シーン1
血色に染まりし空の下。
「なんともまぁ……派手にやってくれたものですね」
兵団を率い、エザリアの町に到着したネビュロスは、屍山血河となりし光景にため息をつき、
「さて、と……」
住民たちのすすり泣きを耳に、さも楽しげに鼻歌を歌いはじめる。
そして無数の槍に串刺しにされ活動を停止したグールへと近付いた彼は、
「ふふ、やはり咬まれた痕がありますね」
満足げにうなずき、町の門兵へと視線を転じる。
「で、二人が廃城に向かって逃げたのは確かなのですね? ――いまさら見間違いでしたは通用しませんよ?」
「は、はい! 間違いございません!」
声をうわずらせた門兵は、ネビュロスの言を肯定し、
「ネビュロスさま。先発隊が不死の王を捕捉したとの念話が届きました」
顔に刺青を刻んだ魔術師のひとりが追加報告を行う。
「ほぅ、それは朗報ですね。幸先がいい」
「されど八脚の馬を駆る、おそろしく手錬れの女剣士が護衛についており……騎士団長ともども手を焼かされている様子です」
「八脚の馬……」
その報に、薄紫色の口端を吊り上げたネビュロスはローブの端をひるがえし、
「よもやあの女が生きていたなんて、ね。――ほほ、面白くなってきたじゃない」
鋼鉄に身を包んだ猟犬たちを率い、鳴海たちの追撃を開始した。