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とある恋人達の話

作者: ハナノヒ

彼の様子がおかしい…女の影が…もしかして浮気?!

そんなよくある恋の物語。

けど、何か変…?設定ミス?…いやまてよ?


「…」

さっきから気まずい沈黙が続いている。久しぶりのデートで渋谷を歩く恋人同士ならば、もっとこう、笑いがたえないような…言っちゃえばラブラブな感じでも良いんじゃないかな。現に周りにいるカップル達は、もっとわいわいと楽しそうに会話しながら歩いている。

ううん、私たちも、最初からこうだったわけではない。最初のデートが同じ渋谷だったけど、その時は会話が絶えなかったし、楽しかった。ラブラブだといっても過言ではなかった…はず。

気持ちをあげるためにも、できるだけ明るく話しかける。

「えっと…何食べよっか?」

「……」

「おーい」

「…え?あ、ごめん。聞いてなかった。なんだっけ」

「……」

だめだ。ずっとこの調子。なんだかずっと上の空で、考え事をしているような感じ。何か悩みでもあるのだろうか。それとも、私といるのが退屈なのかな。ただ私も正直、二ヶ月ぶりに会った恋人と接するのに、なんとなくぎこちなくなってしまっているのも事実だった。その結果、待ち合わせの時からずっと…なんとなく気まずい。

「ご飯、何食べる?」

「ああ…そうだね。この前行ったとこにしようか。美味しかったし。」

…そうして、終始気まずい感じのまま、デートを終えた。



付き合った当初は、とても幸せだった。初めから一緒にいると落ち着いて、話も合い、出会ったその日に付き合いだしてしまったほどだった。毎日ラインで話していたし、月に何度もデートをしていた。しかし、「ちょっと、これから仕事が忙しくなるんだ」この一言のあと、状況がガラッと変わった。ラインの頻度も減り、今では週に一度あるかないか。デートに至っては、最後にしたのが2ヶ月前…

(一年も経てば、これが普通なのかな…)

マンネリってやつ?…でも早くない?

胸の中のモヤモヤが消えない。だからといって、好きな気持ちはあるから、別れるとかは考えられない。

「一人で悩んでも、しょうがないかな」

うじうじ悩んでてもろくな結論はでないことは経験済みだ。また友達にでも相談してみよう…


ーーーー


「浮気よ浮気!」

「……」

「ちょっとしぃちゃん。だから、そんなこと根拠もないのに決めつけちゃダメだってば!」

いつもの喫茶店、いつものメンバーでだらだらしてる。昨日のデートのことを愚痴ると、しぃちゃんが今年何度目かの叫びをあげた。彼の態度が変わってから、ちょくちょく相談する度の恒例行事みたいになっている。

「根拠ならあるわ!急に態度が変わって連絡頻度が減るなんて、浮気に決まってるわよ!」

…まさかそんな。彼に限って。…だなんて。よく聞く言葉。

いつもは軽く流しているその言葉が、今日はやけに心に重くのしかかる。

彼が…浮気…ありえない話じゃあ、ない、かもしれない…

「でもほら、まだ一年じゃない?」

「浮気する男は、一週間で浮気するわよ?」

「それははしぃちゃんの元カレでしょ!…みーちゃんの彼、真面目で優しそうなタイプだし。浮気なんてするように見えないって」

「見かけに騙されちゃだめよ。男なんて、みんな浮気する生き物なんだから!」

「そんなことないよ!…たぶん」

“たぶん”と言ったのは、彼氏ができたことがないから。…香穂はふわふわ天パのボブで、瞳が大きくて、正直とてもかわいい子だ。性格もおっとりで、モテておかしくない。でも男子に積極的に話しかけられるタイプじゃないし、いつも女子で固まっているから…たぶん男子は、香穂と仲良くなるきっかけがないだけだと思う。

ちなみにほんわかしてるけど、趣味に生きてる女の子だったりする。私とは高校のクラスが同じで、趣味が同じな訳じゃない。けど、なぜかずっと仲がいい。

「ありがとう香穂。でも確かに…考えたくないけど…しぃちゃん言う通りかもしれない…わかんない…でも確かめるのも怖い…」

「…そうよね。ちょっと言い過ぎたわ。ごめん。」

詩織は一個上のお姉さんだ。ちょっと派手な感じの茶髪ストレート、目は切れ長の美人で、背も高くて、彼氏が途切れたことがない。年下にもてるけど、本人は年上好きで、確か今も10くらい年上の人と付き合っている。

