17話 集まった王子達 その1
「エリザ・ガーランドと申します。以後お見知りおきを……」
「エラルド王国伯爵、フィッシャー・ホライズンと申します。よろしくお願いいたします」
「ホライズン伯爵、存じております。確か、管理されている地方の山岳開拓をされているとか……」
「よく知っておられますな。その通りでございます。あの、山岳地帯はまだ眠っている鉱脈があり……」
フリック様の放心状態は気がかりではあったけれど、私はアルゼイ様と共に、隣国の貴族の方々とのコミュニケーションを取っていた。アルゼイ様からは、それほど固くならないようにと言われていたので、言葉遣いなどは崩して応対する。
ホライズン伯爵を始め、隣国からの参加者は多かった。基本的にはアルゼイ様のサポートとして動いているけれど、私個人に興味を持たれているのか、私に対する挨拶も多い。まあ、アルゼイ様が私を婚約者として紹介したのだから、当然なんだけれど。
これだけの他国の方々との接触は久しぶりだ。それだけに緊張感はどうしても出てしまっていた。全員が、ファブナー・エッセル公爵のように気さくなお方ではないからね。礼儀を重んじる度合いは、その人によって大分違ってくるし。なかなかに難しいところだ。
「アルゼイ・サンマルト王子殿下、お久しぶりでございますな!」
「おお、これはタキネス侯爵ではありませんか。お久しぶりですね」
早速、新しい貴族の方が現れた。さてと、しっかりと挨拶から始めて行かないとね──。
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「エリザ、疲れていないか?」
「いえ、私は大丈夫です、アルゼイ様」
「そうか? あまり無理をしないでくれよ? 婚約者に無理をさせるなんて、王族精神を疑われるからな」
「あはは……」
フリック様への皮肉が含まれているようだった。アルゼイ様が私を心配してくれている。連続で何十人もの貴族と挨拶をするのは、精神的に削られる作業だった。しかも今回は、隣国のエラルド王国の貴族の方との挨拶が中心なだけに、余計に疲れてしまう。まあ、それは仕方のないことではあるけれど。
それにしても……先程から、私やアルゼイ様への視線が気になってしまう。いえ、アルゼイ様というよりは、私に視線が集中していない? おそらく、気のせいではないはず。
「噂には聞いておりましたが……流石はアルゼイ様と婚約されているだけのことはあるな」
「本当ですね、まだお若いでしょうに、手際の良さと言えばいいのかしら? 素晴らしいわ」
「舞踏会会場での基本が備わっている印象ですな……いやはや、サポート能力とはよく言ったものです」
なんだか、小さな声ではあるけれど、私のことを言っているような……?
「姉さん、凄いじゃない」
「シリカ……どういうことよ?」
「分かってるんでしょ? 自分のサポート能力の高さとか、コミュニケーション能力の高さが秀逸だってこと。他国の方々はそれについて賞賛してるのよ」
「な、なるほど……あの視線はそういうことだったのね」
素直に嬉しいと思えた。隣国のエラルド王国の貴族にも認められれば最早、お世辞ではないと考えて大丈夫だろうし。正確に言えば、自分のサポート能力等の高さには自信はあったけれど、フリック様との婚約破棄の一件で、自信を失くしていたってところね。
でも今回の舞踏会で、それを実感できた。こんなにも実感できたのはおそらく初めてだわ。
「あとは……フリック王子殿下がどう出るか、だけ心配していれば大丈夫だろうけど」
「そうね……」
シリカもちゃんと気付いている。フリック様は先程から、シャーリー嬢とは話しているみたいだけれど、特に何もしていない。エラルド王国の貴族が近づいても、無視を決め込んでいる状態だ。あれでは心象が悪くなりそうだけれど。
「私の大笑いが効いているのかしら? フリック王子殿下ってメンタル面、弱すぎない? せっかく、私がフォローしてあげたんだから、上手く利用して欲しかったのに……あれじゃあ、次期国王様なんて絶対に無理ね」
シリカは容赦がなかった。でも確かに、現在のフリック様が国王陛下になることは不可能だと思う。私の婚約者であるアルゼイ様が居るし。そして……第二王子殿下のジェイド様もいらっしゃるのだから。
「アルゼイ様とジェイド様が居る限りは、確かに難しいわね」
「姉さん、噂をすればっていうやつよ。第二王子殿下が来たわ」
シリカに促され、私は彼女と同じ方向に視線を向ける。舞踏会会場の入り口が大きく開かれ、ジェイド・サンマルト第二王子殿下が姿を現した。周囲の貴族達の顔色が明らかに変化していた。
この会場に王位継承権1位、2位、3位の全員が集まったのだから当然かもしれない。殺伐とした雰囲気にならないと良いけれど……大丈夫かしら。
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