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第14話:チェーンメールと心霊写真

「次の作戦を考えたぜ。」

「すごいな、八郎。よくそこまで考えられるな」

「こういうことに関しては、ひらめきがいいんだ、俺。」

 八郎は細い指を耳の少し上に押し当てた。

「で、今度はどんな内容なんだ?」

「うん、パソコンのいたずらメールを基にして考えたのだけれど・・・チェーンメールを作って、他の奴らの机の中に仕込んでやるんだ。メールは、筆跡で誰が書いたかばれないように、パソコンで書いたのを印刷して作る。」

「ほうほう、安全対策もばっちりですな」

「しかし、それだけでは紙にかかれた日付とかでばれるかもしれない。なので、文章のまわりはばっさり切る。手紙は、封筒に入れて、ターゲットの机の中に入れる。差出人の名前は・・・」

 ここで八郎の声は小声になった。


 次の日、八郎たちは早速手紙を作って持ってきた。

「おお、お前らすげえな。」

「俺のんなんか脅迫状だぜ。迫力あるだろ。」

 八郎が自分の手紙をみんなに見せる。

 みな、校門が開く時間とほぼ同時に学校に入ったので、八郎たち以外は誰も居ない。

「今のうちに机に入れておこうぜ。」

「そうだな。」

 八郎たちは女子を中心に、たくさんの机に手紙を入れていった。入れ終えた頃、丁度侑也が教室に入ってきた。机の中の異変には、すぐ気がつく。

「・・・ん?なんだこれは。」


――高山侑也君へ


 侑也君、私です。絵里です。実は私、侑也君のことが大好きなんです。入学した頃から惚れていました。頭がよくて、顔もよくて、やさしくて・・・私の憧れの存在です。あの・・・一つお願いがあるのですが、今日、デートをしてくれませんか。昼休みに、図書館で待っています。


 能登田絵里より


(デート?やだね。僕は女には興味ないし。それに、喋ったこともないのにこんな手紙が送られてくる筈がない。どうせいたずらだろう。)

 侑也はそれをくしゃくしゃにして、ゴミ箱に捨てた。

「ちっ・・・感づかれてるぜ。これだから優等生ぶりっ子は。」

 八郎は小声で言ったが、侑也が一瞬こっちを睨んだので、聞こえていたかもしれない。

「次はあの貧乏メス豚の番だな。」

 能登田が入ってきた。侑也とは違い、机の中のことには気づかなかったが、教科書を入れようとして中を見たときは、さすがに気づいた。

「あれ?私、何か忘れ物したっけ。」


――能登田絵里へ


 おい、俺だ。H.O.だ。イニシャルだからすぐ誰かわかるだろう。実はな、ニュースがあるんだ。

 高山って知ってるか?あの頭よさそうな奴。知ってるよな。あいつがな、お前のこと好きなんだよ。

 しかも、普通の好きってレベルじゃない。こっそり写真を撮って、家でそれを見てにたにた笑ったりしているらしい。つまりは、君に興奮しているんだ。

 そういえば、先週、高山が手紙書いてたな。多分お前あてのラブレターだろ。返事したら、何されるかわからないから、気をつけろ。もし何かあったら、H.O.の机に手紙を入れろ。わかったな。じゃあな。


 侑也あての手紙と同じような書き方だ。絵里はじっくり手紙を読んでいる。

「うそ・・・いやあ!何これ、気持ち悪い!」

 両手で頬をおさえる。八郎は小さくガッツポーズをした。

「よっしゃあ、成功だ!これであのぶりっ子野郎の地位は崩れ落ちる。はっはっは。」

 絵里は侑也の方を見た。侑也と視線が合うが、すぐに目を反らされてしまった。


 今度は二人入ってきた。醍醐と恭一郎である。

「でさあ、うちのマンション花粉が酷くて。管理人にお願いしているんだけれどなあ。」

「そりゃあ酷いね。住人をいじめているのと同じじゃあないか。」

「母さんもそれで怒ってね、とうとう管理人室・・・あれ?」

「ん?どうしたの?」

「なんか、変な手紙が入っているよ。何だろう?これ。」


――明日の午前二時に、西ヶ池に来なさい。さもないと、幽霊に殺されるぞよ・・・。

 もう既に、お前のマンションは幽霊がたくさん住み着いている。早ければ、明日には殺されるぞよ。だから、必ず来なさい。

 西ヶ池についたら、全裸になって泳ぎなさい。一時間程泳いでいれば、除霊されて、殺される心配は無くなるぞよ・・・。

 普通の子供なら、このような手紙は嘘と思う。しかし、これは本当なのだ。その証拠に、お前のマンションが幽霊に取り囲まれている様子を写した写真を同封してあるぞよ・・・。


