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そして夜は明ける  作者: 轆轤輪転
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万華鏡は壊れた。

「痛ったッ!」

静電気が奔ったかのような指先の痛みに俺は現実世界に半強制的に戻される。微量と相反した強烈な痛みに完全に油断していた俺は体勢を崩し、薄汚い床に転がる。

いやっ、こればかりは仕方ない。あんなの想定できようはずがない。

俺は自分の心にそう言い聞かせ自尊心は保つが、俺が突然倒れてことに酷く驚いた眼差しを向けた鏡神と一瞬目が合ったおかげで多少の羞恥心しゅうちしんの混入は防げなかった。

ただ、鏡神の眼に嘲笑がなかったことはせめてもの救いだろう。

鏡神はようやく状況を判断し、俺に包み込むように両手を差し出す。

「だっ、大丈夫?」

鏡神の髪が俺の露出した皮膚に触れる。毎日見ていて気が付かなかったが鏡神の髪質が少し滑らかになっていた。ついでに色も若干、茶髪と化していた。見た感じ、染めている訳ではないらしい。こういうのは見れば、すぐわかる。

そんなどうでもいいことを考えながら鏡神の手を取り、今自分がすべきことを整理する。

「おう、大丈夫だ。目の前に虫が通ったからびっくりしただけだ」

「そう・・・、ならいいんだけど・・・。ところで、作戦はまとまった?」

鏡神は畏まって聞く。正直、作戦を練るのにこんなに手こずるとは思わなかった。まさか、俺の空想世界に二人も客人が来るとは・・・。

しかし、そのおかげで少し考え方が変わった。作戦に調整を加えたのだ。

「あぁ、安心しろ。しっかりまとまったさ」

俺は今居る部屋を見渡す。襤褸ぼろい。位置関係上、ここは二階の倉庫といったところだろう。俺たちの目の前には粉薬らしき白い粉が入った埃塗れの瓶が数個散乱している木造の机が少なくとも三台ある。

よく見れば、更に奥の部屋にも同じような風景が見れる。この倉庫には扉はなく、他の部屋も同様に開けっ広げだ。日差しが悪くてよく見えないが、人工物の黒い輪郭は認識できる。

この建物は記憶上、三階建てということになっている。勿論、屋上も存在する。そこがゴールだと考えると今俺たちがいる場所は非常に不利だ。

作戦実行には場所を移す必要性がある。家具が邪魔過ぎるのだ。

「まず、手始めに場所移動だ。ここでは難しい」

「わかった」

鏡神は頷く。こうして改めて鏡神のことをよく見ると本当にあいつにそっくりだ。

「・・・」

俺は軽く頭を振る。

違う。違うんだぞ、俺。お前は勘違いをしている。鏡神がやったのではないんだ。さっきそう教えてもらっただろ?俺。

俺はハンドシグナルで後に続くよう指示する。まだ(れん操縦のシャイニングスターが来ていない今の内だ。

あいつは何故かラジコンの操縦は上手いからな。一度あの鷹の眼につけられたら一巻の終わりと思った方がいい。俺は匍匐前進で移動した。後々、後悔することも顧みずに。


 「痛ったっ!」

俺はトンボに嚙まれた時のような痛みで強制的に現実世界に戻され、腰を抜かす。そして痛みの奔った指先に肉がしっかりあるかを確認する。

「ふぅ・・・」

当然な話、ある。過去に一度トンボに噛まれてそのまま肉を持って行かれたという痛々しい出来度があったのだ。そしてそれを治療してくれたのが姉だった。そんな記憶を順を追ってフラッシュバックさせていると俺は人差し指先を見ながら余韻にしたる傍から見たらかなり変な光景になっていることに気が付き、深いため息を吐いて、立ち上がる。

あれは本当に痛かった。

転倒の際、手に持ったコントローラーが抜けて少し後ろに投げ出してしまったが当のシャイニングスターは空中で微動だにしていなかった。自動操縦機能がないために一度コントローラーから手を離してしまうと墜落しかねない。今回はそれはなかった。運がいい。

運も実力の内とはよく言ったものだ。

「さぁて、やりますか」

先の記憶との接続で俺は戦場において、異常なまでに「律儀」であるという欠点があると認識した。

記憶上、一番それを理解しているのが織成。そうである以上、あいつもそれに忠実な戦略を練ってくる。そうならば、こっちはその背後を取ればいいのだ。

俺はシャイニングスターを上昇可能範囲内まで上昇し、カメラを下に向ける。コントローラーの液晶画面には建物の全体図がギリギリ収まって見える。何かからこの建物を覆い隠し、守るためかのように生い茂った木々が少々役割に精を出し過ぎてはいるが許容範囲内だ。

問題は、

「・・・」

俺はシャイニングスターを降下させ、明後日の空から屋上を真正面に見据える。

「これ・・・、プロペラ絡まんないか・・・?」

ここで一つ、シャイニングスター講座のおさらいをしよう。

名前・シャイニングスター。

正式名称・MIC116・GD

機工・2012年5月28日。

全長・32㎝。

重量・6kg。

BB弾装弾装填数・300発。

射程距離・60m。

持続時間・60分。

ー艦首ー

我が親父と愛しき姉からの織成と俺への小学校入学祝いに貰ったものだ。単なるラジコンかと思ってはいたが、流石は社長と姉。規格外の性能を搭載した近未来型のスーパーラジコンだった。

外見は空軍機のアパッチをイメージしたデザインとなっていて、目が釘付けになる程の精密な作りをした

0.5ミリ口径のM240型の機関銃が艦首下甲板に大口を開けている。

銃身先端部上部にはカメラがつけられていて、そこから得られた光景を電波経由で映像化しコントローラーの液晶画面に送り、映している。

ちなみにカメラにはモードというものが個々存在し、「赤外線カメラモード」・「熱探知センサーカメラモード」と状況に応じて切り替えが可能。普段は「監視カメラモード」だが、別にこれでも全く困らない。

ー船体ー

シャイニングスターの重量は約6kg。お世辞でも軽いとは言えない重量となっている。この重量の欠点は全てシャイニングスター自身の内部構造が所以である。

「こんな構造で飛べるのかい?」

そうお思いでしょう。一向に問題ない。むしろ重量なんてお構いなしな立ち回りができるようになっているよ。何でも、舵を切るのは上甲板に申し訳程度についているプラスチック製のプロペラと艦尾のよく分からない小さなプロペラだけではない。

機動力の要を成すのは、艦首に2基、船体下甲板に6基、右舷左舷に4基、艦尾に2基存在する噴射口である。

上甲板から2対飛び出した、吸収口から吸収した空気を内部のタンクで強く圧縮し、総合14基の噴射口

から超噴射することによって超機動力を実現している。

ただし、サイズがサイズのため蓄積できる空気の量は限られているため噴射時間は一瞬、噴射量は・・・

 羽が一応ついているけれど不死鳥をイメージした結果であるため、摩擦軽減以外特に深い意味はない。

ー艦尾ー

めちゃめちゃ小っちゃいプラスチック製のプロペラが1基。

これは船体の個体を促すための特に意味のなi・・・、とても尊い部位であります。

艦首に2基装着されている噴射口とのコンビネーションは抜群です。はい。

 という手書きで書かれたガサツな取扱説明書を記憶を通じて見通した。

このようにこのシャイニングスターは物理法則に抗ってまで利便性と実用性を追求した結果の産物だ。

現に、ほとんどの機能は常軌を逸している。しかし、そんなシャイニングスターにも少なからず取り留めが利かなかった欠陥けっかんもあるということを俺は前々から理解していた。

この半径20㎝もあるプロペラで木々の間を通って裏に回るのは困難を極める。不可能ではない。

織成なら簡単にやってのけるのだろうが、普段あまりこれを操作しない俺からしたら正しく千載一遇せんざいいちぐうの大災難。俺はカメラを四方八方に向け回し、他の侵入ルートがないか探索した。

「おや?こいつは」

屋上のど真ん中に明らかに周りとの違和感がある影がある。

俺は、1と書かれた二つのブタンの内右側のボタンと7と書かれた二つのボタンの内左側のボタンを押し、約90度、取舵を斬る。

このヤツメウナギの目のように無数に張り付けられた数字の書いたボタンは全て各噴射口の稼働スイッチだ。

配列を言語化するとこんな感じだ。↓

 コントローラー右部      

①=艦首右側噴射口。

②=下甲板一番噴射口。

③=下甲板二番噴射口。

④=下甲板三番噴射口。

⑤=艦尾右側噴射口。

 コントローラー左部

①=艦首右側噴射口。

②=下甲板四番噴射口。

③=下甲板五番噴射口。

④=下甲板六番噴射口。

⑤=艦尾左側噴射口。


 コントローラー右部は南を向いたシャイニングスターを真上から見た場合の右側のギミックの統括。

そして、コントローラー左部は同じ感覚で見た場合の左側のギミックの統括という作りになっている。

本来、この手のものは苦手とする俺でも慣れれば滞りなく操縦できる程の分かりやすさは創造者二人には感謝けりゃな。

まっ、そんな簡易兵器で今日は馬鹿兄を叩き潰すというのだがね。鏡神はかわいいから見逃してやらんでもない。

「卑劣とは言わさんぞ」

俺は呟き、シャイニングスターに停止を促す。そして、影をカメラで見下ろす。

「・・・ほほぉう」

俺は謎の安心感で口角が上がる。液晶画面に映し出された映像には廃墟に相応しい静寂と暗黒に包まれた建物内を仄かに露出させた入り口が映っていた。

シャイニングスターを降下させ、侵入したと同時に風の流れが変わった。そんな気がした。


「・・・!待って」

私は匍匐前進進行を止め、同じく匍匐前進進行をしてていた織成に待ったをかける。

「・・・、なんだ」

織成は匍匐させていた顔を持ち上げ振り返った。私は耳を傍立てる。

「この音・・・」

私は瞼を閉じ、全神経を聴覚へ集中させる。そんな私の行動を見てか、織成も座り直し、瞼を閉じて音を聞き入ろうとしている姿勢を音で手に取るように感じ取る。しかし、私の感じた真の音は生憎、織成には聞こえないものだったらしい。ただ、勘は良い。

