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ある魔道家の跡取り息子  作者: みどりりゅう
巨人号の事件

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32/47

巨人号の事件3

「大型船に乗船して、太平洋上をクルージングします」


(クルージング?クリーニングじゃなくて?)


「……まさか、漁船のおそうじバイトとかに応募したわけじゃないよね?」

 きびしい生活を送ってきた少年は、すぐ自分が労働をしないといけないのではと思ってしまう。


「もちろんです。『豪華』客船の乗客として乗船します。部屋もスイートですから、ゆったりできます」

 「豪華」を強調して言った。


「スイート、というのは甘いという意味ではありません。設備が『揃っている』という意味です」

 心なしか、叔母の声も弾んでいるように聞こえる。


 しかし慎重な少年は、いぶかし声で

「――そんなお金、どこから?」

 こどもらしくない言いぐさで、問うた。


 そもそも陽城家は再興したとは名ばかりで、構成は翔之介と魔美子のふたりきり。

 10年前、禍王家に敗れたときに財産を全て失い、魔美子が生まれ育ったという屋敷もすでにない。

 今は、代が変わって陽城と良好な関係にある禍王家の当主・獣吉じゅうきちが世話をしてくれた小さな貸家に、従者を使うこともなくふたりで暮らしている。


 禍王家の隷属を離れた魔美子は、これも獣吉の世話で学園がらみの仕事に新しく就いたが、収入はそれだけで生活は決してラクではない。

 翔之介にしたところで、ほんとうは放課後も魔能の訓練などでなく、以前のように食べられる野草摘みをしたいくらいなのだ。

 けっして豊かでないこの魔道家に、そんな豪華な船旅などできるはずが……


「大丈夫です。今回の旅行はわれわれが出費するものではありません。招待されたものです」


 招待?


「ええ。かつて陽城うちとつきあいがあった『斑玉ふだま』という魔道家があります。そこの当主が毎年、船を貸し切っておこなう親睦会に招待されました」

 そう言って、魔美子は大きな封筒を見せた。

挿絵(By みてみん)

「『障玉會』開催のご案内」とある。(「會」は「会」の古い字で「しょうぎょくかい」と読むのだそう。なんだかものものしい)


 なぜぼくらが招待されるの?当然の問いに


「この案内状によると、旧交ある陽城家の再興に祝辞を述べるとともに、よい機会としてその新たな当主とよしみを得たい……とのことです」


「当主って……」


「無論、あなたのことです」


「……ぼくは、こどもだよ」

 少年は肩をすくめるが、


 叔母はきっぱりと

「魔の道に、年齢は関係ありません。禍王家での混乱鎮圧にあなたが大きく貢献したのは、魔道界で広く知られた事実です。あなたの活躍によって、わが陽城家は斯界しかいでの復権を果たしました」

 そこは、ほこらしく言った。


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