性格は…凄く大人びてる。ひとつしか違わないとは思えない。人生経験が豊富なんだろうな、と思う。

それにしても、浮気か…彼が浮気するとしたら?…今まで目を背けていたことを考える。するとしたら、相手は多分、バイト先の子かな。飲食店の仕事って言ってたから、女の子も多いと思うし…

ダメだ。こんなこと考えてちゃ。それこそ根拠もないのに。

「今度、思い切って彼に聞いてみるよ。他に好きな人でも、できたの…って…」

なんだか言ってて悲しくなってきた。浮気なんて、やっぱり考えたくない。彼は優しいし、そこそこ格好いいし、本人はモテないって言ってたけどたぶんそんなことない。目を付ける女の子はいると思う。でも、彼が、他の女の子を見ているなんて。絶対に嫌だ。

「うーん…そんなはっきり言わなくてもさ、ほら、もっとラインしたい、とか。もっと会いたいとかさ」

「でも、前仕事が忙しいって言われたんでしょう?」

「うん。あんまりワガママは言いたくない…」

「そっかあ。みーちゃんはえらいねえ。うーん…なんて聞くのがいいのかなあ…」

「“最近ちょっと変だけど、何かあった?相談のるよ?”とかどうかしら。」

「…しぃちゃんすごいね。それは…いいかもしれない。」

「ほんとすごいね!みーちゃんみーちゃん。さっそく聞いてみなよ!」

「待って待って。焦っちゃだめよ。やっぱり直接言った方がいいし。まずは、次会う予定ね」

「あ、それは決まってるんだ。…再来週の土曜日に。」

「再来週の土曜日って、みーちゃんの誕生日だよね。彼から言われた、んだよねやっぱり。…もしかして、本当は全然心配なかったりして?」

「うん…心配し過ぎなのかな…でも、やっぱり気になるよ。次会った時、しぃちゃんが言ってくれたみたいに聞いてみる!」

「うんうん。がんばってねみーちゃん!」

「何かあったら連絡ちょうだいね」

「ありがとう!」


ーーーー


昨日の会話を、私は部屋の掃除をしながら思い出していた。

(ああは言ったものの、やっぱり、怖いな…)

“浮気”という言葉が一旦頭に浮かんでしまってから、一人でいる間はどんどん嫌な想像ばかり浮かんでしまう。職場にいる、私よりも若くて可愛い女の子。飲みに誘われて…

(いやいや。だから、根拠もないのに疑わないって、決めたばかりじゃない…)

嫌な考えを振り払うように、掃除に集中する。今日私は仕事はない。1日家事に集中するつもりだ。

(明日は仕事で、ちょっと遅くなるから。今日中にやってしまおう)

よし、と落ちてきた袖をまくり、気合いを入れる。どうせ、本人に聞いてみなければ、何もわからないのだから。今は考えなくていい。と、携帯のバイブがなる。…長い。

(電話?珍しいな。誰からだろう…)

「もしもし?」

「あ、もしもし?おれおれ」

「詐欺かなんかですか…」

「あははは。何。お、おれ…金落としちゃったんだ…って言ったらくれる?」

「訳ないでしょ。うちそこまでの余裕はないの」

「えー、どうせそんなにお金使わないんだろ?」

「悪かったわね無趣味で。貯金してるの。将来のために。あんたにやるお金はない。」

「真面目だねえ」

「冷やかしなら切るよ?」

「ごめんごめん。いやさ、南ちゃんが落ち込んでるって聞いたから。相談にでも乗ってあげようと思って。」

「何その上から目線」

「通常営業だね」

「はあ…でも、そうだね…ちょっと、話聞いてもらいたいかも」

男性としての意見を聞けば、彼の気持ちが少しでもわかるかもしれない。

「うん。あ、じゃあ、さっそくだけど今から飲まない?」

「いいよ。今日仕事ないし」

「レジ打ちだっけ?」

「外れ。…あんた、覚える気ないよね。ま、別にいいけど。じゃあ…いつものとこ?」

「うん。じゃあ、15時に。他のメンツも呼ぶから。」

いつも私が話を聞いてもらっている場所は、昨日の女友達の他にもうひとつある。今連絡があった彼と、彼の友達と、彼の彼女だ。私の彼ともともと仲が良かったメンバーなので、本当は私がいる方が違和感があるのだが、今となっては彼に対する話(愚痴とも言う)をする場になっている。