 祈祷師キチンーイより


 血のような文字で書かれている手紙であった。内容の通り、写真も入っている。

「あっ。なんだこの写真は?」

 醍醐のマンションのに、恐ろしい霊が取り巻いている写真だった。顔は、見るだけで吐き気をもよおす程のものだ。

「うげええ。とても見ていられないよ。」

「ねえねえ、醍醐、これやばいんじゃない。泳ぎに行ったほうがいいよお。」

「ううん・・・でもこんなこと、信じられないな。」

「でも、もし本当だったら・・・。僕もついていくから。ね?泳ぎに行こう。」

「ま、まあ、恭一郎がついてくるならいいけれど・・・」

「よかった。もし醍醐が死んだら、僕も後を追うからね。」

「わかった・・・。行くよ。」

「あっ、僕のところにも手紙が。」

 その手紙も醍醐と同じような内容で、さっきのよりもっと恐ろしい顔をした霊が、恭一郎の家を取り巻いている写真があった。

「ぎゃあ!怖いよお!」

「これは、すごいねえ・・・」

 二人は顔を見合わせた。

「くくく、すっかり騙されているぜ。」

「それより、心霊写真がすごいよねえ。創、さすが。」

「まいったなこりゃ。」


 朝の時間も終わりに近づき、たくさんの人が入ってきた。


――俺と結婚してくれ、良子!


 翔太より


――死ね。


 お岩さんより


 中にはこんな酷い内容のものまである。


――おいーす


 パチペチパンチ


「おい、正樹の手紙、適当すぎるだろ。」

「ごめん・・・俺んちのパソコン、ボロいからこれくらいの文字数しか入れられないんだ。」

「ま、それなら仕方がないか。ちなみに、俺が作った川上あてのが一番怖いと思うぞ。」


――姉ちゃん、金ちょっくら一千万くらいかしてくんねえか。明日、金をこの机の中にいれといてな。もしかしてくれへんかったら、お前とお前の家族の命はないで。


 Y事務所より


「うわ、そんな内容なのか。そりゃあ怖いな。あれ・・・?」

 裕子はまだ来ていない。

「ちぇっ、こんな時間になっても来ないってことは、休みか。」

 ちょうどこのときに白井が入ってきた。

「ええ、少し話があります。」

「またつまんねえ話かよ。」

 紀夫は小声で呟く。

「ええ、この間渋川高原行ったな。あそこで山火事がおきました。」

 教室内に歓声がわきおこった。

「原因はタバコの不始末とか言われているんだけれども、俺はそうは思わないんです。」

 八郎たちは身震いする。

「絶対、誰かのいたずら。そう思うんです。大橋とか、中山とか・・・数えきれない程悪さしてきた奴がいるよな。まあ、犯人は決め付けたくないけれど、絶対に誰かのいたずらって思っている。そういうわけなんです。」

 同じようなことを二回も繰り返したので、何人かは笑ってしまった。

「笑うなあ!それで、更にもう一つ。あの火事で、青少年の家が焼けたんだぞ!」

 生徒たちはひるんだ。物凄い声である。

「そのせいで、窪田さんは住むところがなくなり、お金を稼げなくなったんだぞ。」

 八郎は心の中で喜んでいた。

「他の中学校が、今日から一泊移住の予定だったんだが、それも中止!大変なことだぞ、大変。」

「先生、僕はやっていません。」

 誰かの声が聞こえた。その言葉は、尚更白井をいらだたせたらしい。

「うるさい!やっているということはわかりきっているんだ。今から、みんなは机に伏せてもらう。やった奴は、みんなが伏せ終わってから手を挙げろ。周りの奴らにばれないから、手を挙げるのは簡単だろう。」

 案の定、手を挙げるものは誰も居ない。

「ううむ・・・まだ白状しないか。じゃあ誰かが手を挙げるまで授業は無し。わかったな。やった奴は、早く挙げないとみんなに迷惑かけることになるんだぞ。わかったな!」

 「わかったな」を二回も続けた。何人かが、ため息をついた。


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