3 ギルド
バルトは華やかな毎日を送っている、とはいかなかった。
何故ならバルトの思いは周りとかけ離れていたからだ。
魔物は悪。
それが世の中の常識だった。
殺すことが正しい。
魔物が減れば人は繁栄する。
そんな考えやそれが出来る力を持った集まりの中でバルトは理解されるわけがなかった。
臆病バルト、変人バルト、
そう言った呼び名が彼につけられた。
数年経つにつれ、バルトは少しずつ変わっていった。
初めは魔物と戦おうとしなかったが人間に害をなすものは倒すようになった。
周りの人間とも上手くやる処世術を身につけた。
そして、共に戦う仲間ができた。
「バルト!」
手を振る二人組がいる。
「バルト、この依頼はどうかな?東の村からの一角ガゼルの討伐依頼。作物が荒らされてるみたいだしきっと困ってると思うんだ!」
持ちかけて来たのは魔術師ウィンベルト、通称ウィン。
透き通るような金髪が特徴で男のくせに綺麗で可愛らしい顔立ちをしている。体格も小さく、華奢なせいでよくに女の子に間違えられたりもしている。怖がりな部分があるがそこが小動物的で可愛いとギルドのお姉さま方が仰っていた。
「私はいいと思う。それほど遠くもないし。」
そう着けたしたのは弓使いのセーナ。
長いダークブラウンの髪と大きく、丸々としたブルーの瞳が特徴的でウィンに負けず劣らず可愛らしい顔立ちをしている。その反面サバサバとしていて表情が少し分かりにくい。
この二人が今共に依頼をこなす仲間だ。
「いいよ。それにしよう!」
バルトが微笑んで答える。
「よーし!じゃあ出発だー!」
こうして三人は東の村に出発した。
「さてと、到着。」
東の村まで二日ほどかけて到着した。
バルトたちにとっては慣れたもので、到着してすぐに村長の元へ話を聞きに向かった。
「すみません。一角ガゼルの討伐依頼を受けて来ました。セーナと申します。村長様いらっしゃいますか?」
セーナの外行きモードが発動した。
さっきまでとは変わって愛想のいい、華やかな笑顔を浮かべ会話をしている。
外行きモードは優秀で、依頼の話をするときも一緒にいてくれるだけで話がスムーズに進むし買い物の時はオマケを貰えたりしているようだ。
ただセーナの外行きモードにバルトとウィンは頼もしさより女性の怖さをどこか感じてしまっていた。
バルトは聞きたいことだけ口を挟み、あとは外行きセーナに任せていた。
一角ガゼル
その名の通り角の生えた鹿だ。
大きさは普通の鹿より一回り大きいくらい、
特徴はなんと言ってもその一角で魔法も角から使うとか。
依頼内容をまとめるとここら辺にはいないはずの一角ガゼルが現れて作物を荒らしてるから退治してほしい、と。
セーナたちは色々話あった。
山を一つ越えた一角ガゼルの生息地から迷い込んで住み着いたのでは、
一匹なのか複数なのか、
迷い込んだ原因があるのか、
「よし、これで行こう!」
話し合いを終えバルトたちは今回の方針を決めた。