掃除は…明日がんばろう。

私は着替えると、軽く化粧をし、いつもの飲み屋へ向かう…


何だろうな…何が足りないんだろう。

道すがら考える。この不安は、彼の浮気疑惑だけではないような気がするのだ。

結構毎日満ち足りている。大した仕事をしている訳ではないけど楽しいし、友達だっている。

でも、なんとなく不安で、何かが足りないような気がしている。彼の浮気疑惑が、それを増長しているみたいだ。不安定で、落ち着かない。

(いっそ子供でもできちゃえばいいのかな…)


「何ぼんやりしてんの?」

聞き馴染んだ声が間近に聞こえ、我に帰る。いつの間にか待ち合わせ場所の飲み屋の近くまできていたらしい。さっきまで電話をしていた相手が、すぐ目の前にいた。黒髪(前は金髪だった)短髪、面長で長身の男子だ。性格はちゃらそうに見えて実は真面目で気遣いができるタイプ。すごくもてる訳じゃないけど、それなりに何人か彼女がいたらしい。

「ああ、ごめんごめん。入ろうか。皆すぐくるよね…」

すると、ひそひそと話しかけられる。

「…南ちゃん。あれ」

視線で道路向かいの喫茶店を示す。見ると…

(!…)

笑顔のカズくんが、喫茶店の前に立っている。そこに、同じく笑顔の女の子が駆け寄ってくるところだった。

“絶対浮気だよ”

友達の言葉が浮かんできて、何も考えられなくなる。いや、何も考えたくない。

親しげに話すところなんて、見たくない。

「ごめん。私、帰る」

「あ、ちょっと!」

呼びとめる声を聞こえない振りして、走って家に帰った…


ーーーー


昨日は、どうやって帰ったのかも覚えていない。…あのまま独りでいるのも嫌で、親元まで帰って来てしまった。

「なあに、昨日からぼーっとしちゃって。何かあったの?」

母が洗濯をしながら話しかけてくる。

「……」

「言いたくないなら別にいいけど」

「…彼が浮気してるかも。」

いや、彼は浮気をするような人ではないと思い直す。

「浮気、って言うか、本気?」

「なあに、それ」

「私よりももっと好きな人ができたんじゃないかってこと」

「あらあら。付き合って一年だっけ?どんな人かよく知らないけど…何かあったの?」

「昨日…知らない女の子と笑顔で待ち合わせしてた…」

「ええ?そんなの、大したことじゃないじゃない。向こうだって、女の子の友達くらいいてもおかしくないでしょう?」

「そりゃあそうだけど…」

確かに私も、見てすぐに帰ってしまったから、待ち合わせが二人きりのものだったのかもわからない。失敗した。いっそ後を付けるくらいすれば良かったのだ。

「でもまだ一年なのに、最初の頃と比べて連絡もデートも全然しなくなっちゃったんだよ。会っても何となく考え事してるみたいな感じで…」

「うーん…母さんなんとも言えないけど…確か彼、仕事が忙しくなったみたいってあんた言ってなかったっけ?」

「うん…確かに彼はそう言ってたんだけど…」

「あんたは、付き合うのが嫌になった訳じゃないんでしょう?」

「うん」

「あんたも、そろそろ結婚考える年なんだから。もうちょっと慎重になった方がいいんじゃない?」

「うん…」

「大体あんたは彼ができる度に似たようなこと言ってない?ちょっと疑り…」

「わかったってば!大丈夫。彼と話してみるから。それより今日のご飯、私作るよ。何がいい?」

「あらありがとう。でも久しぶりなんだから、私が作るわ。たまにはうちの味が恋しくなるでしょう?」

「うん。じゃあお願い。」

母のいつものお小言だが、今回は回避することに成功したようだ。それにしても、家を出てから2年目になるだろうか。仕事が忙しくて滅多に帰らないから、母の味も本当に久々だ。沈んでいた気分が少しだけあがる。

うん。浮気されていると落ち込むのは、事実がはっきりしてからだ。彼の考えを確かめるまで、落ち込むのはやめよう。


ーーーー


「南ちゃん、昨日の件なんだけど…今話しても大丈夫?」

昨日約束をすっぽかしてしまった男友達からかかってきた電話の、第一声はそれだった。

「ごめん…あんまり聞きたくないかも…」

昨日はあまりの動揺に挨拶もそこそこに帰ってしまった。申し訳ないけど、でもそれに謝るよりも、彼が話そうとしている話の内容に過敏になってしまう。…相手の子の姿を思い出すだけで、胸が苦しくなる…

