巨人号の事件12
拍手に迎えられて登壇した斑玉崩子は(船橋にいたときとは異なる)ドレスすがたで、優美に頭を下げると
「みなさま、ごきげんうるわしゅう。斑玉崩子でございます。このたび叔母・鬼利江の斑玉家当主就任に際しまして、斯界に不案内な叔母の補佐をたまわりました。もとより若輩者のあたくしには荷の重い責務ではございますが、隣におります婚約者の十鬼太郎さまの力添えをいただきまして、叔母を支えて斑玉家……そして魔道界の発展のために尽力いたす所存で存じます……十鬼太郎さん、どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
十鬼太郎は婚約者ににこやかな笑みを返すと、ことばをついで
「そもそも、この障玉會で両人の婚約を発表することは、異一郎翁が望んでおられたことです。次世代に斑玉の家のバトンをつなぐ、そのための披露の場として考えておられました……そんな翁のご不在は返す返すも残念ではございますが、悲しんでばかりいても陽気なご気性であられました翁への不敬に当たりましょう」
もっともらしく訴える。
「……あの爺さんが陽気だったなんて、よく言えるな。妖しいほうの妖気だろ」
後ろにいる客のひそめき声が、翔之介には聞こえた。
それを知ってか知らずか、斑玉家当主補佐の婚約者は意気軒昂に
「ここは黙祷のかわりにみなみなさまのお杯を頂戴して、異一郎翁が魔道界に残した偉大な業績への顕賞と、われら若いふたりの将来へのご支援をお示しいただきますことをお願い申し上げる次第にございます……では異一郎翁への哀悼と、蠏呪・斑玉両家のますますの発展を願って……献杯!」
その強引なことばにひきずられて、パーティの参加者全員が手にした杯をかかげる。
翔之介も炭酸ジュースの入ったグラスをかかげた……斑玉家より蠏呪家のほうを先に言っていたのが、気になるが。
「……まったくもう。献杯と乾杯がごちゃまぜね」
魔美子も、となりで苦笑んでいる。
「それではみなさま、ささやかなカクテル・パーティでございます。どうぞご歓談をおたのしみください」
ひかえた楽団が、ムードたっぷりのジャズを奏で始めた。




