7話 失態が見えてくる その2
「アルゼイ・サンマルト王子殿下、お久しぶりでございます。それからエリザ公爵令嬢、お会いするのは初めてでございましたかな?」
「ルービック・キングダム侯爵、お初にお目にかかります。エリザ・ガーランドと申します。以後、お見知りおきを……」
「これは、ご丁寧にありがとうございます」
アルゼイ様と私達は楽しく会話をしていたけれど、その間にも、アルゼイ様に挨拶に来る貴族は多かった。それも伯爵以上の上位貴族が多い。次期国王陛下という噂は伊達ではないということね。立ち位置的に、私も挨拶を交わすことになったのだけれど、フリック様の婚約者としてサポートをしていた時のことを思い出してしまっていた。
「ふふふふ、お二人はお似合いのカップル、という気が致しますな……」
「これはキングダム侯爵。危険な発言は止してくれ。エリザ嬢に叱られてしまうではないか……」
「おおっと、これは申し訳ない。お気になさらず、二人だけの会話をお楽しみください。ふふふふふ」
「まったく、最後まで勘違いをしていたな。冗談のつもりだったのかもしれないが……」
怪しく笑いながらルービック・キングダム様は去って行った。彼の瞳は妹のシリカに似ていた気がするわね。同じように私達のことをからかっていたのかしら? そういえば、シリカとマイケルの姿も見当たらないわ。
「シリカと執事長のマイケルも何処かへ行ったようです」
「ふむ、なるほど。もしかして、気を遣ってくれたのかもしれないな」
「えっ、アルゼイ様……それって……」
「いや、気にしないでくれ。何でもないよ」
アルゼイ様は少し焦っているように感じられた。詳しくは聞かないでおくけれど……。普通は二人きりになったことに照れている、と取れるけれどアルゼイ様に限ってそんなことはないわよね。
「それにしても……やはり流石だな、エリザ嬢」
「なんのことでございますか?」
「いや、先程までの私に挨拶に来た貴族達への振る舞いだよ。全ての人物のフルネームをしっかりと覚えており、その人物に合わせて微妙に態度を変えていた。貴族令嬢であそこまで出来る人物はなかなか居ないだろう」
「あ、そ、それは……ありがとうございます……」
アルゼイ様にしっかりと見られていたようね。品定めを受けていた……そんな気持ちにすらなってしまうわ。とても恥ずかしい……私は合格点だったのかしら?
「相手の身分を重視し、微妙に態度を変えることは重要なことでもある。簡単に出来ることではないがな」
「アルゼイ様、そのようにおっしゃっていただきまして、とても光栄でございます」
「いやなに……君があれくらい出来ることは予想済みだったがな」
「そうなのですか……?」
「まあな」
そういえば、フリック様の婚約者をしていた時から見られていたのだっけ。どうしよう……アルゼイ様には想像以上に見られているケースが多そうだわ。身体がどんどん熱くなるのを感じている……さっきよりも確実に熱い。少しだけクールダウンをする為に、外に出ようかしら……そんなことを考えていると「事件」は起こった。
「貴様……もう一度、言ってみろ!」
「何度でも言って差し上げましょう。あなたは、サンマルト王国の恥でしかない!」
パーティー会場の中央付近から言い争う声が聞こえて来たのだ。私とアルゼイ様はそちらの方向に目を向けるけれど……そこには、フリック様とルービック・キングダム侯爵の姿があった。どうやら、二人が喧嘩をしているみたいね。