「そか…でも、少し情報あった方がいいかもしれないよ?今のままだと、南ちゃん、浮気された確定みたいになってるし…」

「……」

「もうちょいあいつのこと、信じてみない?」

「…わかった。聞く。」

「うん、じゃあ話すね。俺、あの子見覚えがあるんだよね」

「…」

「確か…高校の時の同級生じゃないかな?」

「…同級生とわざわざ会うなんて、余計怪しいんだけど…」

「いや、高校の時の部活仲間でたまにつるむって聞いたことがあるんだよ。あん時は二人だったけど、後から何人か来たんじゃない?」

「……」

確かにあの時は、ショックですぐに帰ってしまった。…そうか。二人きりじゃなかった可能性もあるんだ…でもやっぱり、あの笑顔がこびりついている。最近私の前で見せなくなってしまった、あの笑顔が。

「確かにそれなら、浮気じゃないよね…でもヒロくんは、見てないんでしょう?」

「うん。俺も、あの後すぐ帰っちゃったからね。飲み屋に入るところも見てないよ。あいつに連絡しても良かったけど…やっぱそれは南ちゃんが自分で確かめた方がいいでしょ?」

「……そう、だよね…」

確かにそうだ。誰に何を言われようと、私が一人でうじうじ何を考えようと、全て憶測。…私が彼に確かめないと、何もならないんだ。

「ごめん。ありがと。私…彼に直接聞いて見るよ。」

「うん。…たぶん浮気じゃあないとは思うけど、もしも本当にそうなら、俺も殴っとく。」

ははっと笑いながらヒロくんが言う。ヒロくんと彼はバイト仲間だ。私も一時期だけ同じお店で働いていたことがあって、三人でたまに会っている。

よし。次のデートまであと2日。その時に確かめる。それまでは、落ち込まないでいよう。


ーーーー


「みーちゃん、顔が死んでるよー?」

「あらあら、ほんとだわ。…やっぱり浮気だったの…?」

「わかんない…でも……」

「どうしたの?彼と何かあったの??」

「知らない女の子と会ってたあ」

「やっぱり浮気じゃない!!」

「え、ほんとに??見間違いじゃなくて?」

「うん…駅前の喫茶店で、待ち合わせしてたっぽい…」

二人は顔を見合わせる。詩織は怒った顔、香穂は戸惑った顔をしている。ここ数日二人と会ってなくて、親に話すようなことでもないと思ってたから、ずっと一人でうじうじしてた。二人に話せて少し気は楽になったけど…

「ショック大きいよー…」

顔を伏せる。ああ、なんか泣いてしまいそう。

「みーちゃん…元気だして」

「そうよみなみちゃん!あんな男、忘れちゃいなさい!」

「…しぃちゃん、それはちょっと早いよ」

「そうね…あら、確か明日、その彼とデートって言ってなかったかしら??」

「うん…」

そう。明日は彼とデート。前のデートの時、珍しく彼が次のデートの予定を決めた。待ち遠しかったハズの、デート。

あの現場を見るまでは、なんだかんだ言って彼が浮気なんて、本気で思ってたワケじゃなかった。だから、明日のデートは楽しみだった。でも…

「フっちゃえばいいのよ!明日!!」

「だからしぃちゃん、気が早いって!…ええと…そうだ!明日元々、彼に事情を聞いてみることにしてたじゃない。とりあえず、そこではっきりた方がいいんじゃないかな…?」

「そうだよね…でもどうしよう。ますます聞くのが怖いよ」

「みなみちゃん元気出して。でも確かに香穂ちゃんの言う通り、はっきりさせた方がいいって私も思うわ。じゃないと、みなみちゃんどこにも行けないでしょう?新しい彼氏だって探せないわ。」

「だからあ。しぃちゃんは気が早いの!…でも、もし仮に…仮にだよ?本当に浮気だったら、新しい彼氏探そうくらいでもいいかも。…私が偉そうなこと言えないけど。」

…いい友達持ったなあ。

二人が言うように、浮気されてました、振ります!新しい人探します!なんて、気持ちを切り替えられるとは思えない。少なくともそれくらいは彼のことが好きだ。けど、二人に慰めてもらえると思うと、少し楽になる。

