夜空の誓い
父と母を亡くして半年。
まだ塞ぎ込んでいる弟に、夏の夜を見せたかった。
幼い頃に家族と来た花火大会。
それは両親との大切な思い出だった。
あの時と同じ、懐かしい屋台の明かりが目に映る。
焼きそばの匂い、金魚すくいの水音、遠くから響く太鼓の音。
人波に押され、思わず弟の手を掴んだ。
「はぐれたら困るでしょ」
言い訳のように口にしたけれど、本当は自分が不安だった。
一人で弟を見てきた。十分にやれているはずなのに、不安はいつも胸に潜んでいる。
握った手は、わずかに温かかった。
しかし弟はすぐにその手を振りほどく。
「……子どもじゃないし」
聞こえるか聞こえないかの小さな声。
私の一歩後ろを歩き始める。口数の少ない弟らしい態度だ。
私は思わず振り返る。
人混みの中でも、彼の姿はすぐに見つかった。
無言のまま、確かに私の背中を追いかけてきている。
安堵と、少しの苛立ちが同時に胸に広がる。
夜空に、大きな花火が弾けた。
弟が花火を見上げている。
私の見たかった笑顔。
でも彼は何も言わない。
ただ横で、少しだけ肩を寄せるように立っていた。
無口で、不器用で――それでもそこにいる。
夜空に散った光は、やがて闇に溶けていった。
私は無理やり弟の手をぎゅっと掴んだ。
「みててね……大丈夫。私、この子は守るから」
星空の下で、私は胸に誓いを刻んだ。
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※インスト曲をYouTubeで公開しています。
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[夜空の誓い](https://youtu.be/-eT7dv5Jf78)




