巨人号の事件4
「あなたは、その鷹太郎兄さまゆずりの見目の良さもふくめて、すでに魔道界の若きスターです。そんなあなたが参加すれば、斑玉家のもよおしも華やぐということでしょう」
叔母は(ふたりきりということもあって)甥の美貌愛嬌を臆面もなく褒めそやす。
翔之介は(自分ではそこまで思わないのだが)実はなかなか、どころかとてつもない美少年であるらしい。
それはおよそ、この世のものならざる「美」らしく、道ですれちがうだれもが胸を突かれて少年の顔を見かえすほどだった。
本人としてみたら
(そんなふうに今さら言われてもなぁ……)
陽城家の生き残りと気取られぬよう、生まれてすぐに母から「他人にはとんでもなく禍々しくおぞましい面相に見える」術を施されていたため、少年は長らく、あざけりと恐怖の入り混じった視線しか浴びてこなかった。
それを急に、類まれなる美少年ともてはやされたところで、うれしくない。
正直、外面しか見ない人間に対して不信もあるのだ。
そんな屈託した少年の思いとは裏腹に、叔母は甥が亡き兄の面影をこれ以上なく美しい形で受け継いでいることが、とにかくうれしいらしい。
魔美子とてかなりの佳人だと翔之介は思うのだが、彼女はそれを受けつけず
「鷹太郎兄さまの美しさは、あたしなどとは比較になりません。ほんに至高なものでした……もう今生では相まみえることができないと思っていたその美を、あなたがこうして引き継いでくれていることはほんとうにうれしい。
あなたを見ていると昔日の兄さまがいらっしゃるようで、ああ……かつてはこのように兄さまのお顔にふれるなど、おそれ多くてできなかったの。それが今は、こうして好きなだけふれることができる……ああっ!」
毎晩のお風呂上がり、息荒く自分の頬をなづるのは、ちょっとやめてほしいなと甥っ子は思っていた。
とにかく
「親睦会って、いったいなにをするんですか?」
少年の問いに、
叔母は
「主目的は、関係者の情報交換や商談・取引ね。オークションもあるそうよ」
魔道者があつまっての取引……嫌な予感しかしない。
「……それって、やっぱりあぶないの?」
「そうですね。通常の人間社会から見れば、ずいぶんグレー……というより、はっきりとブラックでしょうね」
叔母の講義を受けて、少年は魔道の世界が通常の人間社会とはっきり矩を違えていることをわかっていた。
魔の取引で違法な商品が扱われるのは当然と思っていなければならない。そこには盗品や捕獲禁止生物、さらには生きた人間まで含まれる。
もちろん人身売買など人権的に許されることではないのだが、魔道の世界はそのあたりの倫理観が壊れている。実際におそろしい取引もあるのだ。




