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ある魔道家の跡取り息子  作者: みどりりゅう
巨人号の事件

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37/45

巨人号の事件8

挿絵(By みてみん)

 ベッド上の少年が首を傾げて

「なんで秘密にしておくの?亡くなったら、みんなに知らせないと。お葬式もあったでしょう?」

 問うと


「魔道家にとって、当主の死……すなわち代替わりの時期は一番危ういものなのよ。後継者がしっかり定まっていなければ内紛の可能性もあるし、機に乗じて他の家が襲いかかることもありうる。だから、よほど代替わりがスムーズで後継者の力が強くないと死の公表はしにくい。少なくとも後継当主が決定するまでは、控えるのがふつうね」


 戦国武将みたいだな。


「じゃあ、この船旅の招待は後継当主が決まったから?でも、この招待状の送り主は異一郎って人のままだよね……」


 叔母は、甥の勘の良さににっこりして

「そうね。先代当主が生前に決定していた催しだから中止しなかった、という理屈でしょうけど。それにしても、後継当主がだれかはっきりさせないまま開催するとはね……どういうことかしら?

 もともと斑玉家はかわった魔道家でね、ぜんぜん大したことなかった三流の魔道家だったのが、異一郎翁が一代で大きくした家よ。あまりの急激な発展ぶりに、異一郎は魔神と契約したんじゃないかという噂まであるわ」


 魔神と契約って、冗談ばっかり……とならないのが、魔道者のおそろしいところだ。そいういうことも十二分にありうるのだから。


 魔美子はすこし考えこむ様子だったが

「……情報が足りないわね。どうしてもウチはそのあたりが弱い。異一郎翁の死を知ったうえで参加している家もあるでしょうに、そういった家と準備に差が出てしまう」

 つづけて

「うちはまだ魔道家としての総合力では、まるで弱者よ。よその魔道家と接することには危険もある。しかし今後を考えると、外界と接して情報を得ないとね。あたしもあなたも、生き残るために強くならきゃならない」


 そんなことを言われると緊張する。


 顔がこわばる甥に、叔母はすこし口の端を笑み曲げて

「まあ、今から説明会をかねたレセプション・パーティ……歓迎の催しがあるそうだから、それがあなたの魔道界・社交のデビューね。文字どおり魑魅魍魎の住む世界だから、そのまま気を張っておきなさい。取って喰われないようにね」


 最後のひとことが、たとえや冗談で言っていないのがおそろしかった。


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