「二人ともありがとう。いざという時は慰めてね」

「もちろん!」

ここ数日沈んでいた気分が、少し明るくなる。ちょっと…ううん、すごく怖いけど、勇気出して聞いてみよう。知らないまま蓋をしちゃったらきっとずっと前を見られない。今まで聞かなかったことも全部聞いて、ちゃんと彼と向き合おう。

待ち合わせは、先週のデートと同じ、渋谷。


ーーーー

ーーーー

もうすぐ渋谷駅。俺は、鞄の奥に入った小さな箱を、もう一度確認した。

(よし、ちゃんと持ってる)

このために、大分前から準備したのだ。土日もできるだけ仕事を入れて、お金を貯めて、ようやく買ったものだ。忘れるなんて許されない。

今日は、大切な記念日だ。彼女と初めて会って付き合い出した日で、彼女の誕生日で、そして…結婚記念日だ。

プレゼントは、あげられなかった婚約指輪の代わりのものにしよう、と決めていた。彼女は、“結婚指輪があるから指輪なんていらない”とあの時言っていたが、俺としては、どうしても渡したかったのだ。

何を渡すか散々迷って、方々に相談した結果、結婚指輪と重ね付けできる指輪に決めた。邪魔と言われたら、ネックレスにするなりもできるし…いいものを買えたと思う。

…ただ、気がかりなことがある。最近、彼女の様子がおかしいのだ。そう、確かこの前のデート辺りから。

結婚しているのに“デート”なんておかしいかもしれないが、これは、結婚当初に二人で決めたことだった。…電撃結婚で恋人期間の短かった僕らは、子供がいない間恋人気分を味わうことにしているのだ。

しかし、指輪を買うために、ここ半年はあまりデートの時間をもつことができなかった。それに業を煮やしたのか、先週は彼女の希望でデートをすることになったのだが…

正直俺は、今日のことでいっぱいいっぱいだった。何せまだ買うものすら決まっていなかったのだから。

…上の空感が伝わったのだろうか…

その日から、どうも彼女の様子がおかしい。

俺が帰る前に寝てしまうことが多くなったし、顔を合わせても口数が少ない。この間なんていきなり実家に帰ってしまったのだ。『今日は仕事がないから、部屋の掃除をする』と言っていたのに、何かあったのか、途中で止めてあったし…

俺もその日は休みで、友人達とプレゼントの相談をしていたのだが…帰ってみたらがらんどうで死ぬほどビビった。(後からラインが来たけど)

そして、そのまま帰ってきてないため、今日は待ち合わせ場所で数日ぶりに会うことになる。

(大丈夫かな…上手く渡せるといいけど…)

覚悟を決めて、俺は駅の改札を出た。


ーーーー

ーーーー


(よし!)

時計を見て覚悟を決める。ここは渋谷駅の前、目の前は例のスクランブル交差点だ。

待ち合わせ場所はこれを渡った先、109前だ。待ち合わせまではあと10分ほど。彼は時間丁度にくる人なので、その時は10分後に迫ったことになる。

しばらく実家にいて、母と話したりして、大分気は楽になった。でもやっぱり、これから会って話すのが別れ話になるかもしれないと思うと、落ち着かない。

でももう、覚悟は決めた。もういい年だし、もし駄目だったとしても新しい彼が見つかるとも限らないのだけど。腹をわって色々話せば、きっと前を向いて進めるはずだ。

(母さんが言ってたみたいに、実は浮気でも何でもないかもしれないし、ね)


信号が青になる。私は、渋谷駅から、109へと、スクランブル交差点を歩き出した。


Fin















(よし!)

時計を見て覚悟を決める。待ち合わせ場所は目の前のスクランブル交差点を渡った先、渋谷駅前…先週のデートの時と同じ。待ち合わせまではあと10分ほど。彼はたぶん時間丁度にくるから、その時は10分後に訪れる。

渋谷に着いたのは、もう30分も前。男友達に諭されて、うじうじ悩まずはっきり確めると決意したけれど…やっぱり落ち着かなくて、気を落ち着かせようとぶらぶらしていた。けど、もう、覚悟を決めるしかない。

そう、友達の言う通り、ただ部活仲間で会っていただけかも知れないんだから。なんにせよ、確めないと、どこにも進めない。


私は顔を上げて、目の前の建物を見据える。信号が、青になる。私は、109から、渋谷駅へ向かい、スクランブル交差点を歩き出した。


Fin













信号の向こうに見つけた姿に、私は息を飲んだ。109の前にいる人。…あの時、喫茶店前で彼と会っていた女の子だ。間違いない。

落ち着いていた心が、またざわざわしてくる。

彼と同い年くらいで、黒髪ストレートの美人…

なんでこんなところで会うんだろう。…もしかして、彼に、『この人と付き合うことにしたんだ』とか、紹介されるの?!!

