25話 現れたフリック その1
ボストン国王陛下との貴重な時間を過ごした私とアルゼイ様は、そのまま彼の部屋に戻っていた。王妃様に会うことは出来なかったけれど、非常に有意義な時間を送れたと思う。国王陛下の真意も聞けたし、私はスッキリとした気分になっていた。
「なんだか楽しそうだな。エリザ、父上との会話から色々なことを感じ取ったのではないのか?」
「は、はい。左様でございますね、ボストン国王陛下の真意が聞けたのは、とても有意義だったと思います」
「そうか、それは良かったよ」
アルゼイ様は私の顔を覗き込みながら、笑っていた。以前なら、こういう風に覗かれたりすると照れ臭かったけれど、今は普通に享受することが出来る。アルゼイ様と婚約したんだと実感することが出来ているからだ。彼の言葉一つで王国の最高権力者に会えるのだから、私の立場は随分と高くなった。
正直、分不相応な立場だと思うけれど、自分の責任は確実に全うしていきたいと思っている。
「それで、私が今後、気にした方が良いことなど……何か、問題点は見いだせたか? ああ、別に試しているなどといったことではないから、気楽に答えてもらって構わないぞ」
「は、はい……ええと……」
突然のアルゼイ様からの質問だ。気楽に答えて良いとは言われているけれど、適当に答えるなんてこと出来るわけないし……。私は深呼吸をして、自分の考えを話すことにした。
「ボストン国王陛下のお考えの中で、エラルド王国の王族が参加しなかった為に、こちらは3人の王子殿下を出したという部分は引っかかります」
「なるほど、具体的にはその部分か……」
「はい、アルゼイ様とジェイド様はまったく問題はないと思われますが……その……」
私はつい、第三王子殿下の名前を出すのを止めてしまった。目の前にいらっしゃるアルゼイ様は、彼のお兄様なんだから。でも、私の考えを捕捉するようにアルゼイ様が話し出す。
「フリックを舞踏会に出したのは、非常にマズかった……そういうことかな?」
「は、はい……左様でございます。まあ、国王陛下の考えとは別にフリック様の性格ならば、あの舞踏会に出ていたと思いますが」
「そうだな……エラルド王国の貴族達に奴を見られたのはマズかったと言えるだろう。まあ、今回が初めてというわけではないが。あんな失態は初めてだったな」
「ああ……あれは……」
シリカのおかげで冗談という流れになり難を逃れたけれど、本当に危なかったと思う。
「シリカ嬢はファインプレーだったな。それからキングダム侯爵についても……キングダム侯爵については微妙に感謝出来ないが、シリカ嬢には本当に感謝しているよ」
「勿体ないお言葉でございます、アルゼイ様」
なんだか、自分のことのように私は嬉しくなってしまった。家族を褒められるって嬉しいものね。と、そんな時、アルゼイ様の部屋がノックされる。
「ん? 誰だ……?」
「アルゼイ兄さま、いらっしゃいますか? 入っても宜しいでしょうか?」
「フリック……?」
驚いたことにフリック様がアルゼイ様の部屋にやって来たのだった。アルゼイ様の反応から見るに、特に予定されていたことではなさそうだ。一体、何かしら……?
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