9話 二人の仲 その1
フリック王子殿下視点……。
なぜこの私が侯爵ごときの身分の奴に馬鹿にされないとけないのだ? 本当にどうなっている……?
私はパーティーの途中だったが、シャーリーを連れて会場の外へと出た。怒りの余り、これ以上、キングダム侯爵と話していると殴りかかりそうになったからだ。私とシャーリーの婚約を祝うパーティー会場で暴力沙汰は、流石にまずい……。
「フリック様、大丈夫ですか……?」
「シャーリー……お前は……」
強引に連れ出したからか、彼女はまだ手に持っていた食事を食べていた。捨てろとは言わんが、この状況で食べる度量を持っているとは……。私はシャーリーの馬鹿さ加減に頭が痛くなってしまう。
「シャーリー、私はちゃんと説明をしていたはずだな? 本日は重要なパーティーだから、しっかりと私をサポートするように、と」
「は、はい。そうでしたね……」
「それなのに何だ? あの体たらくは……エリザですら、全ての貴族の名前は完璧に覚えていたのだぞ?」
認めたくはないが、エリザはやはり凄かったようだ。このポンコツと比較すればな……真実の愛、などと言ってしまったことがこんなに恥ずかしく感じてしまうとはな。
「申し訳ありません。ですが、まだまだ慣れないことでしたし。これからは頑張ってまいりますので……」
「そんな言い訳は聞きたくないな。今回のパーティーでお前がポンコツだった事実は、今後も変わらないのだから」
「フリック様……」
私はシャーリーを冷たく突き放す。こうでもしなければ、この女は自覚を持たないだろうからな。一体、自分が誰の妻になるのかということを……。
-------------------------------
……エリザ視点。
「おやおや、フリック王子殿下は言い返せないと見るや、逃げ出してしまわれたようだ。これでは、今後の王位継承権争いなど、戦い抜けませんな」
フリック様とシャーリー嬢が去った後の会場で、ルービック・キングダム侯爵はちょっとした人物になっていた。以前から名家の当主で有名だったけれど、今は人気者になっているようだ。
周囲の貴族達が、軽く彼のことを噂している。
「キングダム侯爵、我が弟が無礼を働いたようだ。申し訳ないことをした」
「いえいえ、アルゼイ王子殿下。お気になさらないでくださいませ。少しばかり本音が出てしまいましたが、私の方こそ、王族の方に無礼を働いてしまいました」
「いや、フリックの奴には良いクスリになっただろう。奴は王子という立場を理解してからというもの、別の方向に成長してしまったようだからな」
「そうだったのですか?」
フリック様のサポートをしている内に、なんとなくそうなんだろうとは思っていたけれど。まさか、アルゼイ様から直接、そんな言葉を聞くとは思わなかった。とても説得力があるわね。
「ああ、それは事実だ。エリザ嬢との婚約を機に、君の仕事ぶりを間近で見て反省や成長をしてほしかったが……まったく変わっていないようだな、あれでは……」
アルゼイ様は溜息を吐いている。それを見て、私も思わず溜息を吐いてしまった。私の責任って意外と重要だったのね……アルゼイ様にも期待されていたんだ。そういえば、アルゼイ様は私のサポートや仕事ぶりを見ていた、と言っていたっけ。
「しかし、アルゼイ王子殿下。あなた様も隅に置けませんな……ふふふ、エリザ様の御心を奪おうと徐々に距離を縮めているように思えますぞ?」
「な、なに……? キングダム侯爵、いきなり何を言い出すのだ?」
「えっ、侯爵様? ど、どういう意味でしょうか……?」
私とアルゼイ様はほとんど同時に言葉を出していた。見事にハモっていたと言えるだろう。キングダム侯爵は今度は私達の関係性に言及し始めたわけだ。最初に挨拶をした時も言っていたけれど、今回はもっと掘り下げられそうね……。まあ、楽しそうだから良いんだけど。
よろしければブクマや評価などをいただけますと、嬉しく思います。




