巨人号の事件8
ベッド上の少年が首を傾げて
「なんで秘密にしておくの?亡くなったら、みんなに知らせないと。お葬式もあったでしょう?」
問うと
「魔道家にとって、当主の死……すなわち代替わりの時期は一番危ういものなのよ。後継者がしっかり定まっていなければ内紛の可能性もあるし、機に乗じて他の家が襲いかかることもありうる。だから、よほど代替わりがスムーズで後継者の力が強くないと死の公表はしにくい。少なくとも後継当主が決定するまでは、控えるのがふつうね」
戦国武将みたいだな。
「じゃあ、この船旅の招待は後継当主が決まったから?でも、この招待状の送り主は異一郎って人のままだよね……」
叔母は、甥の勘の良さににっこりして
「そうね。先代当主が生前に決定していた催しだから中止しなかった、という理屈でしょうけど。それにしても、後継当主がだれかはっきりさせないまま開催するとはね……どういうことかしら?
もともと斑玉家はかわった魔道家でね、ぜんぜん大したことなかった三流の魔道家だったのが、異一郎翁が一代で大きくした家よ。あまりの急激な発展ぶりに、異一郎は魔神と契約したんじゃないかという噂まであるわ」
魔神と契約って、冗談ばっかり……とならないのが、魔道者のおそろしいところだ。そいういうことも十二分にありうるのだから。
魔美子はすこし考えこむ様子だったが
「……情報が足りないわね。どうしてもウチはそのあたりが弱い。異一郎翁の死を知ったうえで参加している家もあるでしょうに、そういった家と準備に差が出てしまう」
つづけて
「うちはまだ魔道家としての総合力では、まるで弱者よ。よその魔道家と接することには危険もある。しかし今後を考えると、外界と接して情報を得ないとね。あたしもあなたも、生き残るために強くならきゃならない」
そんなことを言われると緊張する。
顔がこわばる甥に、叔母はすこし口の端を笑み曲げて
「まあ、今から説明会をかねたレセプション・パーティ……歓迎の催しがあるそうだから、それがあなたの魔道界・社交のデビューね。文字どおり魑魅魍魎の住む世界だから、そのまま気を張っておきなさい。取って喰われないようにね」
最後のひとことが、たとえや冗談で言っていないのがおそろしかった。