「シャイニングスターの音か?」

「うん、プロペラかな?その風切り音が聞こえる。後、風の流れが若干変わった気がする。まるで、少し風力が増したような」

私は音の出所がいるであろう真上の天井を見上げる。

勘違いじゃなくて良かった。おかげで、いち早く接近に気が付けた。いやっ、皮肉。驚異の存在に気が付いてしまうのは何かと恐怖でしかない。

「風の流れだ?ありゃ、空気を吸ったり吐いたりするがその影響か」

「そう考えておいた方がいいかもしれない」

しかし、やはり幸運だ。先に気が付いたことによって、もっと事細かな作戦を練るきっかけになるかもしれない。ついでに今の内に織成の考えたという作戦を聞き出す手段にもなるかもしれない。

「どうする?あぁ、作戦あるんだっけ?どんな内容なんだい?」

織成は一瞬、目的地であろう少し先の暗がりに目を向けて少し考える素振りを見せた後に再び私に向き直る。

そして、二本の指で前進を促す。話は作戦実行に必要な環境を手に入れてからにしようということだろう。

私はすっかり黒くなった服を軽く払い、四つん這いになって織成の後を追った。

そんな時、織成の不気味な笑みが目に映り、一瞬背筋が凍った。

しかし、そんな顔は建物故の暗がりに隠されて完全に黒く染まる。単なる思込みでなければ織成あ今、かなり危なっかしいことを考えている。あの笑顔が確信犯の顔だった。

私はその悪魔の入り江さながらの暗がりに身を竦ませて、織成の後を追った。


「さてと」

織成が持参していたのであろう懐中電灯の電源を入れて自分の下から照らす。

お恥ずかしながら、これに少々恐怖心を抱いてしまった私です。人工物にしては異常すぎる光の遮断率故の異常すぎる暗がり、闇に持ってはいなかろうと思っていた懐中電灯が急に光り出すのだから驚くのも無理もないと思いたい。ていうか、酷い。

恐怖心に顔が強張っていたのか、織成は一瞬、さり気なく吹き出し、懐中電灯を地べたに立てる。

「させと、作戦を発表しよう」

織成はそう言って再び辺りを見渡す。彼にもきっと光は見えてはいない。ただ、今私と織成との距離が近く、そして一寸距離を開けようとたじろげば背中に壁か、もしくは何らかの人工物が邪魔をしてそれから先の後退は許されない。このことから、私たちは今、小さい机の下で寿司詰めになっていることがわかる。一応、ここは安全がある程度確保されているけれどいつまでもこの丸まった体勢というのも中々しんどい。

私は自分の右足を自分の身体へ抱き寄せ、左足は俗に言うお姉さん座りの状態で畳む。

「よ、よろしくお願いします」

私はふりで頭を下げる。織成もまた同じようにふりで頷く。

「うむっ、では」

織成はたった今かき集めた砂の山に、程よく伸びた鋭利な小指の爪で複数の

正方形を書き始める。そして刃先が砂で黄ばんだ小指先で丸をつけた正方形に突き付ける。

「ここが今俺たちがいる部屋だ」

「うん」

ちなみに織成の描いた正方形、部屋を表す正方形は、織成視点で見るところの今私たちがいる部屋と右方向に後二つ。そして現地点の斜め前に大きめの長方形。そこは先、練を監視していた場所だ。更にその長方形は少し左に逸れた縦向きの長方形へ繋がっていた。そしてその縦の長方形の真ん中には小さく折った木の枝の一部が添えられていた。きっとこれは私たちがここ、二階に上がってくる時に使った階段を現しているのだろう。

織成は第一者の正方形、隠れの身の部屋を小指先から伸びる爪で差す。

「この説明が終わり次第、俺たちはここの部屋で移る。日差しの通らないこの部屋は隠れるのには打ってつけだ。だから、用心深い練はこの部屋から散策するし始めるはずだ」

織成の小指が元居た位置、練を監視した場所に動く。

「しかし、奴はきっと視線でさっき俺たちがあの場にいたことは気付いているはずだから少しズレた所にしよう」

「へっ、へぇ・・・」

聞けば聞く程、この兄弟の探知能力、潜在能力に対して恐怖が沸いてくる。まるで、長い間森に住んでいたかのような抜かりない作戦だ。これに対抗してくる練もまた、絶対に敵対したくない相手と言える。

「次にだ、鏡神。間取り上、早くも第一関門が待っている」

織成は砂で描いた二階の間取り図と進行方向を手で掻き消す。

「あっ、まだ覚えられてないよ・・・」

織成は時間に急かされるがままに、殴り書きで三階の間取り図を描き始める。体勢的に負担がかかっているのか、少し鼻息を荒くしながら織成は言った。

「大丈夫だ、二階の行動に関しては俺が誘導するから安心しろ。少なくとも、二階は」

「よかった・・・」

最後の口調から察するに、三階からは独断行動が強いられてくるみたいだ。不安は倍増するが、少なくとも二階に滞在する間は味方がいるという安心感が上手い具合に増して、心情の均衡が保たれる。

私は媒体の溜息を吐く。

そんな私を見た織成も溜息を吐き、一泊置いて、小さく折られた木の枝をまるで囲む。

「これは三階へ通ずる階段だ。ルール上、先読みは良きにしても待ち伏せは許されてはいないからまぁ、それはないとして・・・、問題はこの階段が終始警戒されるという点だ」

確かに、この図とうる覚えの二階の図を見てみてもゴールの活路たる階段は内部の限られた場所にしかない。しかも、この建物は相当古いものらしく、非常階段が付いていなかった。裏手に回るとあるのかもしれないが、確かめるには苦労するだろうし、大きな隙を生み出しかねない。ちなみにこの部屋は位置的に裏手に属する場所だけれどそれらしきものも、案内表もない。ここがかつて薬局であったのあらば、職員誘導のために必要最低限の案内表があってもいいはずだ。ここに来て感じた違和感はもしかすると場に不相応な状況が故なのかもしれない。

もしかすると、ここは薬局ではない・・・?

「そこでこいつを使う」

そう言って、織成はポッケの中からひもを取り出す。

「・・・?紐?何に使うの?」

まさかカウボーイのようにそれでシャイニングスターを絡めて動きを封じるのだろうか。けれど、練から聞いた話には「第一条・シャイニングスターへの攻撃は言語道断」とあったのだけれど・・・。

「えーと・・・、鏡神、今シャイニングスターの音は感知できる?」

私は突然の投げやりの仕事に少し戸惑うつつも耳を澄ませた。

プロペラの風切り音と空気の噴射音が聞こえる。

「うん。丁度真上から」

「上等!」

織成は机の下から這い出て、日の差す出入口向かていく。私も机に頭をぶつけつつ、慌てて織成の後を追う。

すると出入口付近で、不意に織成がしゃがみ、後ろを見ずに手で私にもしゃがみを促している。

「痛い・・・、どうしたの?」

私は指示通りしゃがみ、織成と同じ目線で彼の顔を見る。織成は小さく人差し指を伸ばす。

「あそこに、崩れそうな天井があるだろ?」

指先の指し示す場所には木でできた天井が力なく割れ、わずかに生き残った野縁のぶち受けが大荷物を抱えている状態だ。更には、その野縁受けさえも今まさに朽ち果てて折れようとしている。その真下にさっきまで私たちが練を監視していたと考えると背筋が凍った。

「うん・・・。えぇ、あの下で私たちは・・・!?・・・っで、あの天井がどうかしたの?」

特に何も感じるところがないらしい織成は依然、半笑いままだ。

「あの天井、見た感じあの野縁受けがあって辛うじて機能しているように見えるだろう?」

「うん」

「で、あそこを見てほしいんだ。あの折れて尖った野縁受けをだ」

織成の指が少し左に動く。一体何を指しているのか、そして何を企んでいるのか、彼の表情と手に持った頑丈そうなロープ、そして禍々しく折れて尖った野縁受けを見て嫌な予想が脳裏を過った。

「まさか織成、崩す気じゃ・・・!?」

「ご名答っ!よく分かったな!」

織成は両手に軽く引っ掛けた紐を力一杯左右に引っ張った。本気を示すその行動にはらわたから上る焦りが私を襲た。

どこかで聞いた話だが、廃墟を無断で取り壊すのは違法で犯罪に当たるらしい。それに、あの天井が崩れたことによってこの建物そのものが倒壊する可能性だってある。私はともかく、そんなことが起きようものなら彼らの命の保証はない。

「やっ、やめなよ!そんな危ないこと。危険だよっ!」

私は両手で彼の腕を掴む。織成は少し驚いたように私の顔を見、そしてこれ見よがしに笑う。さっきから織成の表情が緩みすぎている。これは本当に危ないかもしれない。そう思えば思うほど私の握力は上がっていく。

