ep.1 [ある男]
リッキーは私が会社に勤めたとき、はじめて会話をした人物だった。
会社に入ったばかりの私にとってはとても心強い存在だった。
「君が新人?これからもよろしくな」
笑顔で私に話しかけてきたその男は聞いた話によると、
この会社で一番好かれていたらしい。
確かにリッキーは顔もすっきりしているし、太ってもいない。爪もきれいだし、
むしり取った跡もない。好かれるのには当たり前の男だった。
私が会社に勤めて一週間近くがたつとリッキーは部長になってた。
みんなでおめでとうと言った思い出がある。リッキーを部長に置くのは
素晴らしいことだったと思う。
前の部長はよくヒステリーを起こす部長だったので嫌われていたからね。
得にリッキーには強く当たっていたらしく、嫉妬されていたらしい。リッキーは好かれていたから。
しかし部長がいなくなってリッキーが部長になると
リッキーは「最高の気分」という感じの笑顔で毎朝出勤していた。
秘書のマリアンはとてつもない美人で、リッキーと同じ大学にいたらしい。
イけるところまでイったらしいが。
「部長になれたのはうれしいね。あいつがいなくなったから」と
冗談らしく言ってたが冗談じゃないのが分かった。
私は言った。
「リッキー、君が部長になったのはいいが、調子に乗りすぎるなよ?君はまだ代理だし、今みたいな発言してほかのやつに着かえれたら大問題だからな?」
「大丈夫大丈夫。バレやしないさ。」
そんな呑気に話していると荒い足音が聞こえてきた。
「おいリッキー!」
リッキーの同期、パワードだ。
「今の言葉聞こえてたからな?」
「あ、、、、、、、」
「あんま調子乗んなよお前。」
リッキーの顔が今でも忘れられない、真っ青だった。
とにかくリッキーが部長になって、めでたしめでたしならいいのだが。
ここで話を変えよう。部長はどこに行ったのかを。
部長はリッキーが部長になる2日前に会社に来なかった。
そう。行方不明になったのだ。