巨人号の事件19
「……ずいぶん個性的な方ね」
魔美子のことばに、
崩子もうなずいて
「ええ、死羅皮権死郎さま。あたしもまったく知らないかたなのだけど、魔商名簿に入っていたのよ。異一郎大叔父と付き合いでもあったのかしら?」
「『ましょう』とはなんですか?」
翔之介の質問に、
魔美子は
「読んで字のごとく魔の商人。魔道に関わるものならなんでもあつかう業者よ」
へえ、なんにでも商売ってあるんだな。少年の素朴な感心顔に、
崩子はほほえんで
「斑玉家は、魔商との交流を大切にして大きくなった魔道家ですのよ。そもそもこの障玉會自体、閉鎖的な魔道界に公正な商取引の場を与えたいという大叔父の意志からはじまった集いですからね。商規模の大小に関わらず、魔商のみなさんが多くお集まりになる。展示即売会やオークションも開かれて、商談・取引が活発に行われますわ」
翔之介が叔母に聞いていたとおりだ。
魔美子は
「先程コンテナが搬入されていたけど、あれもその商品ね」
やはり、叔母もあのみょうな積荷の気配に気づいていたか。
崩子はわらって
「あなたにはわかってしまうわね。ええ『あれ』は最終日の特別オークションの目玉の品よ」
「『なまもの』のようだけど、そのあたりの警戒もなさっておられるんでしょうね」
「ええ、もちろん。お客さまに迷惑をかけるような事態にはならないわ。そのあたりの保護管理には万全を期しています……よかったら、あなたがたも参加なさってね」
誘いを
「……現状、ウチが特に求めている品は無いわね」
叔母はせいいっぱい見栄をはって断った。欲しくとも、陽城家に余分なものを購入する資金などない。
魔美子は(話を変えるため)会場を見渡して
「……ほんとうに、いろんな業種の方が乗船なさっておられる。甥の見聞を広めることが出来る良い機会をお与えくださいまして、まことにありがたいお招きですわ」
再度、礼を言う。
たしかに翔之介が見ても、いろんな国からのいろんなタイプの魔道者が乗船している。
「めずらしい。あれはラビね」
ラビ?
「ユダヤ教の祭司よ。歴史上、優れた魔道者をいくたりも輩出している」
黒帽・黒服に長いあごひげの謹厳そうな老人が興味ぶかげにヒトガタを見ている。酒をことわり、水を飲んでいた。映画に出てくる老魔法使いみたいだ。
「あのかたがヒトガタに興味を示されるのは当然ね。なんといっても、ゴレムを作った元祖はあの方々ですもの」
よくわからないが、すごい人らしい。