「大丈夫さ。保険はしっかりあるぜ。見ろよ」

織成は顎で倒壊寸前の屋根を指す。っというより、左斜め下の比較的倒壊の進んでいない小部屋を指した。

「俺はなんでも、あんな危ない屋根の下で動こうなんて言ってなぇぜ。作戦会議を続けるぞ」

そういえばまだ織成はまだ作戦を最後まで説明していなかった。思い出した私は、一度大きく深呼吸をして、冷静さを取り戻す。そして、度が過ぎた作戦でないことを期待した真摯な眼差しで織成を見据えた。

眼のフィンシンクの幕開けだ。

 織成は紐を音の出るくらいに引っ張る。

こうなってくると、活用前に千切れてしまわないかとても心配だ。

「まず第一に、俺たちはシャイニングスターが来るまでに定位置に移動しなければならない」

私は抜き足差し足忍び足の織成の後に至って普通の歩幅で続く。

ーもし、本当にここが薬局でないのならば、今、私たちが踏みつけにしている散乱した粉薬は一体何なんだろうか。

「次に、定位置に移動したらあの折れかけの棒にこいつを引っ掛ける」

織成はポッケの中から小石を取り出し、紐で結ぶ。こんな用意周到な光景を見れば、

「そのポケットは四次元ポケットなの?」

と半ば疑ってしまう。

「んな訳なぇじゃん。そんなの売ってたら大金叩いてでも欲しいわっ」

ー定位置、比較的安全空域には机があり、その机はあの粉薬の製造、研究に使われていたであろう器具が置かれていた。もしこれで薬の製造がされていたのならばここは製薬会社の一環?

準備を完了させた織成は時間に急かされるがままに投石をした。

「・・・」

ー失敗ー

take2

「・・・」

ー失敗ー

take3

「・・・!」

ー成功ー

「・・・」

っが、紐の射程距離の拡張に貢献した重り石は文字通り、紐の重りとして床に叩きつけた。

引っかかった個所の傾斜けいしゃが激しすぎた。

夕日が黒い雲に隠れてより一層暗くなる。

織成は項垂れながら紐を巻き取り、私に押し付けてきた。仏の逆鱗に触れたみたいだ。

私は長い間、山で生活をしていたが停泊のため、投擲経験は石器時代に何度かやったのみだ。

私は織成のバトンを受け取り、投石の構えを取る。前に突き出した人差し指先で空気を読む。微風そよかぜが吹いている。時折、雨の匂いもするが朝の天気予報では降雨はないと言っていた。

私が足の角度を変えたと、息を空いたのと同時に雨雲が割れ、夕日が私を照り付ける。織成の手汗で濡れた石が太陽の光でさんざめいた。私はその瞬間を見計らって投擲をした。

「・・・!」

「・・・!?」

石は折れかけの野縁受けに直撃して大きく軋んだ。鈍い音と同時に微量の砂あっちこっちから流れ落ちてきて、私と織成は身構える。幸い、すぐに崩れは止まった。

ー失敗ー

take5

先の構えで大体の計算ができている今、時間をかける必要はない。いつ、シャイニングスターが私たちの前に立ちはだかるか分からない。

私は力の微調節の末、投石した。

 石と紐は上手い具合に折れかかった野縁受けの頭上をかすめ通り、紐に括りつけられた石は力なくぶら下がっている。

ー成功ー

「・・・!」

「・・・!」

私と織成は無言のまま、音の出ないようにハイタッチをした。


「そして第三に、紐をあそこの机に引っ掛ける。脚が好ましいな」

私は織成に紐の安全を任せて、中でも比較的大きめな机の脚に紐を巻き付ける。あまり想像したくはないけれど、織成は本当にここを倒壊させる気でいるらしい。変なことに巻き込まれなけないことを祈るよ。

最近覚えた蝶々結びを何重にも繰り返し、最後の締めくくりをきつく締め、織成に完了の合図を送る。


「最後は難関を極めるから、実行するかしないかはその時の判断に委ねるけど一応説明しておくとー」

織成は窓の外を静かに覗き込む。

「やはりリスクが高すぎるな・・・」

「やっぱり?」

「ー最後の作戦は全てが整ったら、紐を隠す作業に入ってもらう。無造作に垂れてる新しい紐を辿られて俺たちの居場所がバレるのは避けたいからな。一番、良いのはあそこの窓から定位置の窓にかけて紐を通して隠す。ってのだけど、まぁ、見ての通り外には練が外でシャイニングスターを動かしている。紐を通す作業でばれちまうのが自然だ」

確かに、紐も、ここにある物全てが練にとっての私たちをあぶり出すための情報。だから、外に垂らして隠すのは選択肢としてはありなのかもしれない。けど、外には鬼の第二の目がこの建物全体と液晶画面を同時に見据えている。そう考えるともはや建物内で限られた時間のなか工夫して隠す他ない。

私は織成と互いに顔を合わせながら無言で策を練る。

織成の頬から汗が吹いている。特に何か活発なことをした訳ではないが、きっと焦燥しょうそうと極度な長考が故だろう。

それは私も同じ。

彼から見ればこの長い髪でよく分からないかもしれないが私もまた汗を流している。

織成の汗がまた一滴、先行していた汗に追い付かんとする速度で流れ出る。彼の頬には、小さな二つの争いの跡が残っていた。

「紐を黒に塗装するか?」

「いやっ、そんなペンキないと思うよ?ここに。それに時間は差し迫ってる。探して取りに行く時間もない」

織成の提案した「紐をペンキで塗って背景と同化させる」という作戦は一寸過去に一瞬思いついたことだったけど、時間は勿論、保護色に色を紐に塗るという芸術的センスも私は持ち合わせてはいない。

・・・芸術って意外と実用性が高いな。

織成の右頬から二つの汗の雫が床に落ちて二つの無造作な波紋を駄作する。

そんな時、また新しい汗が二つの直線の丁度間を押し通る。しかし、それは二つとは違い二つの戦果を吸い取るように紆余曲折うよきょくせつして、それもまた螺旋状の戦果を挙げて、やがて、二つの水たまりに覆い被さるように落ちて、波紋を創る。

織成の後ろで、完全に雨雲に遮られていた日没寸前の夕日が仄照ほのてらす。

ー今日の天気は曇り時々晴れ。そして雷雨ー

私は衝動に駆られ、立ち上がる。

「そうだっ!!織成っ!ジグザグだっ!!ジグザグだよ!!」

「しーーーっ!!!?」

指を口に当てた織成が私の袖を強く引っ張る。思わず叫んでしまった口を手で覆い、彼に思いついた策を耳打ちする。

「ごにょごにょ・・・」

「・・・、そいつは名案だ」

私と織成はグータッチを交わす。


 ただいまシャイニングスターは安全運転で航行中。途中、鏡神の声らしきものを感知。たたちに現場に急行する。

俺は転舵反転てんだはんてんで3階の捜索を打ち切り、2階へ通ずる階段へ推進する。

「それにしてもなんだよ、ジグザグって・・・」

3階はもぬけからで目覚ましい発見は特に何も無かったが二階は違うのだろうか。

まぁ、一階があんな状態なら二階に貴重品を移転されるってのはよくある話だ。多分だが、二階はかなり散らかっていることだろう。

「・・・?」

空気中から、妙な匂いが漂っている。

これはあれの前兆だ。

「急げ・・・」

液晶画面には埃と砂に塗れた木製の階段が映っている。

「こりゃぁ、まさに茨の道だな。いや、階段か。こいつは土足で踏みつければ危ないかもしれん、まぁ、俺には関係ないが」

茨の道が危ないなら、飛んでいればいい。空に咲く植物なんぞ夢のまた夢だ。

ただ、織成はここを猪突猛進に突き進むんだろうな。なんて言ったってあいつは、死に遊びが昔から大好きなのだ。だから、こうやって倒壊寸前の廃墟で何も知らんように遊ぶことをいとわないのだ。

でも、人の命を侮辱することに関しては本気で怒る。それがあいつだ。

命の重大さは小学生ながらによく知っている。

「あいつは鏡神のことをまだ疑っていたりするのか?」

もしそうなら、近いうちに真意を確かめるべく何かしら動き出すだろう。

そう予言しながら、俺は階段を下り進む。

「・・・汚ったね」

目論み通りの汚い光景だった。しかし、変に豪華な装飾がなされている所もあるのが奇妙さすら伺えた。

机や、床に散乱する白い粉は薬か?それとも麻薬か?

