第四不思議【サッカーボール】_1
――これは、僕がじいちゃんから聞いた話です。
僕のじいちゃんは、僕と同じ高校に通っていました。だから、先輩なんです。校舎を建て直す前の話ですよ。
あ、知っていますか? 今の校舎は建て直した後の校舎なんです。校舎の一部が倒壊して、それで危ないからすぐに建て直しを決めたって聞きました。……色々、あったみたいですね。
学校的には、当時サッカーが注目されたからか、新しく創設されたそうですよ。サッカー部。……昔もサッカー部って呼んだのかな? じいちゃんはサッカー部ではなかったけど、友達が入っていたらしくて、練習試合によく応援へいったと言っていました。
あまり、運動は得意じゃなかったとも、じいちゃんは言っていました。「花育てるほうが私は得意だった」って。今もその名残があって、家庭菜園やってます。じいちゃんの作ったナスを食べて、僕は食べられなかったのを克服しました。すごいでしょ? 美味いんですよ。
そんなじいちゃんだけと、見るのは大好きなんですよね、スポーツ。今もサッカーだけじゃなくて、相撲に野球、ラグビーにバレーボール、テニスなんか見てますよ。時期によっちゃ駅伝とか。オリンピックも、見られる時は欠かさず見てるし、録画を頼まれる時もあります。
だから、その友達の、サッカーの練習試合は、すごく楽しいかったと思います。自分はできないけど、友達が頑張ってたら応援したくなるしね。僕もそのタイプ。血筋かも。父もそうなんだ。……やっぱり、血筋ですよね。
練習試合だから、ホラ、大会に比べたら緩いもので。でも、みんな頑張って練習して、ここぞとばかりに魅せるんだ。僕も友達の部活へ顔を出したり、試合やイベントを見に行ったりするんだ。楽しいんですよ、よくわかります。
美術部なら絵を見て聞くんです、それを描く過程の気持ちや考えを。音楽なら一緒にリズムに乗ったり。運動は一生懸命応援する。だから、一体になって楽しめる。外に出かけるのはそれほど好きじゃないけれど、こういう時は前向きに行けるから、良い機会だと思っています。
今ほど多分、しっかりした部活じゃなかったかもしれない。語弊があるかな? でも、年月が経てばそのほうが全体的に精度も上がるし、体制も整っていくでしょ? 有名になればなるほど。だから、今に比べたら、違う部分もあったと思いますよ。
でも大体、他校へ行くか他校から来るかで、学校のグラウンドを使ってやることが多いんじゃないかな。じいちゃんはその日、友達のサッカーの試合を見に行きました。
――とても暑い日だったと聞いています。セミが鳴いていて、身体は汗ばんで。太陽はジリジリと焼け付くような。今ならやらないかもしれないですね。グッと昔よりも暑くなったって聞いているし、熱中症対策とか大事だし。
そんな中で、みんな頑張っていた。練習試合は、じいちゃんの友達のチームが勝ったそうです。勝ったことを喜んだけど、相手チームは酷く落ち込んでいたそうです。負けたらそうなりますよね、わかります。悔しいですよ。
じいちゃんの友達は、いわゆるエースでした。だからか、相手のチームの生徒たちが、じいちゃんの友達……Gさんとしますね。に、嫌がらせをするようになったんです。でもスポーツマンシップ、どこ行っちゃったんですかね? 嫌がらせ……って。
地味なものが多かったらしいけど。例えば、帰り道数人で囲んだり、殴って傷つけたり。悪口言ったりとか。カツアゲ? お金持ってったり。せこいよね、そんなことする暇があるなら、サッカーの練習すれば良いのに。
初めはGさんも笑って終わらせていたけれど、段々それが苦痛になってきた。学校が違うから、あまり強く出られなかったらしいよ。それに、警察も。子ども同士の喧嘩レベルでしか捉えなかった。そりゃあ、毎日そんなことばかり起こったら、嫌にもなりますよ。
夜は眠れず、授業中もウトウトと居眠りしてしまう。何とか学校へ行っても、帰り道は恐怖。じいちゃんも含め、他の友達もみんな一緒に帰ったって。守るために。
手が出せなくなった――そう思ったんだろうね。今度は家がターゲットになったって。
……何かさ、僕にはよくわからないんだけど。練習試合で負けたからって、そんなにムキになる? 大きな大会ならわからなくもないけど。それで将来が決まるとか。誰かスカウト的な人が見にきてるとか。
全然理解できないけど、嫌がらせは収まらなかったんです。その結果、じいちゃんのその友達、Gさんは死にたくなるほど思い詰めていて。そんな話をして、じいちゃんと通学路で別れた後、死んだんだ……って、教えてくれました。
ただ死んだわけじゃない。身体が傷だらけで、特に、足の怪我が酷かった。潰されてるのか切られているのか。骨が出ていて、肉は身体から離れていて。血まみれで、泥まみれで。
見るも無惨な姿……って、こういうことを言うんだと思いましたよ。じいちゃんの友達だけど、じいちゃんだって、まさか友達がそんな姿になるなんて思ってなかったはずだって。最初聞いた時、思わず手を合わせましたね。今更何もできないけれど、何かその人のためにしたくて。