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一様_1


 「――怖かった?」


 話し終えた後『感想を聞かない』という選択肢はない。


「いつもとは違った趣向だね」

「うん。過去と未来を繋げてみたの」

「俺は好きだよ」

「やった!」


 少しずつ、話を作るのが上手くなってきた気がする。それに、すごく楽しい。筆がのると勝手に言葉が紡がれるし、その言葉を読む声が頭に響く。私が何もしなくとも、頭の中で誰かが勝手に一つ話を完成させてくれるのだ。それはもう、私好みに。


「七不思議の良いところだよね。話なんか長くなくたって良いんだからさ。多少説明が足りなくたって、そこは得体の知れない初見の怖い話。聞いた側が、勝手に粗も穴も埋めてくれる」

「都合が良いなぁ」

「全てが解明されるより、謎が少し残っているほうが妄想も捗るんだよ。みんな、得体の知れない物が好きなんだ」

「まぁでも、言われてみるとしっくりくる。わからないほうが良いこともあるしね」

「そういうことだよ。余白のある方が、聞く側は妄想して遊べるんだ。俺はガチガチに作り込まれた怖い話も好きだけど、こういう考察の余地がある怖い話も好きだね」

「そう? ……いやぁ、今日は良い反応もらえて嬉しい。いつもはなんか……素っ気なくはないし、ちゃんと話も聞いてくれてるけど、辛口っていうか。適当っていうか」

「気にしてた? ごめん」

「もう良いの。今日良い評価もらえたから水に流す!」

「ははっ。そっか、それなら良かった。……これで五個目か。結構作ったね」

「もう私が作る不思議は、次の第六不思議だけになっちゃったよ」

「最後も楽しみにしてるよ? 俺も、面白い話に仕上げないとね」

「……ねぇねぇ、カゲは何をネタとして取り上げたの?」

「え? それは内緒だよ」

「えー!? 教えてくれたって良いのに……」

「聞いてからのお楽しみ」

「ちょっとくらい教えてくれても良いじゃん?」

「楽しみはとっておきなよ」

「ぶー……」


 知らないほうが楽しめる人は多いだろうが、私は知っていても楽しめる。ネタバレ上等大歓迎タイプだ。ネタバレがあれば覚悟もできるし、言葉の裏にある思いを見つけられる。それに、ショッキングな内容は知っておいたほうが気持ち的に楽なのだ。


「カゲはネタバレ禁止派?」

「拘りはないよ。人にはしないけど。してほしいって言われたらするかな」

「してほしい!」

「この場合はちょっと違うよ……」

「ダメか」

「ダメ」


 カゲは頑なだった。でも、これだけ言っても教えてもらえないとなると、もしかしてネタバレしたら一気に面白くなくなる話なのだろうか。たまにある、ネタバレされたら一気に萎えて、見るのもやめてしまう話。よっぽどだと思うが、話自体に何かギミックがあるタイプなら、嫌がる気持ちもわかる。


「もしかして、一ミリも話が進んでない?」

「そんなまさか。これだけ時間があったんだから、ちゃんと考えてるよ」

「全然できてないから言えないんだと思った」

「ちゃんと進んでるからあそこは安心してよ」


 もし全く進んでいなかったら、私が第七不思議も考えようと思ったのに。


「ところで、七不思議って今まで一依が作ってきた感じであってるの?」

「え? どういうこと?」

「いや、よく学校七不思議、学園七不思議って聞くけど、書き方これであってるのかなって」

「今更それ言う!?」

「よく考えたら、漫画で読んだり話に聞いたりしてたけど、イマイチ七不思議の形式わかってなくて」


 言われてみればそうかもしれない。なんとなく、学校にまつわる短い怖い話が、七不思議に当たると思っていた。だから、そこにだけ焦点を当てて書いていた。話し手に当たる登場人物の年齢はバラバラだし、聞いた時期や体験した時期も統一していない。それで良いと思っていたが、改めて形式の話をされたら悩んでしまった。もう五話も作ったのに、このタイミングで中身は変えられない。

 ぶっちゃけ『七不思議』と付けておけば、この手の話はうまいこと勝手に七不思議の枠へ納まってくれるとすら思っていた。自分の知っている七不思議は、不思議と言いながらもどちらかと言うと怖いがメインとなる話で、でもめちゃくちゃ怖い話という訳でもなく、ちょっとイイ話だったり意味のわからない話も含まれている。学校の設備や人物、備品なんかを使っていれば認められる。……と思っている。昔から。なんとなく。


「流石にもうあと一話しかないし、構造も考え方も変えられないかな……」

「急に変なこと言ってごめん。黙ってるのもなんかできなくて」

「気持ちはわかるけど、みんな怖がってくれてるからもうこれでよくない?」

「うん、良いと思う。忘れて」

「はぁい」


 変な沈黙。気まずいような、気にするほどでもないような。


「さ、最後の不思議考えなきゃ。良いなぁ大トリ。ここまでで考えたら、最後まで考えたくなってきちゃったもん」

「第七不思議は譲らないよ?」

「わかってるけどさぁ……」

「というか、譲れない、ね。これは俺が作って話さないといけないって思ってるから」

「急に責任感出てきた?」

「責任感……んー、そんな大したものじゃないけど。似てると言えば似てるかな。俺は第七不思議を一依に話さなきゃいけない」

「ちょっと、もうこのタイミングでギミックみたいに突っ込んでくるのやめてくれる? 怖いんだけど」

「そんなこと言うなよ」

「あ、話変えちゃお。カゲって、なんで死んだの?」

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