どちらにせよ、あまり長居するべきではない場所かもしれない。俺は廃墟を見上げる。

ここからでは視界は大いに開けてはいるが、声はきっと大声でも逃亡者二人には届かないだろう。

「これ、帰った方がいいんじゃない?」

死亡フラグを建てたい訳ではない。だが、嫌な予感がする。

俺は辺りを見渡す。

ここの区域に、俺たち3人以外に後一人、誰かがいるような気がする。

俺は軽く警戒態勢になりながら、コントローラを睨みつける。

「さっさと探そう・・・」

階段のすぐ横には日差しの良く通る個室があった。扉はない。

俺は個室の中に入って、カメラを右往左往と忙しい動きをさせる。ここにもまた、色々な物を散乱させた机があり、今後は化学薬品の製造目的で使われたであろうビーカーだのフラスコだの試験管立てに立てられた試験管と、かなりここで何をやっていたのか簡単に想像できる個室だ。床には埃や砂が3階以上に豊富にかれていた。

だから、二人分の靴底の跡と、三滴分の汗であろう液体の水溜まりの跡を確認することが出来た。

「二人ともさっきまでここにいたみたいだな」

しかし、残念ながら砂が充満している個所はここのみみたいだ。その後の消息は、足跡を見ただけではつかめない。

「地道に探すか・・・。それしかねぇ」

俺はカメラを急速に且つ急角度に回しながらシャイニングスターを発進させた。

「・・・」

老朽化の現れか、ここの屋根はほぼ崩れかけの状態だ。ここで遊ぼうだなんて、普通は考えないだろう。

あいつはいつだって常識の範疇外を付いてくる。

今回だってそうだろう。

例えば、この野縁受けに引っかかった紐。これ見るからに、怪しい。もしかしてこの紐を引っ張ってここの天井を崩そうって魂胆ではないだろうか。

「・・・」

いや、流石にそれはないだろう。あいつがシャイニングスターへの破壊工作をするはずがない。もし、選択肢にあったとしてもそれはルール上タブーだ。けれど信用はしない。信頼はしているが信用はしない。

俺はカメラを紐に向け、行き先を探ってみることにした。

不自然な配置だ。屋根から垂れていた紐はそのまま横一直線に並べられた机を上下しながら、とある個室へと続いている。机の脚部分、床には無理矢理引きずった痕跡があることを考えるとこれはズバリ擁壁ようへきとしてたった今構築された可能性が高い。

となると、この紐の配置の意味はー

「!?」

カメラ中央。視野のど真ん中に、少し汚れた服を着た無邪気そうな男の子の上半身が紐を片手に飛び出した。それが誰なのかを認識するよりも先に俺の脳は第一射撃に対する回避行動を取っていた。

「ッ!?」

コントローラーのスピーカーからそんなあたかも息を呑んだかのような聞こえたと思えば今度は硝子製の何かが粉砕する嫌な面が耳をつんざく。

バックドロップで回避したせいか、視界がシャイニングスターもろとも逆転していた。

「あいつっ!マジでやりやがった!」

液晶画面に映った織成は紐を力強く持ち、得意気に笑ってた。その後ろで、鏡神が大いに動揺して目を丸くしていた。この様子だと、また織成お得意の一人歩きが勃発したみたいだ。

ー反撃だー

とも考えたが、俺は更に後退する。予想通り、次の瞬間には第二射撃で放たれた粉薬やフラスコ、試験管や試験管立てが画面一杯に映り込んだ。俺は液晶画面と言うお世辞にも広く高性能とは言い難い視野を左右に振り、活路を見出す。俺は尽かさず、両方の⑤のコマンドを入力してかつてない速度で前進する。

一瞬、プロペラに何かが当たり、バランスを崩されるが右②のコマンドを入力して何とか立て直す。

目標との距離が右斜めに大きく逸れてしまったが左②・③のコマンドを入力し、再度接近を試みる。

しかし、只今絶賛頭がイかれている織成は俺の接近を拒まんと第三射撃目を依然不敵な、勝利を確信かのような笑みで繰り出してきた。

正直に言って、怖い。何故我が兄はこうも簡単に本当に大切な物に対して攻撃的になれるのか。

ーシャイニングスター。ー

それは数あるプレゼントの中でも不動の第一位と揺らがないであろう愛しい姉からの贈り物だ。修理は父親に頼めば容易いとは言え何故こうも・・・?

もしかして、これも遊びの範疇なのか?

くれたからには、壊れ伏すまで遊び尽くすのが筋だと、そう考えているのか?

シャイニングスターは玩具おもちゃなのか?

姉の鎮魂の籠ったお守りを玩具と?

俺の胸の中で何かがはっきりと理解できた。

「許せないなぁ」

俺は左①のコマンドを入力して艦首を回転させ、迫りくるフラスコを弾き返す。どうやらフラスコの隠し弾はなかったらしく、散布するガラクタが道を開けて織成への直接射撃の可能な直線を開けてくれているかのような面白い具合に射線が通っている。

俺は機関銃の標準を織成の眉間に合わせ、トリガーを引く。

が、しかし全弾外す。というより、最初の数弾はかわされ、残りの全ては滑り込んだ机に弾かれる。俺は攻撃の位置を変えようと、右軸に逸れる。が、しかしそれが裏目に出る。

「てやぁ!!」

そんな厳つい雄叫おたけびを上げながら織成は自らの潜伏場所の机を持ち上げ、こちらに投げ飛ばす。

「こいつッ!!」

もうこうなってくると自分でも一体何をやっているのか全くもって見当が付かなくなってくるのだろう。

織成は今、非常に危険な興奮状態に陥っているに違いない。でないと、こんな乱暴な遊びは今までの類を見ない。机は狙いを誤ったのか、シャイニングスターの右斜めを掠めて落ちていく。とは言えども、これは非常に精密且つ壊れやすい。念のため、左に回避する。

そこで、俺は妙な違和感を覚える。

「鏡神はどこだ?」

少なくとも先織成が出てきた部屋には誰もいない。角度的に、あの部屋の角に隠れて異常に暗い背景と同化してのは確認できないが俺ははっきりとあるものを先の戦いで見て、覚えていた。

「鏡神はあの後・・・、確か部屋から出て・・・・。・・・?」

突然液晶画面に茶色の滝が流れ落ちる。

「砂・・・」

ここに来た際、まず最初に警戒網を敷いたのはあの崩れかけの屋根だ。でもあの屋根はまだ幾分か丈夫そうで、砂が落ちてくるなんて余程傾いていないとあり得ない。あ、紐・・・。

俺はカメラを真下に向ける。そこには紐を両手に祈るように握った鏡神が織成の合図を真正面から見据えて待っていた。そしてようやく俺はシャイニングスターの位置が罠箱の真下であることを理解した。

「今だ!!!!」

鏡神は不安と困惑と使命感で滲んだ苦悶とも言えよう表情で力一杯紐を引っ張った。紐が括りつけられていたのであろう要塞机の一つがこちらに引っ張られ、天井に直撃する。

野縁受けは完全に折れ、天井は瞬時の内に崩壊していく。

「あっ、鏡神よ・・・。お前もそう思うか?そうだろうなぁ。だっていつだって肌に離さず背負っている宝物を今日に限って急にこんな扱いをするんだもんな。そりゃ、そう思うよな」

液晶パネルに映る光景は言わずもがな、地獄絵図だ。


「よぉし!!」

織成は逆さまのままにガッツポーズを高らかに決めている。

あれ?何故織成が逆さまに?ていうか、視界も歪んでもはや原形を留めていないんですけど・・・!

途端、眼中に宙を舞うフラスコが入る。

あっ、そうだ。今私は崩れる屋根からバク転をして避難してるんだ。

今この地獄のような惨状を思い出した私は束の間の蜃気楼に囚われて、後の不協和音から耳を守る作業が間に合わなかった。

「ッとぉ!?」

その変わり、両手が自由だったために着地は難なく成功した。だが、天井の崩壊は止まってはいない。

「おぉい、こっちだ!来いっ!」

逃げ遅れの私を導くかんとする声が木霊する。

織成だ。三階へ通ずる階段から大きく手を振っている。

崩壊の止まらない天井は予想を遥かに凌駕する範囲を侵食していた。それは私の居る所にまでも。

この絶望的状況を体は私の命令の伝達を無視して勝手に道なき道を駆けていく。要塞として建築したが今じゃ邪魔でしかない机を両手で薙ぎ払い、蹴り飛ばし、痛みにすら目を背けて私は階段へと向かう。

織成の

「おや、案外やばくね?」

の顔を見る限り私は今、この世に存在してはいけない異形の怪物に追われているは同然なのだろう。

崩落という名の波。

地震の後の津波がそれに該当するね。最近じゃ物騒な噂をよく耳にするけれど、少なくとも私がここの区域に滞在している間は起こらないと願いたい。また死んで、例の島に流されて、日本まで海の底を歩いて帰るのはそろそろいい加減にしてほしいからね。何にせよ、私はもう死にたくない。

あぁ、非常事態に何を考えてるんだろうね。私は。なんだか気持ち悪い。

「早く!」

織成は私に手を差し伸べる。折角、差し伸べられた手。受け取るのが筋なのだろうけれど勢い余って手に取れなかった。そうして私は織成を追い浮かし、いち早く三階にたどり着いたのだった。


「はぁ、はぁ、いやぁ、はぁ、大戦果でありますなぁ!」

私の隣でコンクリート造り壁にもたれかかって戦果とガッツポーズを挙げている織成は親指すらも挙げている。

「危ないよ・・・、はぁ、本当に・・・はぁ、万が一のことがあったらどうするのさ・・・はぅ・・・」

急速の脈動と過呼吸で上手く言葉が紡げない。酷く苦しく、動脈が痛いがここが安全区域だと信じて走ってよかった。ここは1,2階とは打って変わり、ここ3階の全体がコンクリート造りになっていて、二階の崩壊の影響を一切受けていないように見受けられる。今、私たちが休憩をしているこの部屋は崩落地点から少しズレた場所にあるから万が一にも安全はある程度確保されている。

・・・と信じたい。

疑惑はある。勿論さ。だって、冷静に考えてみれば1,2階の構造が一部を除いて全て木造によるものだったのならその上にコンクリート造りの建造物がもう一つ乗せられるだなんてあり得ないようにも感じる。壁が紛れもないコンクリート造りになっていたのは確認済みだが、あれでも一部が欠落するくらいには薄い。

