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第二話

トパーズは神との対話の間の前に来て左右を見回し、誰もいないことを確認すると壁に手を当てる。

手を当てた部分からぽわんと光り、壁の中へと入ってゆく。


神との対話の間はその名のとおり神からメッセージを受ける部屋、入り口も出口もない。

ただ神との対話の間自体に選ばれたものだけが入ることができる。


トパーズはよちよち歩きの頃からこの間に入ることができた。たいがい大巫女としてこの間を受け継ぐことができる巫女でも8歳の誕生日、巫女として正式に認められ儀式が終わるまでは神との対話の間に選ばれることはない。


だがトパーズはヨチヨチ歩きの赤ちゃんの時、行方不明になったかと思うと神との対話の間の中ですやすやと眠っていることがよくあった。神との対話の間に選ばれたのだ。

時々母はそのときのことをうれしそうに楽しそうに話して聞かせてくれる。

本来なら巫女見習いのトパーズは神との対話の間に入ることはできない。

ここで得た神からのメッーセージを大臣や国王に伝える大切な間だからだ。


巫女見習いとして神殿に上がるとき大巫女である母からこの間に入ることを硬く禁じられた。

しかしトパーズは時々誰もいないのを見計らってはその空間に入り込む。


対話の間は壁面すべてが水晶でできており、各柱には透明度の高い水晶が使われ、部屋の中心には大きなポイント型の水晶が祭られている。

光源はどこにもないのだがかなり明るい空間になっている。


トパーズは一生をこの神殿の中で過ごす。大巫女となる運命は生まれたときから決まっているので外の穢れを受けないよう護られるのだ。

だから外から来る巫女たちや乳母が時々話して聞かせてくれる外の世界に、目を輝かせては聞き入り想像してはため息をつくのだった。


そしてあるときに思いついたのが対話の間で精霊たちに外の情景を見せてもらうこと。

今日はその初めての試みをするのだ。

対話の間に入ると挨拶をする。


「こんにちは・・・トパーズです。」


そして中心に祭られている水晶の前に行くとそこには賢者のような杖をついた老人が優しいまなざしでトパーズを見つめている。


『今日はどうしたのだ?また失敗でもしたか?』


そうたずねられトパーズは少しむっとした顔をして


「おじい様!!私はそんなにいつも失敗しませんわ。」


おじい様と呼ばれた水晶の精はにっこりと微笑む。


『では何があった?』


とやさしく聞き返す。

小さな頃からいつも何かがあったときに相談に乗ってもらったり慰めてもらったり。大きく包み込むような愛をこのおじい様には教えてもらっていた。


「今日は・・・お願いがあるのだけれど・・・外の風景がみたいの。人々が何をしているのか、どう暮らしているのか。外の自然はどうなのか。みてみたいの」


水晶の精がくすっと笑ったような気がした。きっと代々の巫女たちも同じようにこの精霊にお願いしたのだろう。


『よかろう。では自分なりのやり方を見つけるがいい。精霊を使うもよし、幾何学を使うもよし、どんなやり方でも無限にあるぞ。』


思わず笑顔になり水晶に抱きつく


「ありがとう!!おじい様!!」


色々とやり方を聞き出そうとしたが詳しい話はしてくれない。どうやら自分でいろいろと調べるしかないようだ。

対話の間から出て来たトパーズは喜びが隠せないようでニコニコしながら早足で自分の部屋に向かう。

途中中庭の見える場所で声を掛けられる。


『トパーズ・・・トパーズ・・・』


振り向くとそこには風の精霊エオノールとエオノーラがいた。


「エオノール!エオノーラ!」


風の精霊からはいつも神殿の外の様子や上空の雲や天気などいろいろと話を聞いたり遊んだりしていた。

とても仲のいい友人たちだ。

エオノールはいつも元気にびゅんびゅん飛び回り、その後ろでエオノーラは優しく包み込むようなまなざしを向ける。

トパーズはふとおじい様の言っていた言葉を思い出し、何かを考え付いたようで二人に話しかける。


数日忙しく対話の間に行けずにいたが、カテドラルの図書館に行きデータを引っ張り出してきては祈りの間の女神たちに色々聞き出したりしていた。


そして対話の間の中に入ってゆく。


「おじいい様・・・こんにちは、トパーズです。」


『ほう・・・今日は一人じゃないのか?』


トパーズは懐に忍ばせていた大きな花のつぼみを取り出した。

小さな声で何かをつぶやきながら唇をつぼみにあてると、花が開き中から風の妖精たちがでてくる。

この間に入れるのは部屋の許可した人間のみ。だから物として持ち込んだのだ。


「自分なりのやり方でいいんでしょ?おじい様」


そう言うのと同時に部屋の中をエオノールが飛び回る。

その中心でエオノーラが軽くおじい様に挨拶をし、両手を広げ微笑む。

トパーズがそのエオノーラの腕の中に抱かれると同化し目を開くと対話の間だったはずの部屋が空中になっていた。


「きゃっ!!・・・・・・・・・・・・・きゃぁぁぁぁぁ〜〜〜」


空中から海へと急降下したり、木々の間葉の隙間をすり抜けたり、エオノールとエオノーラのいつも見ている風景が展開される。

はじめはおっかなびっくり。そのうちにとても楽しくなってくる。


楽しい時間はとても早い。

トパーズの横に急に水晶の精が現れもう帰る時間だと告げてくれた。

少し興奮気味にエオノーラとの同化をとき風の精たちを来たときと同じように花の中に入ってもらう。

満足そうな笑みを浮かべ帰ってゆくトパーズを見送りながら水晶の精はつぶやく


『精霊を従わせる呪文をかけることなく1度の試みで成し遂げてしまう。どんな精霊も女神さえも友人としてしまうとは・・・面白い子じゃ。』


そしてトパーズは時々風の精霊たちと対話の間に入っては外の世界を飛び回るのだった。



・・・・・・・・・・つづく・・・・・・・・・・


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