第2話:大人たちとの戦い
そのとき、天井から不気味な音がなりだした。
「な、何だ?誰だ?」
「ゆ、幽霊じゃないよな・・・」
「ははは、何を言うんだい君は。」
「開いたぞ!お前ら入れえ!おい、我々はダークスネイクゴッド団だ!お前らを倒しにきた。ってあれ・・・?全然騒がしくないぞ。隠れてんのか?」
「ま、またヤクザさんかよ・・・」
「名前ださすぎだろ・・・」
正樹は、つい笑ってしまった。
「なんだ!そこに誰か居るのか!」
「はい、居ますよお。でも、ヤクザさんじゃなくて、中学生でえす。」
「中学生?ふざけるな。中学生がこんなところに居るはずが無い。」
「ところがどっこい、俺たちはここに監禁されてたんだなあ。反乱を起こしたけれど。」
「な、何。反乱ということは、あいつらは居ないのか?」
「居ませえん。普通もうわかっている筈でしょ。聞き取り能力ないから、小学六年生から診断テストやりなおしてきなさあい。」
「ははは。八郎は面白いね」
「ふむ、居ないのか・・・。よし、このまま撤退するのもつまんねえから、この中学生どもをリンチするぞ!」
「ボス、わかりました。」
「さっきはリーダーで今度はボスかよ・・・。よし、やってやろうじゃんか」
八郎と正樹は、鉄パイプを拾って構えた。
「野郎ども、中学生の声がする方に向かって総攻撃だあ!」
「おお!」
「来た!」
八郎と正樹は、鉄パイプをがむしゃらに動かした。
「うわああ。」
「やられたあ!」
「中学生の割にはやるな。よし、武器を持って攻撃だ!」
ダークスネイクゴッド団も、鉄パイプで攻撃しだした。まるで剣で戦っているかのようだ。金属音が、狭い駐車場内に響く。耳をつんざくような音だ。それほど、力が強いのだろう。
「お、おい、二人対たくさんはずるいぜ。タイマンにしねえか」
「タイマンか・・・なるほど、おもしれえ。じゃあ、こっちはボスの俺が出る。」
「いよっ!大統領!」
「ボスう!頑張れえ!」
「ボスは勝つのだ、絶対勝つのだ!」
「うるさい!真剣勝負だ。静かにしろ」
「ぷぷ、真剣勝負だって。笑わせるぜ」
「じゃあ、こっちは八郎な」
「よし、はじめるぞ。」
「八郎対ボスの戦い、はじめ!」
鉄パイプの触れ合う音がなる。八郎は一生懸命戦っているが、ボスは言動からして余裕のようである。
「どうした、八郎ちゃん。やっぱり、ボスである俺には勝てねえか?」
「く・・・強い。」
鈍い音がした。どちらかの体に鉄パイプが触れたらしい。
「どっちが勝ったんだ・・・」
正樹は固唾をのんだ。なんとなく、いやな予感がする。胸にもやもやがあるような感じだ。
「いええい、倒しちゃったぜえ!」
八郎の声が響いた。
「か、勝ったのか・・・。よかった」
正樹は胸を撫で下ろした。
「おうい、ボス。」
部下たちが呼ぶものの、ボスは返事をしない。
「まさか、殺されちゃったのか・・・ボスは。」
「こ、殺しはしてないよな。気絶しただけだよな。」
八郎が不安そうに言う。
「た、多分そうだと思う・・・」
「ボスう!」
「ん・・・?なんだ?」
「ボスう!生きてたんですね!」
「はあ・・・?」
「ボス・・・?」
「ボスって何よ。」
「ボスは、ボスですが・・・」
「てか、お前誰。」
「もしかして、記憶喪失・・・?やべえ、俺少年院送りにされるかも。」
八郎はだんだん不安になってきた。
「そうだ、学校に行かなきゃ。朝食は?」
「やべえ、ボス、頭だけ学生だった頃に戻っているぞ。」
「とりあえず、病院に連れていきますか・・・」
「病院?俺は病気じゃないぞ!学校へ行かせろお!」
「ボス、暫くの辛抱です。我慢してください。」
「病院に送るってったって、どうやって送るのさ。ここは駐車場の中で、シャッターも開かないんだよ。」
「え、じゃあ、閉じ込められてんのか?」
「そういうこと。」
「まじかよお!じゃあボスはどうすれば・・・」
そこで、突然シャッターを叩く音がなりはじめた。
「おわあ、びっくりした。」
「誰か外から叩いているんじゃないのか?」
「外に出れるかもしれねえ。おうい!」
八郎と正樹に、ボスを除いたダークスネイクゴッド団の連中も、シャッターを叩き始めた。
「誰か中に居るのか。」
外でシャッターを叩いていたのは、瀬谷であった。
「シャッターを開けてみよう。」
シャッターが開いた。
「やったあ!」
「やっほお!」
中に居た面々はとても喜んだ。外の光が、駐車場の中へ差し込む。
「お、ノースイーストウェストサウス団の奴らじゃねえか。この中学生にやられたんだな。」
「あいつら、ノースイーストウェストサウス団っていうのか・・・。長い名前だな。」
「お前ら、何してたんだ!」
瀬谷が叫ぶ。
「閉じ込められてたんだよ。そんなに怒ることはないぜ。」
「じゃ、俺たちはボスを病院に連れて行くか。お前ら、今度あったときこそは、勝つからなあ!覚えておけえ!」
「もう二度と会わねえだろうな。ところでおっさん、今何時?」
「おっさんと言うな!私の名前は瀬谷だ。瀬谷さんと呼べ。」
「ごちゃごちゃうるせえな・・・。瀬谷さん、今何時?」
「十二時だ。」
「え、十二時?!もう学校終わっているんじゃないのか。」
「今家に帰ったら怒られるな。明日になったら、どうせ忘れるだろうから、明日まで帰らないでおこう。だけど、どこに泊まれば・・・」
「駐車場でいいんじゃない?」
「駐車場か・・・嫌だなあ。まあ、仕方ないか。」
「駐車場で寝泊りしちゃいかん!」
「まあまあ瀬谷さん、一日くらいいいじゃないかよ。じゃあ、中へ戻りまあす。」
「おいおい、今戻ったら退屈だぜ。ゲームセンターにでも行かないか」
「でも、今お金ないし・・・」
「俺は持ってるぜ。一万ほどあるから、お前にも貸してやるよ」
「おっサンキュー。恩に着るぜ。今度、貯金崩して返すから、安心してくれ。」
「いいよいいよ、返さなくても。」
「いや、それは悪いぜ。返すってば。」
「うん、じゃあ、返してもいいけど。それじゃあ、行こうぜ。」
「N駅の近くのゲームセンターは、ちょっと遠いけれど中身が豊富らしいぜ。インターネットカフェとかもあって。そこへ行こう」
「そうだね。じゃあ行こうか。」
二人はN駅の方向へ走った。