土の山に大岩が乗るなんてこと、本当にあり得るのだろうか。

「・・・」

もしかしてこの建物ー

「奇跡の手抜き物件?」

「あぁ、俺もそう思うよ。だからここからは一層用心していかねぇとな。それに支柱をあんなんにしちまったんだ。安全は以前よりは保証されてない」

ユートピアこそディストピアってことだね。学び舎こそ鳥籠の客観的思考さながら。

いやだよ・・・、そんな現実・・・」

「まぁ、この俺を信用したまえ。その暁には、お前を生きて還せるぞ?」

「あぁ・・・、信頼はするよ・・・」

私は中途半端に言葉を流して合掌する。きっと今日の帰りは遅くなるかもと輝華きか輝全てるまに連絡しておいた方がいいかな?と言っても、私はまだ携帯を持っていない。

「という訳ではいっ、作戦会議だ!」

織成は私の肩をやや強めに掴みながら距離を詰めてくる。こうなってくると、私は追跡鬼ついせっき、シャイニングスターからも粗悪の根源、織成からも逃げる方法を考えなくてはならないかもしれない。

「ヨーソロー」

声は妙に弱弱しくもどこか意思を感じさせるものだった。


「はぁ、はぁ、はぁ」

走ってはいない。厳密には少し後退しただけだ。ただそれだけ。なのに、なんなんだこの荒い呼吸は。

俺は酷く驚愕していた。あんな事態が未だかつてあっただろうか。

「はぁ、にしても天は俺に味方しているらしい。なぁ、お姉ちゃん」

俺はくずおれた、二階の一部を正面に見据えるシャイニングスターを見上げる。

あの後、液晶画面の光景は上から迫りくる瓦礫で苛まれ、ほとんど何も見えない状態になって終わりを感じていたが衝動的に後退した場所が偶然にも窓ガラスの無い窓でそこから流れるように脱出できたという経緯いきさつがあり、今は絶賛新たな作戦を考察している段階だ。

俺の目は彼ら二人の逃げた3階を捉える。

構造上の材料の材質は恐らくコンクリート。丈はまぁまぁ高いが、シャイニングスターの射程距離の前には無力だろう。3階内部の構造はしっかりと頭に入っている。やはり事前偵察は大切だ。問題は崩落現場の丁度、上。さっきの崩落は、鏡神の引っ張り寄こした机によって引き起こされた。故に建物自体は、机という大きめの鈍器の弱点への直撃で大きくダメージを追っている。実際、コンクリートの一部を穿うがいて共に崩落し、欠落している。さすがの俺も少し後退しなければ危なかった。それくらい大規模な且つ深刻なことをしたのだ。あいつは。後、もう一つ不安を挙げるとすればあの倒壊具合から考えて、あの真上の部屋は立ち入り禁止エリアにするべきだ。人一人立つだけで更に倒壊が進む可能性がある。

「流石に呼び出すか?呼び出した方がいいよな・・・」

俺は懐から携帯を取り出し、織成の連絡先のアイコンをタップする。あいつは着信音はいざって言う時にうるさく、鬱陶しいからと言う理由で振動のみに設定している。織成にとっての「いざって言う時」とは電車に乗っている時や、眠っている時に過ぎない。今後もし天変地異が起こったとして、その時彼は着信音のならない携帯で一体どうやってトラブルを脱するのか、正直見物だ。

まぁ、そんな時、着信音が無くても携帯を肌に離さず持っていれば着信振動で連絡に気が付けるんだろうな。織成の場合。

無くした時はどうするんだろうか。

「・・・」

繋がらない。相場的におおよそ予想は立っていたが、予想が的中したとなると改めての不安が半端ない。

しかし、他に手がない訳ではない。単純な話、あの危険地帯に彼ら二人を立ち入れなけりゃ良い。

俺は携帯を懐にしまい込み、シャイニングスターの舵を切る。

どうやら、シャイニングスターは俺の思いを受け取ったかのように上昇を開始した。当たり前。

あれには、シャイニングスターにはお姉ちゃんの、作理さくり 双束ふたばの命が宿っている。

俺はそう思いたい。

目的地はここから上昇し、そして少し左斜めに行った先。

「さぁて、行くか!」

「あぁ、派手にやったね・・・!」

「・・・!?」

俺の声に重なるようにして、聞き覚えの有り余るどこか懐かしい声色の声が左側から横槍を入れる。

「あぁ・・・、帰って来たのか・・・!?」

自然豊かなくさむらから黒いフードをまとった俺や織成よりも少し背の高い少年が一人単独で姿を現した。倒壊しかけの廃墟の倒壊部分を黄昏たそがれるように見つめていた少年は優しい微笑みで俺へ向き直った。

「久しぶりだね。練くん。いつぶりかな・・・?」

「三か月ぶりだよ!どうだった?海外研修は」

相変わらず生気の籠っていない彼の目は更に細くなる。そして、微笑みが一層深まった。

「うん。楽しかったよ。良い経験ができたよ」

「それは良かった・・・」

文末の微笑みから笑顔への変化から本気で楽しかったという気持ちで一杯であることが感じ取れる。

彼は四月から海外研修へ行っていた俺たち兄弟の数少ない友達だ。優しい。とにかく優しい。それは彼は貧乏であるが故に少数保有の服を汚されても怒らない、決して他人に当たらない。そんな人だ。

それに何かと、鏡神と雰囲気が似ているやつだ。そうだ。きっと鏡神と彼は馬が合うかもしれない。このゲームが終わればお互いを紹介してやろう。

そんなことを計画しながら俺はシャイニングスターを侵入口へ接近させる。それを見ていた彼は不意に俺に聞く。

「誰か新しい友達ができたのかい?」

「うん。千光鏡神。最近転校してきた子だよ」

侵入口まで後、1.2m位。ここは慎重にいかねば、シャイニングスターが危ない。

「ふーん。おめでたい。また織成くんの強引が鏡神くんを招いたのね」

侵入口まで後、1m。随分な皮肉だ。

「うん・・・、全く・・・。だから友達が少ないんだよな・・・」

彼は肩を震わせながら笑う。っ気がした。

「ふふっ、そうだね。でも鏡神くんも大変だね・・・、あの倒壊、多分織成くんの仕業でしょう?」

侵入口はもはや目前。

「そうそう。今からこんな悪行を起こした織成を制裁するところなのだ」

侵入口から遠目で中の様子を確認する。見た感じ、誰もいない。二階に戻ったというふしもあり得るが、あの惨状じゃきっと二階に下りればあちら側は不利になるだろう。そもそも二階降りれるのかがまず謎なところだが利口な織成に限ってきっとそんなことはしない。もし万が一そんな事態があり得たとしても、罠が確実にない外の空中を迂回して背中を捕らえればいい。

何の問題もない。

「変わってないね・・・織成くんは相変わらず。練くん、ファイト!」

こんなことを言ってくれる友達もきっと彼と鏡神に絞られるんだろうな。現時点。

「よし、じゃぁ行きます!応援頼むよー日鴉ひからー。」


「私がおとりになる!」

私は小声且つ大声でそう主張した。

「おや?お前、自らを犠牲にとな?」

織成はそう冷ややかに言った。あまりにも薄すぎる反応を見る限り多分織成は最初からそのつもりだったのだろうかという疑惑が生まれてしまう。だとしたら、結果オーライ。これ以上の危険を考えると、私は織成と少し距離を取りつつ行動した方が良い。別に織成が嫌いな訳ではない。き使われて、命の危険に晒されるようなことになるのを危惧したうえでの結論だ。

先だってそうだ。

織成の言うことを聞いたが故に私は下手をすれば再び死んでいたかもしれない。

「・・・」

私は自分の胸に手を当てる。心臓の鼓動がまだ早い。頭に血が上っている。そのせいか、自分の考えに収集が付きにくくなっているように感じる。この結論だって裏を返せば、「織成から離れて行動したい」・「ある程度安全に立ち回りたい」という危険意識からの一心が呼んだものだ。

もしかすると私は織成の全くの無責任な行動に立腹しているのかもしれない。

だったら尚更、距離を取るべきだ。

「うん!そうだ。私が囮になって、君の活路を開く」

織成は数秒、私の目を直線に直視し、何かを考えていた。そして不意に私に質問してきた。

「俺のことが信用できないか?」

「何の話?それ・・・」

正直に私は図星を突かれた。これは私の道徳観の問題かもしれないが、私にとって、友達と言う存在は決して「信用」に値しない存在。けど、だからといってただの邂逅かいこう合わせが友達の全体図とも考えてはいない。滅相もない。

「俺が囮になると言ったら、どうする?案に採用できるか?って話」

空気が一気に淀んでいくのが感じ取れる。今にも雨の降り出しそうな天気も相まって、私の好きじゃない雰囲気へ空間が腐食していく。

ここで正直な気持ちを打ち明けることこそが彼への救いかもしれない。けれど同時に折角できた縁にひびを入れるようなことにもなってしまう。しかし、彼は私の回答を今か今かと待っている。それに今こうしている瞬間もシャイニングスターは私たちとの距離を縮めてきている。

この言語化できない殺伐とした空気が私は嫌いだ。

「・・・ううん。採用できない」

織成は間髪入れずに続ける。

「理由は?」

「君が信用できないから。先だって、君は私を、自分自身をも危険に晒した。そんな人に囮は任せられない。またどんな危険な手を使って、自分自身の首を絞めるか分からないから・・・。保証なんて一切ないからだよ。でもね織成、」

