巨人号の事件23
(うっ……それは、どうもたいへんそうだ)
パーティのあと、翔之介は魔美子に聞かされていた
「ふつうに考えて、異一郎翁は当主の座を崩子さんに継がせたかったでしょうね。魔の力がない鬼利江さんが当主になっても、家に将来が無いもの。おそらく翁は後盾となる蠏呪家との縁談を成立させた上で、崩子さんへの当主移譲を考えていたと思う。ただ、その話がまとまる前に亡くなってしまった。純粋に親等の近さで、鬼利江さんが当主になったのでしょう。
それにしても、よくこの事態を十鬼太郎さんは受け入れたわね。将来の斑玉家当主が相手だから婚約したのでしょうに。ひょっとして、翁から直に当主の座が崩子さんに移らないことになにか意味があるのかしら?」
よその家の事情をかってにあれこれ推測して口にするのは、魔美子のわるい癖だ。実は、このわかい叔母は「家政婦は見た」や「ダウントン・アビー」など、家庭内でもめごとが起こるドラマが大好物なのだ。
とにかく、ややこしそうな他魔道家の内情に関わるのは、小学生には分が過ぎる……。
鬼利江は、陽城家当主のあからさまにこまった表情に
「……いえ、相談と言ってもなにも込み入ったことはありません。ただ、あなたに見ていただきたいものがあって、それであつかましくも参ったのです」
気の良い少年は、戸惑いながらも
「見るだけなら……」
つい安易に返答してしまう。
鬼利江はほほえみながら
「あなたはおやさしいのですね、陽城さま。そのお顔の美しさにふさわしいお心映えですわ」
納得したように
「……なにもおっしゃらず、これをごらんいただきたいのです」
そう言って机に置いた布包み。ほどくと、そこにあったのは……
「箱?」
小さな木箱だった。しかし、この凶々(まがまが)しさはなんだろう。いやな感じしかしない。
「見るだけで良いですか?」
なんとなく、さわるのもいやだと感じてたずねると
「ええ。よくごらんになってくださいまし。それだけでなにか……」
言われてじっと見つめるが、なにもわからない。
中年女性は、小箱とそれを見つめる少年の顔を交互に見返していたが、しばらくすると
「……やはり、だめでしょうか?」
思惑がはずれた顔で問う。
(……だから、いったいなにが?なにもわからないよ)
たずねかえしたいが、鬼利江の気落ちした表情に、それすらできない。
彼女はしばらく悄然としていたが、顔を上げると
「こうなったら、せめて美しいあなたの顔を賞翫させていただいて、厄を払いたいですわ……」
翔之介の顔をじっくりとうちながめる。
少年は照れくさいが、そんなに目を外してばかりは失礼かと、時折女性の目をのぞく。




