巨人号の事件11
そのことばに
「……へえ、あの方が継ぐのね」
魔美子が意外そうにつぶやく。
それは参加客たちにとっても同様であるらしく、客席はざわつく。
そのざわつきのなか、十鬼太郎のうながしに応じて壇に上がってきたのは、電動車椅子に乗った中年女性だった。そのうしろには従者だろう、背の高い白皙の男性が従う。
彼女は男性がととのえたマイクに向かうと、
緊張ぎみの口調で
「……斑玉鬼利江でございます。ふつつかものではございますが、みなさま今後ともどうぞお引き立てのほど、よろしくお願いいたします」
言うと、そのまま壇を下りた。
「ありがとうございました、鬼利江さま」
えっ?あのひと、あいさつはあれだけ?
せっかくすごい家のトップになったのだから、もうちょっとなにか言いそうなものじゃない?
転校してきた子でも、初めに新たなクラスメイトに向けて自己紹介とか言うよ。
少年の不審をよそに、壇上に一人残った十鬼太郎が
「また鬼利江の当主就任にともないまして、当主補佐の任に崩子があたります」
宣言した。
「それはそうでしょうね」
魔美子が、またつぶやく。
「どういうこと?」
わけが分からず翔之介が問うと、
こっそりと
「……あの鬼利江という方は、今まで一度も魔道界の表舞台に出ていらしたことがない方よ。魔の資質がほとんど無いかただったはず。一方、崩子さんはお若いけれどむかしから優秀な魔道者よ」
実は、魔美子と崩子は学園で同窓。旧知の間柄である。
「魔道関係者はみんな、崩子さんが斑玉家当主の座を承継なさると思っていた。あたしもよ。それが、翁から見て血縁として近いとはいえ、魔能なしの鬼利江さまが当主になるとはね……どういう事情があったのかしら?」
「魔能なしの当主って、それで魔道家がやっていける?」
禍王家内で無能だった龍臣の境遇を知っているので、翔之介は問う。
「いけないわ。だから、崩子さんが補佐するということよ」
「ふうん……」
(むずかしいなぁ。とにかく、魔道家をやっていくのはたいへんなことだよ)
少年は、今さらながら自分の置かれた立場に嘆息する。