私は立ち上がる。

「だからこそ、私は君に、後線の先陣を任せたいの」

雨雲は勢力を増して、更に利休鼠色りきゅうねずいろの一色に染め上げる。織成の顔が陰と影で黒く染まり、もはやどんな表情をしているか分からない。黒と対を成す白の色をした目でさえ黒くなっている。もはや、それは言うならば人型をした虚数だ。

「・・・?」

「君は私の友達。そうでしょ?現に私は今、この瞬間も君のことを友達だと思っている」

「何故ー」

「何故そう言い切れるのか。それは、君を信頼しているからだよ」

織成は虚数の顔を少し上げる。そこには白黒の双眸そうぼうが確かに存在している。

「友達って言うのは、「信頼」あって初めて得られる称号だと私は思うんだ。「信用」はその次。

あくまでこれは私の主観でしかない。けれど私の主観がそうである以上、君は友達だし「信頼に値する人物」だよ。だからこそ、私は君を囮に採用しない」

放課後の夕方から黄昏時、そして日没までの短い時間でのただの鬼ごっこ。しかし、私にとってはそれは茨の道を相棒と共に掻い潜った、すごく長い時間と感じる短い時間にして、とても尊い時間だった。

私は相棒に、友達に手を差し伸べる。

「私は君を信頼してここまで来た。だから、今度は私を君が信頼して、付いて来てはくれないかい?」

空気のくせに空気の読まない空は以前、曇りのまま。どころか、私の台詞の終わりに合わせて雷をとどろかせた。雷光の閃光に一瞬照らされた織成の顔は真顔だった。が、光が私たち二人の間を通り過ぎる寸前に織成は大きく笑った。

「いいだろう!鏡神っ!君を信頼しよう!さぁ、俺を導いてみせよ!」

織成は私の手を熱と力の籠った手で握り返した。


「雨が降ってきそうだね、雷も鳴ってたし・・・」

日鴉ひからは俺の肩から伸ばしていた首をもはや曇天と化した空漠に持ち上げる。さっきの雷鳴に、正直びっくりして今涙目になっていることはどうやら日鴉にはバレていないらしい。

おっと、君は今、何も聞かなかった。いいね?(圧)

それにしても、今雨に降ってもらっては非常に困る。シャイニングスターも同様だが、このコントローラーは防水ではない。廃墟に雨宿りを乞うのは・・・死んでもごめんだ。少なくとも頭上に織成が鏡神を引き摺って暴れている内は。

「日鴉ぁ、折り畳み傘とかないかい?ていうか、茂みから出てきたけど今の今まで何してたんだ?」

日鴉はどうやら雨が降るか降らないかの境目のスリルを楽しんでいるのか曇天の下、黒い長丈のフードと毛量の多い黒髪をなびかせて一回転、二回転を繰り返していた。

黒黒黒のオンパレードの彼は雨、風、嵐の日は三つ巴の権化に見えて映ってしまう。曇天と同化して消えてしまいそうな感じがしてならない。

「わわわ、目が回るぅ・・・、ん?折り畳み傘?あぁ、ごめん。生憎今はふところもぬけからなもので・・・」

日鴉は吐き気を抑えるために四肢を地面に付けて四つん這いの大勢になっていた。

意外にも立ち直りは早かったが、上げた右手の人差し指にはダンゴムシが乗せられていた。

「見て見て練ぅ、僕ね、海外でマジックを覚えたんだよ!」

そう言って、日鴉はダンゴムシを乗せた人差し指を俺に見せてきた。俺はどちらかと言えば昆虫は大好きに値する。

「はいはい」

俺はシャイニングスターを侵入口から斜め直進させた部屋の角に、彼ら二人から隠すように静止させる。

無視すれば日鴉は頬を膨らませて怒るのだ。・・・って訳ではないが、幾分か興味はある。

見るだけ見てみよう。

「じゃぁ、行くよ!」

日鴉はお辞儀をし、まるで雨乞いをするかのように上半身を空に向かって伸ばしているダンゴムシを左手全体を使って覆い隠す。

「・・・!?」

ほんの一瞬。ほんの一瞬、隠して何か細工をしたのかダンゴムシは姿を変えていた。

驚くべきことに、モンキアゲハに。ダンゴムシは黒い蝶に姿を変えていた。

驚愕を隠せない俺の反応に満足したのか日鴉は薄ら笑いを微笑みに変え、飛び立とうとするモンキアゲハに再び左手をかざし隠した。

「・・・!!!!!!」

そして次の瞬間には、黒い蝶は白い蝶、ウラギンシジミとなって決して淡くはない花曇りに羽ばたいた。

「行っておいで。蝶よ。数奇な花の蜜を探しに・・・」

日鴉は飛び去って行く蝶に祈りを捧げている。俺にはこの状況の事態に未だ収集が付かずにいる。

一体何が起きた?

「た、種明かしを、種明かしをお願いしたい・・・!」

コントローラーを持つ手が震えている。これは脳が震えていることの現れなのだろうか。

「ダメだよぉ。バラしちゃったらもう次のネタが無いんだよ。ごめんよ。スコップは貸せない」

日鴉はマジックの舞台となった右手を手刀と挙げる。いっそ、その手刀をスコップ代わりにして種を掘り返してやろうかと思えど、俺にはまだ仕事が残っていることを思い出した。

「しゃぁねぇ、いつか突き止めてやるからな!それまでお前はネタでも練ってろ」

日鴉は生気のない目を髪間から覗かせながら手刀を挙手とし、敬礼する。基本的に敬礼とは右手ではなく左手でするものなのだが、そこはツッコむのはそう。

左手での敬礼は返って失礼と聞いたことがあったからだ。

俺は失礼を被って、左手での敬礼をし返す。そして流れるような動作で画面を見た。

「・・・?」

俺が液晶画面に視野を投じたその時、丁度その時に画面中央のこの部屋の出入り口に何かが横切った。

気のせいではない。この肉眼でしっかりと黙認した。

俺はシャイニングスターを部屋の角から発進させ、何者かが通り過ぎて行った廊下に出る。

左の奥の手は倒壊しきってもはや地盤の歪んだ二階に通ずる木製の階段。

ー認識ー

左の奥の手は増築途中だったのか、扉も窓も敷物の類もない皆無で素朴な廊下が続いている。

ー認識ー

そしてその何者かが隣の部屋に入っていくものついでに認識した。

織成か鏡神か、そして一人か二人かなんて過度な刹那でそこまでの認識は不可能だがどちらにせよ、ここにいるのはBB弾をお見舞いすべき二人だけだ。

ー多分ー

俺はシャイニングスターに一気に隣の部屋までの距離を詰めさせ、そして正体を知る。

「鏡神・・・」

「んん?この子が新人?」

日鴉は俺の肩から顔を近づけて鏡神の姿を初めて見た。

ここに鏡神が一人単独で走って来たとなるとどうやら囮役を買ったみたいだ。

今から鏡神を仕留めても織成を狩猟する時間は十分にある。

そう判断した俺は液晶パネルに光学照準器を提示させ、鏡神の腰辺りに狙いを定める。

眉間は可愛そうだ。

狙いは確実に、されど仕留めるのは一瞬。

俺の心持がそう叫び、トリガーを引く。その瞬間に俺と日鴉はあることに気が付いた。

「ねぇ、練。鏡神のいる部屋って・・・、倒壊した部屋の真上じゃない?」

「あぁ」

建てたフラグは瞬時に回収された。

俺が着想を得たが故の一瞬の気の迷いが鏡神にとっての突くべき隙となってしまった。その後は何故だか一時的に身体能力でも上がったのか、全ての動作が遅く感じられた。

それはつまり、床が崩壊して瓦礫もろとも鏡神が三階から落ちていく光景すらも、皮肉にもスローで且つ鮮明に目に焼き付いたことを意味しても過言ではない。

ー鏡神が転落するー

心が鈍い俺はただ立ち尽くしてその光景を見届けることしかできない。動けずに、ただ見ているだけだ。

しかし、精神力が弱かったのは俺だけのようだ。

「・・・?」

視野の右端から風を置き去りにした黒い影が残像をもよおして鏡神に迫る。何が起きたのか分からないまま茫然と曇天を見つめていた鏡神の目が黒い彗星に向けられ、酷く焦ったように瞼をきつく閉じ、両手が自己防衛のため眼前でクロスされる。俺は黒い彗星が接近の勢いを殺すために一度壁に軟着陸した時のスピード軽減で、ようやく黒い彗星が日鴉であることに気が付いた。

「うわっ!」

壁キックの方向転換をした日鴉に両手で抱えられた鏡神は息を吹き返したように、振動の声を上げた。

そして日鴉は鏡神をお姫様抱っこしながら5メートル以上はあろう三階から摩擦を生むために斜姿勢と一回転をし、着地した。

衝撃が強かったのか砂埃がアニメのアクションシーン見たく、舞い上がる。そこには薄気味悪い黒いシルエットと赤く光る双眸そうぼうが真正面の明後日の方向を見つめていた。

 待て、日鴉の瞳は赤かったか?

