第三話
今日も暇と人のいないのを見計らっては対話の間に忍び込む。
風の精霊たちの見ている風景はいつも美しく感動する。
対話の間が一瞬にして草原や山の連なる風景や、海に変わるのだ。
それは単なる映像ではなく、葉っぱの匂い、大地の暖かさ、海の潮風を感じるものだ。
そこは今までトパーズが見たことも感じたこともない空間なのだ。
外の世界がこんなにキラキラとした輝きに満ち、人々が愛に満ちているか。
すべてが色鮮やかで、新鮮で、どんな小さなものまでいとしいと感じるものだった。
ある日のこと、いつものように対話の間で外の世界を見ていた。
今日は、山すそから街中の市場へとふんわりと降りてゆく。
そこでトパーズと同じ頃の子供たちが、わいわいと駆けながら楽しそうに遊んでいる。
その間をすり抜けてゆく・・・まるでトパーズもその中に入って遊んでいる感覚になる。
この映像は、エオノールとエオノーラたちが過去に見たものの再現であり、トパーズが人に見えるわけではない。
楽しそうに駆けてゆく子供の表情がまぶしく、その子供たちについていきつつ、トパーズまでつられて笑顔になってしまう。
そこでふっと止まる男の子がいて、ぶつかりそうになるトパーズ。思わず目を瞑ってしまった。
が・・・風なのでぶつかるはずもなく脇にすり抜ける。
《見つけた!!》
声じゃない声が聞こえた。
その男の子を振り返り、見ると一瞬時が止まったかのようにその男の子は微動だにしない。
そしてトパーズと目と目が合いびっくりした表情。
トパーズは何がおこったのかわからなく、目を合わせたまま瞬きをする。
「君は・・・だれ?」
男の子がたずねる。
トパーズは周りを見回し、男の子の視線の先には自分しかいないことを知る。
ありえない・・・
びっくりして、息を呑むトパーズ。
これは過去の映像のはず。見えるなんてありえないこと。
もう一度男の子の瞳を見つめる。
そのとたん、男の子の瞳に引き寄せられたかと思うと、次の瞬間宇宙が広がり、何億光年もの時がその宇宙で進んでいくのが見える。
その見ているトパーズの目前には、大きな白銀の龍。
銀色のその瞳に映る自分の姿は燃える火の鳥だった。
なぜかトパーズは龍を見て涙があふれた。
懐かしい。いとおしい。ず〜〜っと前から知っている。瞳。
その瞳を見つめると、いろんな映像がいっぱい一度にトパーズの中に入ってきてトパーズは意識を失う。
失いゆく意識の中、自分の中心からの声が聞こえる
《今生ではもう会わないと決めていたのに・・・》
意識を失ったトパーズの目からはあとからあとから涙が流れていた。
・・・・・・・・・つづく・・・・・・・・・・