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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

近所のたからもの

作者: 甘盛かふぇいん

ペットボトルが外に置かれている家に、剃髪に刺青の眉毛のないお兄さんが住んでいる。お兄さんは寒い日もサンダルで出歩いており、近所からはあんまり怖いビジュアルなもんでビビられていた。

僕はもじゃもじゃの天パでお兄さんとはうってかわってもっさりしている。だからかとても惹かれる・・・

ある日のお兄さんは家の周りを箒ではいており、僕も箒を持ってきて参加することでコンタクトを図る。

「坊主・・・掃除手伝ってくれるのか」

めちゃめちゃ首を縦に振り黙々と作業を始めてしまいあまり話せなかった。彼もあまり喋る方ではなく無言で楓や銀杏の葉を集めていた。僕は勇気をふりしぼり、

「えっとあの、前からかっこいい頭だなって、思ってました・・・」

鳩が豆鉄砲くらうみたいな顔をしたあと彼は拍子抜けしたように笑う。いつものいかつい出で立ちでは想像出来ないえくぼが深く刻まれたすごく可愛い笑顔だった。

「坊主もやりたいのか?」

反射的に首を縦に振ってしまい掃き掃除の後に彼の家に招かれてしまった。遺書が必要だったかも・・・

ケープを首に巻かれ髪に霧吹きされる。冷たい。

「えっあっ刺青はちょっと」

「そりゃそうだろ・・・」

バリカンを準備しながらお兄さんは笑った。普段仏頂面のお兄さんが笑うと僕もつられてニヤけるが、不安からか汗が止まらない。

「長さは」

「えっと・・・任せます」

ハサミが荒く入る。とても深い森林を切り込まれてるようだ。太い傷んだ髪が辺りに散らばる。お兄さんは気にせずハサミを入れ続ける。耳が切れそうで怖いが常にもう片方の手で耳を包み込んでくれてあったかい。どくどくとお兄さんの血液が流れる音が聞こえる。

「あの・・・普段自分で整えてるんですか」

お兄さんは頭を擦りながらあぁと返事した。いつからその頭に、刺青は痛かったのかと質問に答えてくれたのでたくさん質問したくなったが、目の前に鏡がない状態で切られてる緊張感からか口が乾く。

あらかた切り終わり、チリチリのベリーショートになった僕におでこの真ん中からバリカンを当てる。スーッとアタッチメントの冷たさが伝わる。僕は坊主にしたことがなく、頭の以上な軽さにドギマギする。お兄さんはタバコに火をつけ鼻歌交じりに僕の頭を刈っていく。そういやなんで髪を切ると刈ると2つ言い方があるんだろう。

足元にトイプードルの欠片のような、僕の一部だったものが転がる。生え際ともみあげ、うなじを整えられてケープが外れる。

「おい、風呂」

お風呂を沸かしといてくれたらしい。お兄さんちのお風呂は狭いが掃除が行き届いており不快感はなかった。頭を洗うも石鹸しか置かれてなく僕は初めて石鹸で頭を洗った。そこで初めて頭に触れたが、紙やすりのような、髭剃り後のような触り心地でびっくりした。鏡が無いので手の感覚だけを頼りに自分のシルエットを確認する。お湯が頭から滑り落ちただけで肩には冷たさがある。髪も泡が立たず、細かい粒が飛び散るだけでなにもかも初めてで新鮮だった。

風呂から上がるとさんまを焼くいい匂いがして台所を覗くとお兄さんがピンクのエプロンを羽織って佇んでいた。

「坊主・・・丸坊主か」

おそるおそる近付き一緒にグリルを覗く。頭がゴチンと当たり顔を見合わせる。お兄さんが僕の頭をパンの生地みたくもみくちゃにする。はらひれほろはれ・・・

「ちゃんと家に連絡しろよ?」

憧れのお兄さんと近い頭で一緒にさんまをつつきながら、家族に会ったら何言われるのかなと不安に思いつつも、味噌汁に写った僕の顔はにやけてた。



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