なんとかチンタラ空気から脱した俺は日鴉の鬼の目に似た眼の詳細を確かめるべく、彼らに歩み寄ろうとした丁度その時に砂埃が晴れる。

日鴉の目は生気の籠っていない漆黒の大渦そのものであった。

日鴉が鬼ではなかったことが発覚した今、心配すべきは鏡神だ。日鴉にあんな身体能力があったとは驚きだが、それは以前のゲームでも散々魅せられたことだ。今更、腰は抜かさない。

俺は歩幅を広げつつ、思考を切り替えて彼らに走り寄る。

「大丈夫か!?」

日鴉は明後日の方向に向けていた目を鏡神に向けていて、当の鏡神は固まって動けないでいた。

「僕は大丈夫さ。鏡神、大丈夫かい?」

彼が笑えばえらく気味が悪く、初対面なら目線だけで全身を雁字搦めにされる勢いだがもしかして鏡神もその影響を受けているのかもしれない。

鏡神の目はなにか恐ろしいものを見るような目をしていた。

「あっ、うん・・・。大丈夫、ありがとう」

鏡神の手が自然と力んでいく。

「き、君は誰・・・?」

その問いに日鴉は答えるより先に鏡神をやや強く抱きしめ、右手で頭を撫でる。

蟷螂かまきりに喰われる虫の関係を連想せざるを得ない光景に俺は寄る脚を止めて一歩後退った。

「きゃっ!な、なにを・・・!?」

どうやら、鏡神の四肢は完全に日鴉に抱負されていて動かせないみたいだ。

この時の日鴉の表情はこちら側では視認できなかったが、声色が妙に優しく透き通ているのは印象に残っている。

「危なかったねぇ、よしよし。もう安全だよ・・・」

ナデナデ、ポンポン。

親が子にする愛業を日鴉が鏡神にする。

変な雰囲気と言う名の大口に横槍を入れたのはほぼ存在を忘れかけていた屋上に立つ織成だった。

「よぉ、練っ!俺の勝ちだぜ!ってなわけで、今日の皿洗いはお前に決定だぁ!!だはは!!よう鏡神ぃ!囮役ご苦労さん・・・、ありゃ、日鴉がいるではないか、丁度良い!日鴉、降りられなくなっちまったから持ち前の身体能力で俺をたー・・・」

織成は咳払いをし、お辞儀する。

「助けてください」

「いいよぉ。じゃぁ鏡神、後でね」

日鴉は鏡神を開放し、潜在の身体能力でこの場から砂埃を再び掻き揚げながら織成のいる屋上、言うならば四階まで跳躍していった。これぞ人はスーパー小学生とでも呼ぶのだろうね。俺だって本当はそれを日鴉の渾名あだなにしたい。

「はぁ、すごいねあの子。たった一跳躍で屋上まで飛べるの・・・!?」

日鴉の武勇伝は今の記載にも留まらない。あいつは色々なところが人間を止めているのだ人間だ。

人間と確証付けるのも少し疑わしいが、人間の生皮を被った化け物とも確信を突くのもそれこそ確固たる証拠がない限り断言はできない。まぁ最も、ジャンプ一階で最大10mは跳躍している時点でそれが確固たる証拠にはありうるのだろうが。

さっきのマジックも驚きものだった。マジックの種は大体把握済みではあるがどの項目にも日鴉のは当て嵌まらなかった。やっぱり化け物、いや、荒ぶる神なのかもしれない。

「あの荒ぶる神の名前は永暗ながくら日鴉ひから。まぁ、色々とやばい奴だ」

「ふ・・・ん・・・。なんだか、怖かった」

「まぁな、あんな突然抱かれりゃ誰だって怖い。逆によくあんな状態で耐え忍んだね」

「いや、そうじゃなくて・・・」

鏡神は砂で汚れた長髪を払い立ち上がる。

「普通に怖かった・・・。私・・・過去にあの子に何かしたのかな・・・?殺気に似たものが感じられた」

「そりゃ、抱かれてた時もずっとか?」

鏡神は予想外にも首を横に振った。

「いや、あの時はなんだろ・・・愛情が感じ取れた」

鏡神は上を見上げる。が、なぜかこっちを見下ろしていた日鴉と目が合ってしまったらしく、肩を一瞬震わせて目を逸らした。鏡神の顔が陰っている。

どんな顔をしていたのか気になった俺もつられて顔を上げるが屋上には訝し気に漂う曇天のみがあった。

すぐ後ろには織成ののべつ幕なしの感想of自慢の声が聞こえてくる。

鏡神も視線を声が聞こえてくる先へと向けている。

もしや、いやいつの間にと後ろを振り返れば既に日鴉は織成を抱えて着地していた。屈んだ体を起こしたと同時に着地音と衝撃波が壮大に遅れて追い付いた。

衝撃波をもろに食らった俺は軽く吹っ飛ばされそうになりながらも鏡神に背中を支えられ九死に一生を得る。

かくして織成は素っ頓狂な顔をしている。

「・・・、おや?いつの間に着地したのだ?」

相変わらずの優しい声で日鴉は状況の把握が迷える子羊な織成を馬車からご令嬢を下ろす執事のような器用な手つきで地面に下ろす。

「さぁ、織成くん。目的地だよ。少し抱えない内に体重増えたのかな?少し重くなってるよ。良い意味で。成長したね」

織成は優雅と書いて豪快な足並みで湿気のある地面に立つなり得意気のガッツポーズを曇天に突き立てる。

「マジ!?っしゃぁ!ほらぁ、あの時の体重計は壊れてたんだ絶対ッ!!」

日鴉は腕を後ろに組んで背骨を右斜めに傾ける。

「鏡神よりは重かったよ。ねぇ、鏡神」

漆黒の大渦が鏡神を飲み込まんと見入る。当の鏡神は少しづつ慣れてきたのか、表情を歪ませることもなく和らげていつもの調子で微笑む。

「う~ん・・・、どうなんだろうね・・・。まぁ、織成は私よりは少し大きいもんね」

「ところでよ、日鴉と鏡神はいつ知り合ったんだ?てか、鏡神、お前いつの間に捕まってたんだよ」

鏡神は苦笑いで苦笑する。仕方なく俺は事態の欠片も掴めていない織成に懇切丁寧に今までの経緯を皮肉混じりに話すのだった。


「へぇ!そんなことがっ!!これは鬼ごっこ史上初の快挙だなぁ!」

「いや、そういう問題じゃないから。危うく、鏡神は死にかけるところだったんだぞ?」

俺は日鴉とすっかり意気投合してじゃれ合っている鏡神を見ながら言う。どうやら説明の間に日鴉は鏡神に例のマジックを披露したみたいで鏡神は不思議そうに彼の右手を凝視している。

「それにしても意外だな。鏡神が囮役を自分から買うなんて。隊長に一生ついていく系の子かとばかり思ってたがー」

「やはり人は見かけによらんらしいな」

先んじて俺の言葉を奪った織成は何故か、寂しそうに日鴉に頭を撫でられて若干嬉しそうにいている鏡神を見ていた。その眼には少し彼との距離感を思う色が滲んでいて、見ていると摩訶不思議な気持ちにさせられる。

複雑な感情、哀れ、とでも呼ぶのだろうか。

ー人間には隔たりがある。その距離はやり方次第ではいくらでも縮めることが可能だ。けれど、その距離は決して0にはならない。

何故なら、これは距離でなく空間だから。自分だけの領域だから。ー

お姉ちゃんの口癖が脳裏に留まって木霊する。多分、俺はこの証明しようのない事実に思い耽っている織成に対して心痛を感じているみたいだ。

まずい、俺までそんなことを思い始めちまったらいよいよツッコミがいなくなっちまう。

・・・?もし、織成がそんな気持ちで鏡神を見ているのなら何故今日はあんなにシャイニングスターの扱いが狼藉ろうぜきたるものだったのだ?

「・・・」

「はっ、ねぇ!今、何時!?」

鏡神の焦りの声で俺と織成は目が覚め、それぞれ持っていた携帯を懐から取り出してほぼズレの無いタイミングで時間を確認する。

「6時半」

「六時半」

鏡神は片手で口元を覆い、もう片方の手は行き場を探して彷徨わせている。

「もうそんな時間・・・、そろそろ帰ろうよ!」

「そうだねぇ、帰った方がいいね、こんな時間なら。それに雨がもうじきにも降るかもぉ」

俺たちは全員、ドス黒い空を見上げた。星一つない闇夜の下で四人組の小学生が空を見上げている構図は傍から見ればかなり異質だろうが、俺からすれば鏡神の肩から映っちゃった心霊みたく力なく垂れ下がる

日鴉を見るよりはマシだろうからどうか何も言わないでほしい。

日鴉はしばらく、同じ空を見上げる俺たち面々を見つめた後、彷徨っていた鏡神の右腕を捕まえ、自分の額へ誘導する。

「闇って美しいよねぇ。いやいや、厨二病をこじらせている訳じゃないよ?ただ、思わない?

