急展開2
「それよりおまえ、こんなところで何をしている?」
「いや……それが……」
思わずポケットに手をやると、
(あっ、指輪がない!)
目で探すと、奥の床に光っているのが見えた。転んだときに落としたのだ。
拾おうとしたが、龍臣に先を越された。
指輪をつかんだ龍臣の眼の色が変わっている。
「おまえ!いったいこれをどこで!?」
翔之介は一瞬、正直に言おうかどうしようか迷ったが、龍臣に見せてよいかどうかたずねたとき虎が「ノー」と言ったことを思い出した。
「……お母さんの形見です」
「冬子が!?嘘をつけ!どうして彼女がこんなものを持っている?本当のことを言うんだ!」
「言えないよ……ねえ、おにいさん、返してよ」
それを無視して龍臣はしばらく指輪と翔之介を見比べていたが
「……おまえ、まさか『あいつ』に会ったのか?」
「あいつ?」
目が泳いだ。
「そうだ、あいつだ!あの野郎、さてはまだ生きてやがるな!?チキショウ!会ったらぶっ殺してやる!」
その残虐な表情に思わず
「ねえ、おにいさん。あの虎にひどいことしないで!」
「虎!?おまえ、やっぱりあいつに会ったんだな?どこで会った?言え!言うんだ!」
翔之介は誤魔化そうとするのだが、こどもの考えなさで、ついつい鏡のあったほうに目が行ってしまった。
「さては鏡……そうか、龍子おばの仕業だな!?かくし空間か!」
その顔がおそろしくゆがんだ。
「ねえ、お願いだから虎にひどいことしないで」
「ひどいこと?……ああ、そんなことしないとも。クック……しかし奴が生きてやがるとはなあ。おまえは良いから部屋にもどってろ!」
そんなふうに言い合っていると、奥から銀鹿医師とたま子が出てきた。
「龍臣にいさんに翔之介くん?いったいどうしたんですか?反禍王派の襲来があったと聞きましたけど、まさか屋敷の中まで」
「さあ、どうだかな。おれにはよくわからん」
龍臣はたま子から目を背けると
「銀鹿医師、こいつに怪我がないか見てやってくれ。おれには用事ができた」
と言い残し、翔之介の無言の要求もむなしく指輪を持ったまま消えた。
魔美子が駆け足でやってきた。
「どうしたのですか?」
息が荒く、めずらしく興奮している。
「あら魔美子さん、その手は?」
見ると魔美子が左手をかばっている!
翔之介はショックを受けた。
(ああ、やっぱりこの人だったのか……)
いま先ほど翔之介を襲ったときに龍臣につけられた傷にちがいない。あやしい、あやしいとは思っていたが、それでもどこかで信じていただけにショックが大きかった。
「……ああ、これは今敷地内に侵入した反禍王派とやり合いまして……なかなかの手練れらしく少しケガをしてしまいました」
「捕まえたの?」
「それが、残念ながら取り逃がしました」
「……それではその不届き者か、その仲間が邸内にまで侵入し、翔之介さんを襲ったという訳かしら?」
それを聞くと魔美子は、彼女にしてはめずらしくうろたえたように
「なんですって!?翔之介さま、襲われたのですか、おケガは?」
(ああ、なんとおそろしいウソを平気でつくのだろう、この人は)
翔之介は自分の命を狙った世話役の顔をまともに見ることができなかった。
2025.12.22
このページまで挿絵をつけなおしてみました。次回挿絵つけなおしは
12.29を予定しています。おたのしみに。




