巨人号の事件40
「U.F.O?宇宙人?」
甥の興奮に、
叔母は冷ややか声で
「そんなものはこの世にないわ。あれはヘリコプターの光よ。近づいてるわね」
たしかにバリバリというローター音が大きくなってきた。着船するらしい。サーチ・ライトをともしながら、船員たちが動き回っている。
「どうしたの?急な病気かな?」
船内で対応できない急病人が出たときは、ヘリを呼ぶと聞いていた。
(まさか鬼利江さんに異変が?)
心配になるが、
叔母は
「いえ、あれはドクター・ヘリに見えないわ。装甲が厚くて……まるで軍事用。一般人が乗るものではない」
言われてみれば、たしかにゴツい機体だ。それがヘリ・ポートに着く。
出迎えるのは、崩子に十鬼太郎、(船長を除く)上級船員らだ。
斑玉家のトップである鬼利江は体調悪く、船員側のトップである船長はさっきのショウで海賊の格好をして遊んでいた。そりゃ、まわりのものが忙しく動かねばならないのだろう。
(クルーズの最終夜に、わざわざヘリを使って訪れるなんてどんな人だろう?)
はなれたところから翔之介らが興味ぶかくうかがっていると、
まずヘリから出てきたのは複数の、身体がこれもゴツい黒服の男たちだった。そのあと、彼らに守り囲まれるように出てきたのは、白髪の老年男性だった。常の魔道家とは異なるが、他を圧する雰囲気を持っている。
そんな迫力ある男性を視認して
「……まあ、あれはガンクルージョね。魔比亜のボスよ」
魔美子のつぶやきに、
翔之介は
「マフィア?」
声が上ずる。
(だって、それって『ハンシャ』とかいう人でしょ。つきあったら、あぶないんじゃない?)
怖じる若当主に、
叔母は
「いえ、魔比亜。もともとは、いわれのある魔道具や魔呪文を専門としてあつかっていた魔商の一組織よ。今では魔道具のみならず、希少な魔動物から個人の魔能までなんでもあつかう」
「こわくないの?」
「どうかしら?たしかにマフィアのもとであると言う説もあるわね。民明書房だったかしら?……まあ、あまり関わりたくはない組織ではあるわね」
少なくとも、敵対して良い相手ではないというのはわかった。
「ふだんは姿を見せない魔比亜のボスが自ら出っ張ってきたということは、やはり今晩のオークションには、かなりのものが出品されるということでしょうね」
魔美子は一団をさらに観察して
「ガンクルージョの警護を指揮しているのは『拳銃使』こと、ストラノビッチ。有能なことで知られている世話役よ」
物騒なふたつ名だ。
それにしてもねえさまって、よくそんなおそろしげな情報をたくさん知っているなぁ。甥が感心すると
「……禍王家にいるときは、きれいでない仕事もさせられたからね。知りたくないことを知ったりしたのよ」
苦笑むと
「なんにしろ、魔比亜がからむ商品は今のあたしたちに関係ないわ。危ないし、とんでもなく高価だもの。気にせず部屋に帰って、とっとと寝ましょう」
言うと、声をひそめて
「……今日はあなたをゆっくり抱きしめながら眠りたいわ。ここのところ、ちっともあなたをぎゅっとしてないもの」
ぼくは抱き枕じゃないよ。