お先真っ暗の、先なのか後なのか左右すら分からない真っ暗な空間をただ茫然と突き進むあの感覚。怖いようなそうでないような。僕、すっごく楽しく感じるんだ」

日鴉は鏡神の右手を頬刷りしながら満面の笑みで言う。

勿論、「それな」と言う者はこの場にはいなかった。彼は、少し、いや結構色々なところが人間離れしている。それは彼が手握たにぎる概念も例外ではない。

これ以上、この子に発言権を許してしまえば帰宅は間違いなく深夜。大目玉を食らって明日寝坊なんて冗談じゃない。一応、俺は皆勤賞を狙っているし、今までのものは全て家宝にして床の間に飾っているくらいの大切な矜持きょうじだ。

「さぁ、ここでお開きにしようか。なぁ、織成、雨が降るかもしれねぇ。ちなみに俺は傘を持ってはいねぇ」

言い終わる寸前に俺は織成が既にいないことに気が付いた。自然豊かな来た道を見据えれば夕日で若干明るい曇天の切れ目に向かってこちらに手を振りながら走り去る姿が確認できる。

いつの間にかシャイニングスターも回収されている。

「織成はちゃんとバイバイしてたよ。練も気を付けてね」

鏡神と日鴉は全く同じ表情をしながら手を振っていた。多分、日鴉も同じことを言わんとしていることだろう。

「おぅ!すまねぇ。じゃっ!二人も気を付けて」

俺は踵を返して走り出した。この距離ならすぐ織成に追い付けるだろう。


私の手の振る肩からのしかかった重量が消える。日鴉が私の肩から離れたのだと振り返る。

日鴉はその場で立ち尽くして漆黒の大渦をこちらに向けて立っていた。今だからこそ敵対心はないが、下手をすればこの子は私を連れ去って食べてしまうのだろうかという恐怖心が拭い切れない。

どうやら私は彼を信頼の目でまだ見えてはいないみたいだ。人間不信だなとつくづく思う。

「じゃぁ、私も帰るけど日鴉くん、途中まで送ろうか?」

日鴉は両手をクロス状に振る。何故だろう。ほっとけよって顔しているように感じる。

「ありがとぉ!心配してくれて嬉しいよ。でも大丈夫。一人で帰れるよ。厳密には一人でしか帰れないのだけれど」

一人でしか帰れない。というのはあながち誰だってそうかもしれない。

何か家の事情があるのだと観た。

「わかったよ。じゃぁ、私は帰るね」

日鴉は一礼お辞儀をし、私とは正反対の叢の中へと消えていく。黒黒黒の服も相まってしばらく進めばその異形な後ろ姿はほどなくして完全に闇に溶けていった。

そこにるのに、そこにない。まるで、シュレディンガーの猫だ。

消滅と欺瞞ぎまんの黒猫さんか。

私は日鴉が溶けて尚溶けて消えるまで見送って、身を翻して帰路の道筋に脚を踏み入れた。

今日は6月30日。輝全てるまが早く帰ってくる日だ。久しぶりの3人での会食。さだめが帰ってしまったのは少し心寂しいけれどあれは喜ぶべき事案だよね。いつでも遊びに行けるし、大丈夫だよ。

「・・・?」

すぐ後ろから嫌な音がした。もしや、日鴉に何かあったのではと後ろを振り返ろうとした時、私は吐き気に襲われた。

「う、げほッ!ッでほッ!」

掌に生温かい感触。

もしかして戻した?

しかし、漂ってきた匂いは今までの、従来の嘔吐物とはまた違った腐れ縁の歪んだ匂いが、鼻をもぎる臭いがした瞬間私はこの掌の、暗くてよく視認できないそれが

ー血ー

であると確信した。

確信したからどうだと言う。それ以前に、私の胸からは大量に血が現在進行形で噴出しているのだからまずその処理をするのが手順じゃないのか。

・・・?

私は今、一体今何を考えてるの?・・・へ?今私は・・・、一体どうなっている?

「・・・っあ、・・・あ・・・、あぁ!?」

激痛というより倦怠感に似た感覚が全身を伝い、立っていられなくなる。

「・・・はっは・・・、な・・・に・・・?」

私は違和感のある自分の胸を見る。

「ッ!?」

私の目には今、私の胸に鋭利な黒い触手のようなものに胸を貫かれている様が反射して映っていることだろう。ごもっとも。

今、私は得体の知れない黒い鋭利な触手に胸を貫かれているのだから。

心臓が動脈で固定されていないのが内肉から感覚で伝わってきて、更に吐き気を催す。血液が全身に回らなくなり、ついには私は足に屈した。が、刺さった触手は微動だにせず、傷口を広げて血液を余分に流出させてしまう事態になった。

「あッ・・・、アッ・・・、Àぁ・・・!」

呼吸ができなくなり視界が朦朧とし始める。そんな弱った私を見かねたのか触手は私の身体からの脱出せんと冷たい繊維をうねらせ始めた。

痛い。早く抜けてくれ。いや、ダメだ!抜けないで!今、君が抜けたら私は・・・!!

「ああぁ・・・!!だ・・・、だめ・・・!!!」

触手はあっさりと抜かれ、代わりに血液ががっさり体外へ流血され地面に血だまりを作っては私が死ぬのを今か今かと凪ぎながら広がっていく。

固定を失った体の機能しない私は血だまりに落ちそして溺れ沈んでいく。横たわっても出血は止まらない。もうどうしようもない。

藻掻く気力もいずれ尽き、血液も枯渇の一途を辿る私はついには身動きが取れなくなり意識も刻一刻と薄れていく。

苦しい。息ができない。気持ち悪い。痛い。帰りたい。怖い。眠い。

そんな感情が跋扈ばっこする混沌の渦にもみくちゃにされる私が最後に見た光景は、私を殺した黒い触手が地面に消えて行く光景であった。

あの触手はなんだったんだろうか。少なくとも、人間のものではないのは確実と考えてもなんだ可笑しな話ではない。かと言って、それを決定的根拠がない限り断言するのは世間知らずと言うもの。

時間は絶え間なく進んでいく。水中以外の万物は時間で張りつめている。だから、いつ唐突に新生物が誕生してもおかしくはないのだ。もしやたまたまその新生物が目覚めて、その頭上に最後まで残っていたのが私で、故に私が獲物にされたと?

だとすれば、今からでもその新生物は私を食らいに地面から這い出てくるだろう。

私は不老不死だ。しばらく待とう。

「・・・」

10秒待った。出てこない。

もしかして、新生物という節は薄い?それか10秒間の間に振り出した雨には弱い?

無きにしも非ず。

0%でもなければ1%でもない。

じゃぁ、あれの正体は何なんだと、考えるも血行の行き届いていないこの頭じゃこれ以上の詮索はできない。

私は不老不死。されど死ぬ。

本来は死んでいるような致命傷を受けた私は自己治療のために一旦長期の仮死状態に入るようになっている。

詳しい原理は分からないが、多分治療に生きる分のエネルギーの全てつぎ込んでいるからなのだろう。そして鬼ごっこから程なくして起きた一瞬の惨劇で負った傷は間違いなく致命傷だ。本来ならば。

温かい雨粒が頬を伝う。

慈雨であり無慈雨でもある6月の終わりを告げる雨に打たれた意識がみるみるうちに消えていく。


ごめん。輝華、輝全。今日は帰れそうにないや。


 食欲を啜る香りが部屋を漂い始める。どうやら、今晩の夕食はクリームシチューらしい。

期待できそう。

午後6時32分。そろそろ愛しの鏡神が我が家に帰宅する頃合だよ。まだかなぁ。

お姉ちゃんも同じような心境だったのか、時計を見るなり既視感を口にする。

「そろそろ鏡神が帰ってくる時間帯だな・・・、鍵、開けとくか・・・」

私は玄関へ急ぐ輝全お姉ちゃんの背中を妹の目で見守り、引き続き触っていたスマホに向き直る。

・・・?

そんなにスマホ見てて飽きないのか?って?うん!飽きない。あきないじゃない!飽きない!

だって私は今、世界で一番大切な人と連絡しているんだもん。飽きる訳がない!

ー色恋沙汰ですか?ー

うん・・・、そうなるのかな。彼とは幼馴染なの。それが大切な人に変色した。男女の幼馴染って満更でもただの友達関係で終わるってことないのかもしれないのよね。要するに、色恋沙汰なのかな。

ーそうですか。その稀な関係は大切にー

うん!

ところで、轆轤くんは恋人とかいないの?高校生でしょ?そろそろ色々あってもいいような気がするけど・・・

ーははっ、それは少々応えかねます。まぁなんですか。自分の人生を歩むだけですよー

作者らしい返答だね。そうね、自分の人生を歩む・・・か。これが私の人生・・・。

過酷なこともあるけれどそれでも耐えて、進んで、ようやく寛大を手に入れられるものね。

私は自分の人生を生きるよ。たとえ、文章の中だけの存在でも、彼のためにも、私は生きるよ。

ーたとえ文章の中の存在でも、時には一人歩きをすることがあります。ご立派な志だと思いますよー

生きることに意味がある。

生きるための意味なんてのは最初からなくて、生まれ落ちた者は、生きるための意味を見つけるために生きている。だから輪廻転生という言葉があるんだよ。生きている間に、どのくらい、どれだけ生まれ変われるのか。どれだけ変われるのか。どうすれば美しい自分色を調合できるのか。

生きることに意味がある。

私の中での考えがまとまったところで、彼から返答が返ってきた。その時には轆轤くんの姿は既になかった。

「明日来てくれるのかい?」

「やったぁ!」

私は微笑みながら胸を撫で下ろす。

外はさんざめく雷雨が地元を濡らしていく。雨と言う光景が好きな私は思わず見入ってしまう。

そして、恐らくずぶ濡れになりながら帰ってくるであろう鏡神に手招くのだった。


「鏡神、早く帰らないかな・・・」
























「瞬きせねば気が付けない」


 どうも、最近、「オーラ診断」で自分の性格を象徴するオーラの色が赤であると判明した

有機物の轆轤輪転です。

2021年もそろそろ終わりですね。一年とは速いものですね。そんな中、この私轆轤輪転、ある目標があります。

2022年までに今製作段階の残り2話をなんとか、なんとかッ!投稿したいのです!

これで一区切りつくんです!という訳で、精を出して頑張りと思います。

暖かい目で見守っていてください。

それではまた逢う日まで。


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