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ある魔道家の跡取り息子  作者: みどりりゅう
ある魔道家の跡取り息子

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秘密の部屋1

 翔之介は術で体を拘束された状態で、蔵の地下にある隠し部屋に運ばれた。

 どうやら銀鹿医師の秘密研究室らしい。何やら得体のしれない機械が壁一面に置かれている。


 遠く、上の方から激しい轟音や雄叫びのようなものが聞こえた。


「反禍王派も総攻撃に踏み切ったのね。ふん、あなたが当主になっては大変だと下種どもも必死なんでしょうけど……まあ、あんなもの、大おばさまに任せておけばだいじょうぶよ。うちには隷属契約のおかげで、禍王のためには命をかけて戦わなきゃいけない魔美子さんみたいな『奴隷』がいっぱいいるしね。とにかく、このどさくさの間に作業を終えてしまいましょう。――ああ、さっきお兄さまにぶつけられた『しらぬい』がまだ少し痛むわ。すぐに銀鹿先生に魔薬でケガはふさいでもらったから目立たないけど」

 たま子は手をさすった。


 さきほど翔之介を襲ったのは魔美子ではなく、姉だったのか!


「しかし、どうするね?いかに鵺郎ぬえろう君設計のこの装置でも、龍臣君がこの場にいなければ直接移すことは出来ないぞ」


「仕方ありませんわ。ロスは大きくなりますけど、一度機械に移して、後日それをお兄さまに……という形にいたしましょう。禍王家全体が襲撃に気を取られている今しかチャンスはありませんもの」

挿絵(By みてみん)

「いったいなにをする気?」

 少年のおずおずとした問いに、


 銀鹿先生は

「いまから君の中にある魔能をこのわたしたちの開発した機械で吸い上げ、保管しておく。そしてその魔能を後で龍臣君に移すのだ」


「いったいなんでそんなことを?」


「もちろん決まっているでしょう?お兄さまに禍王の当主になっていただくためよ。悪いわね、翔之介さん。わたしはどうしても龍臣お兄さまに当主になっていただきたいの。わたしたち兄妹は生まれたときから、禍王の当主の子でありながら魔能がないということで人に軽んじられ、さげすまれ暮らしてきたわ。家のうちでは無能ものとして扱われ、外では禍王家にうらみを持つ人からいじめられてきた。

 わたしたちの母も大おばに魔能なしを産んだ、役立たず女とののしられて、苦しみの中死んでいった。その屈辱は、父がよその女に産ませたあなたのようなものにはわからないでしょうね。わたしは亡くなった母のためにも是が非でも龍臣お兄さまに魔能を身に着けていただき、お父様のような偉大な術者になっていただきたいの。

 そのためにはどうしても他者の魔能、それも同じ禍王の血を持った若々しいあなたの魔能がほしい。あの頑固な大おばでも、実際に魔能を持ったお兄さまを見れば、禍王の当主になることに何も文句を言わなくなるはずよ」


 よっぽど胸にたまったものがあったのか、こんなに興奮してしゃべるたま子を見るのは初めてだった。


 そこに銀鹿医師が説明を添えるように淡々と言葉をつづけた。

「……わたしは彼ら兄妹の主治医兼世話役として長年にわたって無魔能症候群の治療の研究を続けてきたが、その結果として、単なる体質改善という方向からのアプローチでは根治は難しいという判断に至った。

 根本的な改善としては、やはり他人の魔能を移すしか手がないのだ。われわれは実験に実験を重ね、ついに他者の魔能を吸い上げ、移すことに成功したのだ」


「……まさか、ここのところの召使いたちのたおれというのは……」


「わたしが術で昏倒させたうえで、魔能を吸い上げていたのだ。気づかれないように一人につき少しづつしか吸い上げなかったので手間がかかったけどね。反禍王派の不穏な動きと重なっていたのが、あやしまれないためには幸いだった。そして、その吸い上げた魔能を移す実験をたま子お嬢さまにおこなったのだ。結果は上々だった」


 銀鹿医師は満足そうにたま子を見ると

「彼女はわたしが開発した特殊な手袋をはめることによって高度な術を使える段階にまで達した。そう、『ぬばたま』をすらね」


「わたしだってお父さまの子だもの。魔能さえ足りれば使えて当然よ」

 たま子は誇らしげに言った。


 翔之介はふるえながら

「……じゃあ、天鼠先生を襲ったのは」


「『わたし』よ。あの天鼠というのは何だか知らないけど、夜中に表家の邸宅内をあちこち探索していたようでね。わたしたちが生体実験をしている現場に出くわしてしまったの。それでわたしと銀鹿医師二人がかりでやっつけてやった。とどめを刺す前にほかの者に気付かれてしまったのが残念だったわ。

 おかげで、そのあと自分で倒したものの治療を銀鹿先生はおこなわなくてはならなくなった。皮肉なことよね」

 残虐な笑みをたま子はうかべていた。


「そんなひどいことをよくも……たま子お姉さん、ぼくは魔能なんていりません。あげます。もともと禍王の当主になんかなりたくはなかった。だからそんなひどい人殺しのようなまねは、もうやめて!」

 翔之介の必死の訴えに、


 たま子は声をあげてわらった。

「ハッハ!あなたは本当に表家らしくない子ね。あの猛々しいお父さまのこどもとも思えない。初めて会った時から、そういうところが虫が好かなかったわ。禍王の人間が血を好まないでどうするの?わたしはやっと手に入れたこの魔能のおかげで、人が目の前で苦しむところを見ることができて楽しいことったら!この上ないわ!」

 そして、さもうれしそうに付け加えた。

「それに、いくらあなたの魔能を吸い上げたって人を襲うのはやめられないわ。龍臣お兄さまに禍王の当主になっていただきその力を十分に発揮していただくには、多量の魔能が必要であり続けるもの。それこそひとりひとり根こそぎ魔能をいただいていかないとね。命などいちいちかまっていられない。

 その手始めとしてあなたの魔能を根こそぎいただくわ。お兄さまのための尊い犠牲よ、よろこびなさい!」


 そのとき、上からすさまじい、うめき声というか怪音が鳴り響いた。



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