巨人号の事件7
女性の登場に、ゲスさま……蠏呪十鬼太郎はすこし表情をやわらげてて
「崩子さん。あなたの手をわずらわすほどのことでもない」
「でもそのかた、異一郎大おじに呼ばれたと……」
女性のことばに、
若い男は
「そうだ!ウソだと言うなら、これを見てみろ!ちゃんと『巣難奇多郎さま、ご招待。斑玉異一郎拝』って書いてある!」
封筒から手紙を取り出す。係員がそれを受け取って崩子にわたすと
「……まあ、これはほんとうにおじさまの筆跡だわ。では、あなたさまはほんとうに異一郎に招待されたかたなのね」
「――ですから、それが嘘くさいと申し上げているのです。なぜこのようなむさとした輩を異一郎翁が呼ばねばなりませぬ?」
なおも疑う十鬼太郎のことばに、
奇多郎青年は
「なにがウソくせぇだ?ホントかどうかなんて、その異一郎ってのに聞けばすむ話だっぺさ!」
もっともなそのことばに、しかしその場にいるものは一様に眉をひそめ押し黙った。
しばらくすると、崩子嬢がおもむろに
「……残念ですが、異一郎……あたくしの大叔父は先月亡くなったのです」
言った。
巨人号に乗船した翔之介と魔美子は、コンシェルジュに案内されて宿泊部屋に通された。
少年はその立派さにおどろかされた。正直、自分たちが住んでいる家よりこのスイート・ルームのほうが広い。ベッドやソファも大きいし、なによりバルコニーから海が見えるのがすばらしい。
「陽城さまには、最上級の部屋を用意させていただきました」
とのことばも、嘘ではないだろう。
コンシェルジュが退室すると、少年の緊張も解けてベッドに身を投げる。
「うわぁ~」
ふだん寝ているせんべい布団とまるで異なるふわふわは、まるで雲の上に身を預けているかのようだ。
いっぽう叔母は、だまったまま部屋の隅々までダウジング・ロッドで調べる。
それを終えるとやっと声を出して
「――とりあえず妙な仕掛けはないようね。それでも、あたしの探索能力を超えた術などが施されていたらお手上げだから、盗聴はされていると思って口はひらきなさい」
と、心の休まらないことを言う。
「しかたないことよ。一歩外に出たら、いや家の中にいてさえ安心できないのが魔道の世界よ。外泊するさいは、常にのぞかれていると思って行動なさい」
と警戒を怠らないが、バルコニーに出て潮風を感じると
「まあまあの部屋ね」
と、すこしだけ頬をゆるめる。
ソファにもたれると、足を組んで
「それにしても、異一郎翁……斑玉家のご当主が亡くなっていたとは知らなかった……さすが、秘密保持はしっかりしているわね」
感心したように言う。




