巨人号の事件24
「……ほんにお美しい。しかも決して人を誑す美ではない。あくまで清く高潔なもの。あなたの父上が持っておられたという純真な美と同じものでしょう」
そんなお見合いごっこしていると、鬼利江はにわかに目を見開いて
「……ああ!そうだったの?なんということ!」
頭を抱える。
「なんと、おそろしい!おぞましい陰謀……いけない!こうなっては早く対応をしないと!……ああっ!のこされた時間はもう少ない!」
顔色悪く、うめく。
「だいじょうぶですか?」
少年は心配して声をかける。自分はなにか悪いことをしてしまったのだろうか?いたわるように問う少年に、
婦人は首を振って
「……いえ。それどころか、あなたはわたしをたすけてくださったのです、陽城さま。多大な恩義をいただきました……このお礼報じは必ずいたします。このたびは、まことにありがとうございました。それと、あたしがあなたに会いに来たことはしばらくだれにも……あなたの叔母さまに対しても、だまっていただけると助かります」
そう言われても、こまっちゃうなぁ。ぼくは、叔母にかくしごとなんてできないですよ。
「この件がすめば、あたくしから叔母さまにはご説明いたします。ひらにお願い申しあげます」
おとなに頭を下げられたら、しかたないなぁ。
「……じゃあ、とりあえず黙っておきますけど、期待はしないでくださいよ。叔母にいつまでもかくしとおすなんて無理だから」
「それで十分でございます。よろしくお願いいたします」
斑玉家の当主は腰低く部屋を出ていった。
「――へんなの」
安易に約束してしまったが
(魔美子ねえさまにかくしごとすると考えるだけで、気が重いなあ)
このままひとりでじっと待っていたら気が滅入るばかり……と感じた少年は
(……気晴らしをしよう)
部屋を出た。
(せっかく豪華客船の旅に来たのだから、探検しないと)
いつの時代だって、こどもに必要なのは「遊びの時間」だ。
巨人号のデッキ(フロア)は全部で19階あり、そのうち一般客室デッキは8階から14階に当てられている。翔之介が宿泊しているのは、その上の15階。15〜17階は、招待客に用意された特別客室エリアだ。18、19階は、主催である斑玉家のプライベート・エリアとなっていて、関係者以外かってに入ることができない。
翔之介は、魔美子に招待客エリア(15〜17階)内であれば(すこしは)出歩いて良いと言われている。
乗船時に渡された旅のしおり(電子タブレット版)を見ると、15階の舳先にはカジノやバーがあるようだが、そんなところにこどもが行ってもしかたない。
(行くとしたら、16階にあるキッズ・エリアや、そのそばのサン・デッキ、スカイ・ラウンジだな)
ほんとうは、5階から7階まで豪華なシャンデリアやスワロフスキーを散りばめた吹き抜けの遊歩道を見て回りたいところだが
(それは、明日おねえさまといっしょに見に行こう)
タブレットを見ながら、少年が階段を上がろうとすると……




