巨人号の事件28
昼食は
「せっかくだから、ビュッフェに行ってみましょう」
16階の大食堂に向かった。ここは一般客も入ることができるため席数が多い。バイキング方式自体、少年は初体験だ。ずらりとならんだ様々な料理が取り放題・食べ放題ということが、翔之介には信じられなかった。
初めに
「一番良くないのは、取ったはいいけど食べきることもできず無駄に残すことよ。それはみっともない。あとは主品と副品をバランスよく、栄養を考えなさい」
と、叔母に釘をさされた。
少年としては、食べたいものを目に映り次第あれもこれも取る気だったのだが、そう言われては少し考える。自分が食べたい茶色のものばかりでなく(べつに欲しくはないが)緑色や赤色のものも入れないといけない。
しかし欲望には抗えず、ピザとカレーに唐揚げをつけるという強欲を発揮してしまった。
いっぽう叔母はモッツアレラ・チーズと黒パン、それにフルーツ&サラダにとどめている。
「旅行中に、食事で体調を崩すのがいちばんおそろしいのよ」
冷ややかな視線で自分の皿と甥の皿を見比べたが
「……まあ、あなたは良いでしょう。育ち盛りであることを考慮しないとね」
言いながら、レタスにフォークを突き立てていた。
「昨日の展示会はどうでしたか?」
口を唐揚げとカレーでいっぱいにしながら問うと
「口にものを入れたまましゃべらない」
注意した上で
「……目当てのものはなかったわね。ただ、事前に渡された出品予定リストがあてにならないこともわかった。どんな品が出るかは、その場にならないとわからない」
「じゃあウチからの流出品が出るかどうかは……」
「毎日、参加しないとわからないわね」
叔母はため息をつくと、リストを見て
「それにしても、もう少し情報を公開してほしいわね。ただ単に、いわれのある魔道具や秘蔵の魔呪文、希少な魔動物に個別魔能……と書かれてもね」
「個別魔能?それってなんですか?」
甥の問いに
「魔道者が個別に持つ固有能力ね。たとえば、禍王家が持つ変身能力などよ」
ああ、蛇になったり虎になったり……あれはたしかにすごかった。禍王家の蔵で見た化身同士の戦いは、怪獣映画を観たような強烈な印象を少年に残している。でも、そんな能力を売ったりできるの?
「身体に刻まれた呪的回路を分離できればね。むずかしいし、かなりの苦痛を伴う施術だけど……」
うへぇ、痛いのか。そんな思いまでしてせっかく持っている力を失うなんて、気持ちがよくわからないな。疑問に、
魔美子は
「禍王のような特殊な家は別にして、一般に強力すぎる魔能や魔道具というものは、保持すること自体にかなりのリスクが伴うのよ。身体や精神に悪影響をおよぼすことも多い。そうなると、当人にとっては『能力』ではなくただの『呪い』よ。とっとと手放したい。
そして、ある者には障碍でしかない能力や道具が、他の魔道者には喉から手が出るほど欲しいものだったりするから。そのあいだに需要と供給が発生して、このような取引が成り立つの」