待ち合わせまであと10分。…どうしよう。行きたくない…

携帯のバイブの音にハッとする。…遅刻の連絡かな…と確認すると

(しぃちゃん、香穂…)

二人から励ましのラインスタンプが送られていた。…昨日の会話を思い出す。大丈夫。何かあればこっちからフってやるくらいのつもりで行こう!

(もうなんか絶望的な気がするけど、いいや!当たって砕けろだ!!)


109前を視界から追い出す。

信号が青になる。私は、ツタヤ前から、ハチ公前に向けて、スクランブル交差点を歩き出した。


Fin















(あれ?)

渋谷駅を降りると、知人の姿を見つけた。

「涼子さん!」

「南ちゃん。偶然だね。」

そこにいたのは、大学時代のサークルの先輩だった。大会で準優勝するほどのテニスの腕前に加えて、美人で、成績優秀なとんでもない人。出会った頃からずっと憧れの人だ。…まだ独身なのが信じられない。

「…新婚さんの割には、なんか元気ない?」

「…ちょっと…色々あって」

実家に帰って少し落ち着いたとはいえ、まだ“浮気疑惑”の動揺は収まってない。きっとひどい顔をしているんだろう。でも、目の前の憧れの人も、何となく元気がないように見えた。

「そういう涼子さんも…元気がないように見えますよ。何かあったんですか?」

「彼氏が浮気してるかも」

「えええ?!」

さらっと返ってきた答えに驚愕する。まさか同じ悩みだったなんて。

「彼氏って、確か、私の結婚式で出会った方でしたよね?」

「そうそう。それで、勢いでそのまま付き合い始めたの。だけど最近ちょっとね…これから会うんだけど。また振られちゃうかも」

「涼子さんみたいな完璧な人振るなんて、勿体無さ過ぎです」

「ふふ、ありがと。ごめんねこんなこといきなり。南ちゃんも、何があったかは聞かないけど、元気出してね?」

「…はい。ありがとうございます。」

挨拶を交わして別れる。待ち合わせはハチ公前だ。

(あんな完璧な人がいるのに浮気とかするなんて、信じられない)

少なくとも私が男だったら有り得ないと思う。彼はどうなんだろう…あの時のことを思い出す。あの時会っていた女性は、涼子さんとはタイプが違う感じ…可愛らしいタイプの人だった。

(駄目だ。また思い出しちゃう…)

考え事をしている間に、ハチ公前に着く。待ち合わせまでは、あと10分だ。

と、携帯のバイブが鳴る。確認すると、相手は彼だった。

『ハチ公前人多いから、場所変えていい?交差点渡った先の、ツタヤ前でお願いします。』

(“わかった。向かいます。”っと。)

ラインを送信する。

彼はいつも早めに来る。今ももうツタヤ前にいるか、向かっているんだろう。だから、この交差点を渡ったら、その時が来る。

(離婚、なんてことに、ならないよね?なったらどうしよう……ううん!)

バシッと両手で頬を叩く。一年前の誓いを思い出す。

妻である私が、夫を信じなくてどうする!

結婚で変わった環境と、急に彼が忙しくなってしまった寂しさで、心が弱ってるんだ。きっと。でも信頼しなきゃ。家族なんだから。仮に…仮に浮気だったとしても、話し合わなきゃ。


覚悟を決める。

信号が青になる。私は、ハチ公前から、ツタヤに向けて、スクランブル交差点を歩き出した。


Fin

数年前に書いたお話です。…最近ついぞ渋谷には行ってないのですが、スクランブル交差点周辺って、これで合ってるかな…?


三並 涼子・・・実家にいた人

南 さくら・・・美波の彼のバイト仲間

長谷川 美波・・・大学生

高橋 南・・・既婚


(なにか矛盾点等もしあったら教えてください…!

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