。
「『おれが助けに行きます!』と口だけでも言って欲しかったな」
国王もため息を付く。
「すみません。戦争を起こす訳には行かないので・・・。ん? 戦争!?」
おれは閃いた。
「もしかすると・・・。隣国と戦争になったら得をする貴族も確認した方が良いかもしれません」
「では、ぼくが調べて来ます」
ジャスティンは手を挙げる。
「ジャスティン、よろしく頼む。私たちはこれから婚姻の手続きを執り行うぞ、マクス」
「はい」
「それでは僕はお先に・・・」
ジャスティンは一足先に退室した。
「ところでマクス、指輪の交換だが、この状況では出来ないだろう? 仕方ないから端折るか?」
「いえ、指輪は先に渡しています。今、指に嵌めているはずです」
「マクス、そう言うところは抜かりないのだな」
ーーー父上がジト目でおれを責めてくる。確かにプロポーズもせずに指輪を渡したが、キャロルの身を守るためには必要だった。後悔はしていない。
「指輪を先に渡していたお陰で居場所も分かりましたし、すでに精霊の加護も得ています。領地に帰したのは失敗でしたが・・・」
「ほう、伝言を託したという精霊か・・・。ならば、少し安心だな。では王家の霊廟へ向かうとするか」
「はい、父上よろしくお願いいたします」
ーーーキャロルが魔法を使って暴れる前に、彼女をおれの正式な妃にする必要がある。魔塔の監視から逃すために・・・。
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