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ミスティがくれた絵本数冊と、そしてシーアの部屋にあるたくさんの歴史書。

村長が好意で貸してくれた書斎の本をとにかく読む。

朝早く起き出すシーア達と共に家畜の世話をしながら、空き時間を書斎に籠って過ごすようになった。

シーアも興味があると言って、私達はとにかく色々な本を読み漁る事にした。

世界は広く大陸は更に複雑なのだと言うミスティの言葉通り、この世界はとても広大であると分かった。


私の居た世界は広かったけれど電気と化学が発達していたおかげでとても便利に暮らせていた。

現在までの携帯や飛行機など、普通に使っていたのが申し訳なくなるくらいに。

それが当たり前だった世界はここには無い。

この世界の地図を見ると、王都を中心に放射状に伸びた線により地区分けされている様だが、どう見ても「果て」が無いように見える。


地球は丸く、例えば日本からアメリカ、ロシア、フランス、など、主要国家に向かうにも戻って来るにも果てがあった。

言わばどこからどこまでがその国でどうのって話しが出来たけれど、この世界は、この場所はそれが無いようだ。


とても広いと言う事は分かるが、それ以上に「先の見えない」場所なのだと分かった。

シーアに問い掛けても、それはそう言うものでしょう?との事なので共通認識なのかもしれない。


そうなると私もこの世界の常識を知っていかなくては生きて行くにも不便だなと認識を改めた。



まず私の使える魔法はとても珍しい上に扱えるのは権力のある国やそれに準ずる何かしらの職業に就いた人間だけ。

全容は不用意には明かせず、調べるなり知識を得ようとするのなら王都へ向かう事が1番だろうと言う結論に至った。

もうひとつ気になったが、それはシーアに問い掛ける訳にも行かずに胸にしまっておく。

ミスティがまた3週間後にやって来ると言っていたのでその時に聞けば良いだろう。



絵本などによく描かれる精霊と言う存在は、残念ながら感じ取る事は出来ないままだ。

姿も見えなければ声も聞こえない。

私の魔法が発動している間も同じで、少しだけ期待した分落胆した。



「はぁ、またダメ」


「ふふっ、アスラったら」



村の中にある牧草を丸めようとするものの、私の力が圧倒的に足りずに牧草が戻って来る。

またか!またダメか!このやろうと奮起してぐっと押すもビクともしない。



「ダメよ力でなんとかしようだなんて、こうするの」



シーアは持っていた槍のような物を器用に使ってバランスを取り、牧草をクルクルと巻いて行く。

時折指すようにしながらにこりと笑顔を浮かべると「ほらね」と笑う。



「それが難しいんだよおお」


「大丈夫よ、私だって初めはアスラよりも下手だったもの。

毎日毎日触れていれば慣れるわ!」



そう言って笑うシーアの言葉に、何事も同じ事かと理解した。

そりゃそうだなと私はもう一度挑戦しながら、今のこの瞬間がいつまで続くのだろうかとふと考える。



私は余所者で、だけど親切にしてくれる彼女達に恩返しをしたいと思っている。

力は無く器用でも無い私に彼女達はとても親切で優しくて暖かい。

こんな怪しい私を旅人だと言って面倒を見てくれる人達に恩を返したい。

だけれど……魔法や世界に対しての興味が顔を出している事に抗えないでいる自分。

目新しい情報や知識を集める事が楽しくて仕方無い。

魔法や精霊の存在は私が今体感しているものであり、この場所では現実なのだ。

少しだけれど、水と炎を操る事が出来た。

それに、属性は分からなかいけれど木の枝を強化してナイフの様に扱う事も出来る。

私の居た世界へ帰りたいかと言われるとあまりそう言う気分になれないのは、おそらくこの場所への興味が先行しているからに違いない。

僅かであれ魔法の片鱗を見てしまったのだから後に引ける様な性格でない事は自分自身がよく知っている。



私は最強でもチートでも無い。

ただ異世界にやって来た迷子に過ぎない。



「そんな私がシーア達に何が出来るだろうか」


「アスラ?何か言った?」



きょとんとキャラメル色の瞳を丸くさせたシーア二笑って首を振って、私はもう一度牧草に向き合うのだった。

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