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第五話

気がつくとベッドの中。

真っ白な空間からいきなり現実に出てきたみたいに夢なのか現実なのかはっきりしない。

何が起こったのかさえも覚えていない。

ただ母はもういないんだということを感じる。

気配がないのだ。

心にぽっかりと穴が空き、そこに空虚という風が吹く。

トパーズは涙さえ流すことができなかった。



大巫女は毒殺されたのではないか、といううわさが立っている。最近のお告げは政治に反するものが多く、大巫女は何かを知ったことで、消されたのではないか・・・と。

トパーズの耳にもそのうわさ話は聞こえてきたが、どうでもよかった。母はもういない。それが事実だ。



それからのトパーズははとても孤独だった。

大巫女を継ぐための巫女としての儀式が済んでいないので、どんなに対話の間に入れて、お告げを聞いたとしても巫女とは認められず、政治のうえで邪魔だった母が死んだことで、神殿は一気に政治家たちの息のかかったものたちで固められ、幼いトパーズはただの飾りとして扱われた。

西の神殿の大巫女を継ぐ巫女としてただの民衆へのアピールのためにだけ使われたのだ。



本当は儀式は済んでいた。

トパーズの額には神官としての見えない証が刻まれていた。

トパーズの母、アステール大巫女が最後の力をふり絞って伝授したものだった。



トパーズは常に神との対話の間にこもるようになった。神官としての証が伝授された今、トパーズには神殿内で入れない場所はない。

だが巫女の仕事や勉強など教える人がいなくなったので神官としての証が伝授されたことも何をすべきなのかもまったくわからないのである。


大巫女が死んですぐにトパーズの周りにいた人たちはすべて大臣の息のかかった者たちに変えられ、常に監視されるようになった。

それがいやで、おじい様と呼んでいた水晶の精の横に座っては、居眠りをしたり精霊と対話をしたりしているのだ。

なぜ自分が巫女なのか。巫女である必要がどこにあるのか。

母は力のあるすばらしい巫女だった。今の飾りだけの巫女であるトパーズとは違う。

時々神と対話をしてはたずねるが、その質問にだけは神は微笑を浮かべるのみで、返事はしてくれない。






それから4年トパーズは12歳になった。



ある日のこと、ずっと塞いでいるトパーズを見かねた天使たちが、神との対話の間に現れ、ひと時不思議な空間を見せてくれる。

部屋いっぱいに光りがあふれ、虹色の淡い光たちで覆われる。ところどころに天使たちが飛びながら花びらを振りまく。




「うわぁぁ〜〜」




感嘆の声を上げ、花びらを受け止めようと手を伸ばす。

伸ばした手は天使に取られ両腕を支えられ宙へ舞う。思わず笑みがこぼれるトパーズ。

天使たちはここ神殿から上空へと舞上がり町が国が小さくなっていき地球という大きな星を見せてくれた。

この地球にトパーズもすべての生きとし生けるものたちが住んでいるのだ。




オーロラのようないろんな色がひしめく不思議な空間で、この地球から、その後ろに見える宇宙から、壮大なるストーリーを見せてくれた。

宇宙の理も、成り立ちも、人々がこの地球にいるわけも、過去も現在も未来も。




その中には白銀の龍と赤い炎の火の鳥がいて地球という美しい星を見つけ何度も何度も生まれ変わりすべての愛を学ぶため地球で生きている姿も見えた。

火の鳥の転生した姿の中にトパーズもいた。そしてかつて映像でであった少年は龍の転生の姿なのだ。

互いに惹かれあう強さが強すぎて、回りを巻き込み不幸になっていく・・・トパーズの前の人生であまりに傷ついた火の鳥は、もう龍とは会わないと決めてしまう・・・そんな過去も見えた。


あれからずっと気になっていた少年。

初めて出会ったのになぜあんなに切なく悲しかったのかわかるような気がした。




そしてこれからこの国に起ころうとしていること・・・




”この国にもうすぐ滅びのときがやってくる。”




天使たちと一緒にそのメッセージを受け取る。

何がおこり、どうなってゆくのかも見せられる。




大巫女は知っていたのだ。知った上で、できることをしていたのだ。それが邪魔になるものたちがいて、大巫女は消されることになった。それを一瞬にして理解する。




天使との交信が終わるとともに、とてつもない大きなエネルギーが感じられた。




神だ。




愛で満たされる。満ちて満ちて感動がとまらない。トパーズの身体が愛で満ち溢れる。

神はただ微笑まれている。何もかもわかっている。わかっていても微笑まれるのだ。




ただの空間に戻っても余韻でぽーっとしている。




『見えた未来は決定ではありません。どう動くかによっては変える事もできるのです。捉え方ひとつですよ。それを肯定的に取り動くか、否定的に取りそれを待つか。』




母から教わった言葉を思い出す。

ぽろぽろとまた涙が溢れ出した。




「あ・・・れ?」




母がなくなってから泣くことはなかったトパーズ。久しぶりの涙に自分で驚いたのだ。

今までの寂しさ悲しさショックだったことなど、すべてが涙になって流れてゆく。

ひとしきり泣き終わったトパーズの目には何かが宿っていた。






・・・・・・・・・・つづく・・・・・・・・・



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