24話 国王陛下に会う その2
「国王陛下、ガーランド公爵家の長女、エリザ・ガーランド参りました」
「うむ、面を上げてくれ」
「ありがとうございます」
私は国王陛下の私室に入り、彼に挨拶を済ませていた。簡易的な挨拶だけれど、やはり緊張するわね。いくら、ガーランド公爵家の娘とはいえ、国王陛下と比較すれば権力なんてあってないようなものなのだから。王妃様の姿はないようだ。どこかへ出かけられているのかしら。
「本日の用件は、先に届いてはいるが、改めて聞かせてもらえるか?」
ボストン・サンマルト国王陛下への用件は事前に、アルゼイ様の側近を通して話が向かっている。そうでないと、いきなり国王陛下に会うことになるし、失礼に当たってしまうからね。それでも、敢えて私達に内容を言わせようとするのは、それなりに重大な事柄だと思って良いのかしら?
「はい、畏まりました父上。ご用件と致しましては、先日行われた、舞踏会への不参加の真相でございます」
「それについては議会の判断が出たからだと言っただろう? お前にも伝わっているはずだが……」
「伝わってはおりましたが、本当にそれが真相なのか、という疑問が残りまして」
「ほう……なぜ、そう思っているのだ?」
ボストン国王陛下の顔色が明らかに変化した。何かを仕掛けてきそうなそんな表情だと言える。フリック様のサポートをしていた時にも、こういった表情に変わった貴族は何度も見て来たから……。
と、いうことは、やはり真相が隠れていると踏んだ方が良さそうね。
「エリザ、何か言いたいことがあれば言ってみるか?」
「アルゼイ様、私が発言をしても宜しいのですか……?」
「当然だ、父上はお前の同伴も許可しているのだからな。それに、エリザの発言は今後の役に立つ可能性が高い。そうですよね、父上?」
アルゼイ様に促される国王陛下だったけれど、口元は笑っていた。これは……発言を許可するという態度でいいのかしら?
「もちろんだ、エリザ嬢。何か言いたいことがあればどうぞ」
「恐れながら申し上げます。国王陛下は、議会での決定があったとしても、あの舞踏会に出席されないとはどうしても思えないのです。あの舞踏会の重要性は国王陛下が一番よく分かっていらっしゃると思いますので……」
「ふむ……つまり?」
「はい。まず、普通に考えて議会が国王陛下に舞踏会へ出席するなという決定を出せるとは思えません。いくら、最高の意思決定機関であり、罪人を裁く権利が与えられているとはいえ……。議会での決定と言う話自体が嘘なのではないかと思っております」
私の考えが甘い可能性は十分に考えられた。しかし、議会でそのような決定が出されたのであれば、非公式で決めることは考えられない。そんなことをすれば、罪人を秘密裏に葬ることが出来たりと、王権への不信につながってしまうから。
そうなると、答えは1つしかない。別の理由で国王陛下は出席しなかった、ということだ。
「流石はエリザ嬢といったところか……なかなかの洞察力をお持ちのようだ。確かに、議会での決定というのは方便になる。私が出席しなかったのは別の理由さ」
「そ、それは一体、どういうものなのですか……?」
エラルド王国との仲を進展させるには、国王陛下が直接挨拶をなさることが必須なはず。でも、それは行われなかった。そこにはどんな大きな理由があるのだろうか? 私の心臓は自然と高鳴っていた。
「エラルド王国からの使者は最高でもファブナー・エッセル公爵だったと聞いている。向こう側の国王陛下はおろか、王族が一人も参加していないのだ」
「それは確かに……」
思い返してみれば、相手国の使者に王族は居なかったように思える。エッセル公爵も源流を辿れば王家の一員だったようだけれど、今は完全に切り離されているらしいし。と、いうことは……。
「こちらは誠意として、3人の王子を参加させた。それ以上の譲歩はまだ、するわけにはいかんのだ。今後、王位継承争いが始まることを考えれば、猶更、こちらに付け入る隙を見せるわけにはいかない」
「国王陛下……」
そういうことだったのね。それならば、確かに簡単に出席をするわけにはいかないのかもしれない。ただ、フリック様という隙は既に見られてしまっているけれど。そう言えば、キングダム侯爵にもその隙を突かれているようだし、なかなか厳しい事態になるかもしれないわね。
「ですが、フリック王子殿下はキングダム侯爵に利用される可能性が……」
「確かにそうだな。だが、私は3人の息子たちを信じている。今後、彼らが隣国のエラルド王国との関係性の中心になっていくのだからな。そういう意味では、こちらは3人の王子を出席させた。エラルド王国は、王族を一人も出していない。そこに差が生まれて来るだろう」
なるほど……長い目で見れば、今回の舞踏会の配役は間違ってはいなかったということね。まさに先見の明と言えるのかしら。ボストン国王陛下はずっと先のことまでを見通しているようだった。
やっぱり、国王陛下という肩書きは凄いわ。私なんてただの小娘でしかないことを痛感させられてしまうわね。




