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16話 フリック王子殿下の変化 その2

 自信満々で言っているフリック王子殿下……シャーリー嬢も仁王立ちで胸を前に出してる感じだし。二人とも勉強してきたことを披露したくて必死なようだった。対面しているキングダム侯爵の蔑む瞳にも特に気付いていないようだ。


 周囲の貴族達も戸惑っているように見える。それもそのはずだ……フリック様やシャーリー嬢が自慢している、出席している貴族、王族のフルネームを覚えたり、その貴族が普段はどういう土地の管理をしているか等を学ぶのは、子供でも出来るというか。


 その辺りの知識の学習と復習は、舞踏会に臨む上での前提条件みたいなものだ。特に、王子殿下クラスであれば絶対に学んでいないといけない事柄と言えるだろう。隣国のエラルド王国にも舐められる隙を生み出すみたいなものだし……。


 シリカの婚約者(予定)のファブナー・エッセル公爵は、今回のことくらいでは何も思わないかもしれないけれど、他の貴族は信用出来るかまだ分からない。ここは、何度もフリック様の危機を救ってきた私が出る場面ね。


 よ、よし……と、私が前に出ようとした時、その足を止めた人物が居た。妹のシリカだ。軽く私に視線を向けた後に、彼女は……。


「ぶふっ! あはははははははははっ!!!」



 大笑いをしたのだった。屋敷で私に対して大笑いをした時とは、比較にならない程の大きな声で。



「な、なんだ……?」


「大笑い……?」



 フリック様に向けられていた視線は、一斉に妹のシリカに向けられた。もう、びっくりするくらい高速で皆が見ている位置を変えたのだ。それくらい、シリカは大笑いをしていた。



「ちょ、ちょっとシリカ……!?」


「だって、だって……! こんな重要な舞踏会場で、とても面白い冗談をおっしゃるんですもの……! フリック王子殿下は、流石でございますわね!!」



「な、なに……? 冗談だと……?」



 シリカのまさかの発言にフリック様自身が戸惑っているようだった。



「なるほど、冗談でございましたか! 流石はフリック王子殿下でございますな! まあ、周囲の貴族達の名前や仕事などを記憶するなど、当たり前のことでございますので、おかしいとは思っておりましたが。いやはや、これは一本取られましたな! まさか、この舞踏会で大胆不敵な冗談をおっしゃるとは……! 感服いたしました!」



 シリカの想いをいち早く察し、見事に繋げたのはなんとキングダム侯爵だった。素晴らしい連携プレイと言えるだろうか? シリカも両国間の架け橋としての役割をしっかりとこなしたようだった。



「じょ、冗談……だと? いや、それよりも……私のしてきたことは、皆が出来て当たり前なのか……?」


「フリック様……」



 フリック様はどうやら放心状態になっているようだ。周囲の貴族達はそれとは逆に、非常に盛り上がっていた。



「流石はサンマルト王国の第三王子殿下といったところでしょうかね! いやはや、なかなか面白いイベントをお考えなさる。サンマルト王国の将来は、ユーモアさも含めて安泰になりそうですな!」


「私はフリック様を応援しようかしら……なんてね」


「フリック王子殿下! とても盛り上がっていますよ!!」



 両国間の貴族達は好き勝手騒ぎ始めていた。上手く纏まったと言っていいのかしら?



「ねえ、シリカ……どうして、私を止めたの?」


「姉さまが解決したら、全然意味ないじゃない。あくまでも、フリック王子殿下には屈辱を与えないと駄目なんだから。一応は上手くいったみたいだけど、まだ分からないわね」


「シリカ……あなたってやっぱり、凄いわね……」



 確かに私が解決したら意味がない。それに私はアルゼイ様の婚約者であって、フリック様とは何の関係もないんだから。いつもの癖が出そうになっていたのを、彼女は止めてくれたのね。


「いやはや、怖いな~~シリカちゃんは。場全体としては、冗談の空気に包まれたけど、フリック王子殿下とその婚約者にはしっかりと、ダメージが入ってるで」


「そりゃあ、私の大切な姉さんを弄んだ相手ですので。しっかりと利用させてもらいますよ」



 シリカの言い分が少しだけ怖かった……。


「フリックの奴、今はどんな思いを持っているのか」


「そうですね……放心状態のようですが、何か無茶なことをしないか心配ではあります」



 普通はこんな公共の場で何かをするなんて考えられないけれど、フリック様には当て嵌まらない気がした。それと、もう一人……私にとって、怖い人物が居る。それは、フリック様と対面しているキングダム侯爵だ。先ほどの状況で、シリカの言動に瞬時に合わせた機転の早さ。あれほどの機転の早さは、私でも不可能だ。でも、彼は平然とやってのけている。


「フリック王子殿下、今後の王位継承争いでは期待していますよ? やはり、サンマルト王国にはユーモアさも非常に大切でしょうからね」


「……」


「フリック様、大丈夫ですか……?」



 明るい口調でフリック様に話しかけるキングダム侯爵と、無言のまま動かないフリック様。まさに陰と陽、光と影の関係になっているようだった。シャーリー嬢の言葉も届いていない。


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